【内密出産】は何が問題なのか?続報

・追加された経緯
 2月10日に熊本地方法務局は慈恵病院に質問状の回答を通知した。内容は、母欄を空欄にしたまま出生届を出すことの違法性は「捜査機関が個別に判断すること」として回答を避け、出生届の提出がなくとも市町村長の職権で戸籍の記載ができることから、少なくとも出生日と出生地の情報を市区町村長に提供するよう求めた。同回答を受け、慈恵病院院長は出生届の提出を見合わせた。

・補足
 本件は重大事案ですから、熊本地方法務局は間違いなく本省(法務省)に照会をかけていると思います。ですから本回答は全国統一の法務省の回答と考えて差し支えないと考えます。

・違法性の判断は誰がすべきか?
 熊本地方法務局の回答のとおり、一般論として違法性の判断は警察機関がするのが当たり前です。そして、熊本地方法務局や法務省が警察の考えを操作できるわけが無いというのも明らかなことです。しかし、本件照会で問われているのは「出生届の書き方」であり、それに答えることができるのは、受理予定の熊本市か、戸籍事務を所管する法務局・法務省しかないでしょう。法務局は「一般論として警察機関が判断すべき違法性の判断はこちらでは決しかねる。しかし、こちらが想定している方法としては・・・」という形式で一応の正解を回答すると考えていましたが、完全に責任逃れのたらい回しに遭っている感があります。

・出生届を出さなくても良いのか?
 前回の記事で述べたとおり、まず原則的に母親が出生届を出さなければいけません。義務です。では病院については、母親が出生届をださないときに、代わりに出生届を出す義務があるのかといえば、答えはYesです。戸籍法56条は父母が出生届を出さない時に病院が出生届を出す「義務」を定めていると考えられます。ですから慈恵病院が出生届を出すことを留保している今の事態は、病院の義務違反として処分を受けかねない状況にあります(だからこそ、法務省は出生届の方法について道筋を示すべきだったとも言えます。)。

・今後どうなるか?
 慈恵病院は、法務局の回答に従って、熊本市に「少なくとも出生日と出生地の情報」を提供することになるでしょう。出生届は届出が無くとも市町村長の職権で戸籍に記載することができる(棄児発見調書による戸籍の記載と同様)ため、この方法によって戸籍の記載、住民票等の作成が行われることでしょう。

・どうすれば良かったのか?私の意見
 今回の照会ではお役所仕事の典型例とも言えるたらい回しを見せつけられました。院長もお疲れでしょう。大変ですね。
 どうすればお役所仕事を防げたか?それは、「出生届の判断というバトンをとっとと役所に渡すべきだった。」と言えます。具体的には、警察からの処分覚悟の上で、母欄空欄の出生届を熊本市に叩きつける(届け出してしまう)べきでした。届出さえしてしまえば、熊本市は受理or不受理の判断を求められます。逃げられません。あとは熊本市が勝手に法務局と相談してうまくやってくれるでしょう。
 この方法は、今から行うこともできますから、慈恵病院の院長先生がこの記事をご覧になっていれば、この方法をとることをおすすめいたします。

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