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#43 リンゴの皮むき大会

-43-

小5の時
家庭科の授業でやったリンゴの皮むき大会で優勝しました。
今日は久々ホットな感じで笑


当時の担任の先生は志賀先生という先生で、
姉は小6で、
兄貴は小4と小5でお世話になった先生。

そして俺が5年生になって担任が志賀先生になった時
急いで帰って母親に伝えたら、
母親は勝利のガッツポーズ。
めーちゃくちゃ喜んでた。

新学期の始業式の日教室で一人一人名前を呼んで出席を取っていく志賀先生。
高学年を担当することが多い先生は今まで受け持った生徒の弟や妹が上がってくることが多い。
そのため、よく知ってる名字の生徒には
「お兄ちゃんよく知ってるよ~!」
とか一言添えてくれる。

俺は絶対自分も言われるだろうと確信していた。


自分の出番が来た。

先「のなかこうしんさん」
こ「はい!!」

先「のなか家はもう充分です!」

と笑顔で言ってた。
ちんぷんかんぷんのクラスのみんなに先生は、

「こうしんさんはお兄さんもお姉さんもクラスを持ったことがあります。お母さんもよく知ってるし、家庭訪問もあるのでなんだが毎年のようにお邪魔してます。笑」

と笑っていた。


実際そうだった。
家庭訪問期間になると、方向音痴だからといい、生徒に地図を描かせる先生だった。
が、
「こうしんさんは書かなくてもわかります。」
とか、言われてて
「なんなんせんせー!」
とか言ってたけど、古参感があってちょっと優越感に浸ってた。


そんな先生は家庭科担当の先生。
包丁の使い方ってことで、リンゴの皮むき大会が実施されることが発表された。

料理は昔、母親と一緒にキッズお料理教室みたいなのに行ったときに好きになった。
それから朝早く起きて家族分の朝ごはんを母親と一緒に作ったりしてた。
甘やかされ上手な生粋の末っ子だったし、超ママっ子だったからノリノリで作ってた。

包丁はうまいってわけじゃないけど、まあ使えるって感じだったかな。


だからリンゴの皮むき大会が発表されたときは「まあ普通にいけるか」
くらいだった。

「夏休みにおうちの人としっかり練習しておくように!」

と先生。




そんなのも忘れて夏休みを過ごした。

朝は地区のラジオ体操。

そのまま昼までサッカー。

一回飯を食いに帰って、

昼からプール。

2、3時間泳いでまたサッカー。

飯、風呂、寝る。

を一か月しまくった。



そして、リンゴの存在を思い出した。

そもそも家にリンゴがあるのか。

なかった。

親に練習するから買ってきてとお願い。

買ってきてもらって練習をした。



大会のルールは超シンプル。

大根のかつら剝きの要領でリンゴをむく。
その皮の長さを競う。
細く皮をむけばもちろん長さを稼げる。
しかし、途中で切れてしまった場合は、一番長いものを記録とする。

といったものだ。



みんなの平均の長さが分からん。
ま適当にやってみるか。
初回だし、細さより”切れない”を重視してやってみよう。

結果は120cm。

小さなリンゴから1m以上の皮が取れるのか。と感心した。

幅はまあ1cmくらいでやっていたと思う。

これを記録にしよう。
あとはもう本番だけでいいや。

夏休みのリンゴの皮をむくという宿題に120cmと書いた。




新学期が始まり、ついにリンゴの皮むき大会の日がやってきた。

別に大して、自信があったわけじゃないけど、そこそこ器用な方だったからまあいい順位取れるだろうなくらい。
特別楽しみ!っていうわけでもなかった。



班になり席につく。

みんな家から持ってきた渾身のリンゴをテーブルの上に置いていた。

ふと気づいた。


”俺のリンゴ一回り小さくね??”


友達に言われて気づいた。

普通に考えてリンゴが大きければ大きいほど記録は伸びる。

「あ、やべえな」

って思ったけど、もう仕方ない。


クラスにはどうだと言わんばかりに大きいリンゴをもってきているやつもいた。


ここで、負けず嫌いのこうしん少年11歳に火が付く。


(これであいつに勝ったらすごくね??)


って強気でいくことにした。





授業が始まり、まずは先生のデモンストレーション。

通常サイズのリンゴをスイスイ向いていく先生。

みんなで
「わーー!!!」
「すげえ!!」
「綺麗!」
「むっちゃなげえやん!」
とか言ってへばりついてみた。

確かに綺麗だった。
けど、

(練習の俺の方が長い気がする…)

先生は幅1.5cm~2cmほどでむいていた。


先生は測定にメジャーを用意していたが、
「過去には1m物差しを使わないと測れない人もいたので算数の○○先生に特別に借りてきましたー!」
といい取り出した。

先生の記録は70cm。

これにみんな驚愕。


俺は確信した。


(これ5mmとかでむいていったらぶっちぎりで優勝しちゃうんじゃない?)

