【登記】原本還付の方法

登記における原本還付とは、法務局に出した添付書類の原本を返却する手続きのことです。①原本還付がそもそもできない書類があること②原本還付は黙っていてできるものではないことに注意しましょう。

【原本還付の対象となる書類】
「不動産登記」
 (大雑把な説明)登記のためだけに用いる書類、印鑑証明書(例外有)
 不動産登記では、原本還付が可能な書類とそうでない書類が法令で(わかりづらく)規定されています。ここで全てを紹介することはしませんが、
 ・他の用途が無い委任状
 ・印鑑証明書(例外有)
以外は、基本的に原本還付が可能とおぼえておきましょう。なお、印鑑証明書が還付できる例外は、相続の登記のときに付ける印鑑証明書のことです。
ちなみに、印鑑証明書が原則的に原本還付できないのは、他のことに不正に用いられないように法務局が回収してしまおうという趣旨です。

「商業法人登記」
 商業法人登記では原本還付できない書類はありません。印鑑証明書であっても原本還付できてしまいます。「できない」とする根拠規定が存在しないんですね。

【原本還付の方法】
原本還付するには、原本のコピーを作成し「原本と一緒に」法務局に提出します。法務局職員が、コピーが原本と相違ないことを確認して、申請後に完了書等の書類と一緒に返却されます。

また、コピーには任意の場所に「これは原本と相違ない(氏名 印)」と記載し、押印することが必要です。複数枚の書類を原本還付する場合、各書類1ページごとにこれを記載することは大変ですから、1ページ目に「これは原本と相違ない(氏名 印)」と記載し、2ページ目以降は契印(ページを跨いだ割印)をすれば大丈夫です。契印は基本的には一個の書類であることを示すものですが、例えば住民票と戸籍の附票の原本還付をする場合に、住民票のコピーと戸籍の附票のコピーをまとめて契印で結んでも構いません。そのくらいはわかりますからね。

【戸籍の原本還付】
例えば相続登記の際の戸籍の原本還付は、各ページのコピーを取らなくても簡単にできる取り扱いがされています。というのも、相続登記には一般的に添付する「相続関係説明図」(家系図みたいなもの)を添付すれば、戸籍は写しを提供しなくても原本還付される取り扱いです。相続登記の戸籍は大部になることが多いですので助かりますね。

【定款の原本還付?】
会社法人登記において、定款(規約、寄付行為等)は提出することがとても多い書類です。審査して「?」と思うことが多いのですが、定款は普通原本還付を行いません(やってダメという訳ではありません)。

なぜなら、定款はそもそも会社の内部に常時大切に保管されるべき書類であって、法務局が求める「定款」というのは基本的に「会社の定款の内容を記載した書類」であって、会社にある原本を持ってくる必要は無いのです。なお、会社を最初に設立したときに使う原始定款については、原本が必要です(公証人の認証があるので、コピーだけでは正当性に疑義があるためです。)。

会社法人登記において提出する原始定款については、任意の場所に「これは当社の定款である。令和○年○月○日 ○○会社代表取締役○○ 会社代表印」とでも記載された書類一枚を提出すれば良く、会社に保管されている定款原本は持ち出す必要がありません。なお、役員変更の登記で間違いやすい点ですが、このときに記載する代表者は「新代表」を記載し、証明する日付は新代表就任以降の日付であることが適切です。「登記のために会社の定款のコピーを取ってきましたよ、はい証明」という体で提出されるものですから、登記義務のある新代表が証明することが筋なのです。

【おまけ:法務局の有料コピー機】
全国の法務局のほとんどにはお客様用のコピー機が存在しません。原本還付の手続きでコピー機は必需品で、無くてとても不便ですね。昔は法務局にも有料コピー機が存在していたのですが、設置業者の採算がとれず、一般入札で業者を募集してもどこも集まらないのが実情です。かといって法務局職員がコピーを代行するのは税金の面からも、審査者としての立場からも変ですので、近くのコンビニやスーパーのコピー機の場所をお知らせするしかできないのが悲しいところです。

以上、簡単にご説明しました。

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