5時ババの話

「5時ババが出たぞ!」「逃げろー!」

誰かが叫んだ。公園で遊ぶ僕たちは、散り散りに家に帰る。

夕方の5時になると、買い物袋をカゴに乗せ、
ママチャリに乗ってどこからともなく現れるおばさん、
通称「5時ババ」。

「早く帰りなさーい!!」

そう叫ばれると、まだ小学生ながら恐怖を感じるのだ。

小学3年生だったか、4年生だったか、5年生だったか、それとも小学生時代はずっと5時ババに追いかけられていたのか、もう記憶は定かではない。それでも、「5時ババがいた」という強烈な事実は、ずっと頭の中にある。


小学校を卒業し、中学生になり、偏差値は真ん中くらいの高校に入学し高校生になり、放課後に友達と公園で遊ぶなんて習慣、別に小学生の時に友達が沢山いて毎日公園で遊んでいたなんてことはないのだが、そんな日常は無くなった。

今考えると、言い方は悪いが多分何かしらの障害を持っている方だと思う。話そうとしてもどこか話が通じない、噛み合わない。どこに住んでいるかも分からない彼女の姿を見ることは無くなり、その存在も頭の片隅に追いやられ、今にも記憶からこぼれそうになっていた。ではなぜそんな彼女の事を思い出し、ここに書き連ねているのか。


いたのだ。


なんてことない、近所のコンビニ。2/5、朝8:00。
昼ごはんを買って、学校に向かおうと自転車に乗った時、隣に自転車を止めてコンビニに入っていこうとしていたのは、紛れもなくあの「5時ババ」だった。

そこにいたということは、今も5時になると小学生に声をかけているのだろうか。自分は公園で遊ぶことも、そして注意をされることももうない。小学生の弟に、また聞いてみよう。今でもやってるなら、弟とその友達と一緒に、公園でまた遊んでみようか。そんなことを考えている夜です。

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