見出し画像

夕陽に別れを告げて

夕暮れどき、江ノ電鎌倉駅を降り、鶴岡八幡宮に足を向ける。
ここを訪れたのは、あの大銀杏を見るため。
樹齢1000年、高さ30m、幹の太さは約7mの巨木が、
本宮へ向かう階段脇にそびえる。

鎌倉3代将軍 源実朝が参拝の際、この大銀杏に隠れた公暁に暗殺された。
小学生の頃、この逸話を親に買ってもらった歴史本で読み、強烈な衝撃を受け、貪るように歴史本にのめり込む。
苦しい生活の家庭だったが、親は遠慮なく本を与えてくれた。新しい本はピカピカの宝物だった。
多くの歴史本の中でも、実朝暗殺は衝撃で、いつかこの地を訪れると決めていた。
大学4年の夏、横浜・鎌倉方面での一人旅。ついに念願のこの地を訪れ、感慨にふける。

こんなことを思い出しながら、今、15年ぶりにこの地に着いた。
大銀杏はすぐそこだ。

足を踏み入れると、どこからか風が吹きすさび、
葉音がたつであろう巨木は、そこになかった。
ちょうど半年前、雪混じりの強風により、倒れたという。

今日はなんだか、夕陽が目にしみる。


貴重なお時間を頂戴し、ご覧いただき誠にありがとうございます。 原則として、すべての記事は無料でご覧いただけます。 もし、サポートいただけましたら、今後の活動費(取材費・機材費等)に、謹んで活用させていただきます。