【内密出産】は何が問題なのか?続続報

・追加された経緯
 2月25日国会質疑にて内密出産が取り上げられ、厚生労働省及び法務省の見解が述べられる。両大臣「現行制度で対応可能である。」「今後は適切なガイドラインを作成する。」とコメント。岸田総理も「この内密出産について厚生労働省法務局が示した取り扱いに基づき、熊本市慈恵病院が採用している方法については、現行制度下でも対応が可能であるということ」「子供の出自を知る権利をどう考えるかや、未成年が内密出産を希望する場合の支援のあり方など、課題があり、慎重に議論を深める必要がある」とコメント。

・結局内密出産の取扱いはどうなるの?
 「現行制度下でも対応が可能」というのは「法改正する気はありません」ってことです。つまり、戸籍法56条の病院がすべき出生届の規定が問題になりそうなところですが、これは上手いように解釈して病院には迷惑掛けないようにするということでしょうね。

戸籍法第五十六条 病院、刑事施設その他の公設所で出生があつた場合に、父母が共に届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。

 内密出産の運用としては、母親その他の出生届の届出義務者が出生届の記載事項を伏せたまま(もしくは伏せる意思を表明して)出産し、出生届をする意思がない場合を内密出産と定義づけして、病院は職権で知った事項(出生日・出生地…)を市役所に通知し、市役所は棄児発見調書の取扱いに準じて戸籍作成の取扱いを行うことになりそうです。

・今後の問題点
①子供の出自を知る権利をどう考えるか
 現在の法律では「子供の出自を知る権利」なんてのは明文で保証されているものではありません。しかし、そういう規定を立法化するときには考慮しなければならない事項であるということなのでしょう。
②未成年が内密出産を希望する場合の支援のあり方
 未成年の母親には親権が無い(未成年者の両親が親権を行使する)ものですから、未成年者が内密出産を希望するのを「はいそうですか」で認めてしまうのは法律的にマズイです。未成年者の取消権とか持ち出されて「やっぱり私が育てます」とか言われたらどうするのでしょうか。きっと母親にお返しすることになるのでしょうが、このタイミングが特別養子縁組の前後だったりすると非常に困るわけですね。一般の特別養子縁組には裁判所の許可が必要ですから、裁判所は許可をする過程で実親の意見も聞いているわけです。しかし、内密出産では母親不明に準じた関係が出来上がりますから、裁判所は実親の意見も聞けずに許可を出さねばなりません。裁判所には内密に母親の情報を公開すべき(家裁なら非公開ですし)と思いますが、どうなのでしょうか。
③国籍
 戸籍の記載をするとのことですから、子どもには自動的に日本国籍を与えるという取扱いになるのでしょう。外国人の親が、子に日本国籍を与えたくて内密出産制度を悪用するようなことが無ければいいんですけどね。

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