そう思って、目立ちたがり屋のこうしん少年はみんなに混ざって
「うおお!すげえ!!」
と声を出していた。



いざ、本番。


いっせいにやるわけじゃない。
いっても小学5年生。
包丁を扱う。
ペアを組み前半の人、後半の人に分かれてお互いの包丁遣いをチェックしてあげる。

ペアは確かひびきってやつだったと思う。
めっちゃ仲良かったやつ。

ひびきに聞かれた。
「こうしん練習どんぐらいいった?」

「練習で120cmいった。(小声)」

「は?まじ!?」

「ばか静かにしろ。びっくりさせたいけん。」


みたいなこと話した。
ほんと目立ちたがるザ男子小学生!ですね。



前半だったか後半だったか覚えてないけど、ついに始まった。


スタートから5mmペースでむいていった。

ひびきが驚いてくれる。
それに気づいた班のみんな、クラスのみんな、そして先生。
みんなが驚いていく。
「うわ!こうしんやば!」
「そんなん絶対切れるやろ!!」
みたいなこと言われてた。

めっちゃ集中してやった。

ただ一人だけ爆笑している人がいた。
先生だ。
「あーっはっはこうしんさんアンタさすがやね~!やられたわ~!」
この人のこれが一番うれしかったかもしんない。
なんだろうこの認められた感?
さすがって言葉に弱かった。

そして、どんどん調子を上げていき、
ついに最後までむききった。

テーブルの上を見ると、自分でむいたまるでリボンのような皮がある。
測定が楽しみだ。

班でもないやつが悠々と1m物差しを持ってくる。

(なんで俺より楽しみなんだこいつは。)

そして数人がかりで測定をする。


とんでもない結果が出た。


2mだった!


小さなリンゴから自分の身長どころか成人男性よりも大きい皮が取れた。



大称賛を浴びて浴びて浴びまくった。

ここで謙遜する俺。
「いやいや~✋」
とかいう5年生。

今考えたらうざい。うざすぎる。


結果、2位の子も1mを超えていたが、かすむほどの大記録をたたき出してしまったせいでその日の主人公は俺に。


顔は薄顔、背はちっさい。足ははやくないし、ドッチボールも強くない。
唯一負けないのは算数の最初の時間の「100マス計算トレーニング」。
取り柄といえばそれくらいの俺がその日一日はみんなのヒーローだった。


先生から優勝賞品の授与。

なんだろうとみんなで気になる。


取り出したのは、


普通のリンゴ。


「おめでとうございます!隣のクラスの○○先生の分のリンゴを剥く権利を与えます!」


と言われた。

やられた~。


またもむかされる。
しかも今度は途中で切れた。
それでも記録は1m以上あった。

先生に

「今多分教室で授業やってるから持って行っておいで!」

と言われひびきと持って行った。


僕らの学年は2クラスしかなく、もう一方のクラスも家庭科は志賀先生だったため、そのクラスの先生はリンゴが食べれないだろう。
という先生なりの配慮だった。

むいて切ったリンゴに爪楊枝を差して校内を歩く。


教室につきノックをする。

「あ~!今日皮むき大会やったんでしょ~!うちのクラスは来週だもんね~!わ~!リンゴこれ先生の?くれるの?ありがとうー!」
といい授業中にもかかわらずリンゴをほおばる先生。

生徒が羨ましがる。

「だって先生来週もたべれるわけじゃないもーん!」
という。

そして聞いてきた。

先「一位はだーれ?」

ひ「こうしんっす!」

先「あらほんと!何センチだっt…」

ひ「こうしん2m!!」

とセリフを取られた上、食い気味にひびきが言った。


クラス騒然。


またも称賛を浴び隣のクラスをあとにした。

忘れられん一日だ!









二年後。

後半の海 ~新世界~


俺は中一。
姉は高三。


その年の年賀状に志賀先生の名前があった。

あて先はなぜか姉だけ。


これに腹を立てた俺は年賀状を書くことにした。

年賀状の裏にこれまたちっさい字でぎっしり詰めて書いた。


一週間後にお返事が届いた。
もう年賀状の時期じゃないため封筒が届いた。

開けるとA4サイズの紙にびっしりと。
志賀先生の文字が書いてあった。

手紙によると、どうやらその年姉に送ったのは小6を受け持った生徒が高校を卒業して、進学する者、社会に出る者、と一気に道が分かれ大人に向かっていく年だったからだそう。

それに対し、自分には来ていないとおこっていたらしい。うける

ほぼ”黒”の年賀状が届いて先生笑いました。
って書かれてた。

そこにはあのリンゴの皮むき大会の話も。

リンゴを見るたびあの日のことを、
先生のことを、俺が思い出すように

先生も、ちっちゃくてまだかわいかったこうしんを思い出してくれてるんやなぁと思った。




小5の時
家庭科の授業でやったリンゴの皮むき大会で優勝したお話でした。

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