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芥川龍之介  「崩御の号外」

其内に御命に代り奉ると云つて二重橋の傍で劇薬をのんだ学生が出たら急にいやな気になつてしまつた、電車へのつて遥拝にゆくつもりでゐたのがそんな奴ばかりの所へゆく位なら家にゐて御平癒を祈つた方が遥にいゝと考へるやうになつたさうすると直ぐ崩御の号外が出た、あけがたの暗い中に来た黒枠の号外を手にとつた時矢張遥拝に行つた方がよかつたとしみじみさう思つた。

[大正元年八月二日藤岡蔵六宛書簡]



 


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