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20世紀の記録として残したいこと(第1話)父はバレーボールで甲子園で優勝した選手だった

1-1. 父の甲子園


 
父太田安雄は、甲子園で優勝した選手です。皆さんは、甲子園というと高校野球、あるいは古くは中等学校における野球の甲子園のことと思うでしょう。しかし、甲子園が始まった頃は、野球だけではなく、庭球(テニス)や排球(バレーボール)、籠球(バスケットボール)なども甲子園の試合として競技されていました。いつ頃、野球だけになったのかよくわかりませんが、今から90年ほど前の昭和6年(1931年)の夏頃、父はこの甲子園の排球、つまりバレーボールで全国優勝した選手なのです。当時の甲子園には、野球場の裏にテニスコートがたくさんあって、それをバレーボールコートとして利用して試合をしていたそうです。その甲子園で勝ち残り、最後の優勝戦は、当時の神戸一中(現在の神戸高校)を下して優勝したそうです。
 

1-2. 県内予選と大松博文さん


 
父はこの甲子園の全国大会の方が、県内予選よりずっと楽だったといいました。香川県内の試合は強豪揃いで苦しく、優勝戦では、大松さんが選手をしていた宇多津高等小学校と当たったそうです。そして宇多津高等小学校を下して甲子園へ行ったわけです。大松さんは、後に日紡貝塚のバレー部の監督をして、1964年(昭和39年)に開かれた前回の東京オリンピックで、日本女子バレーを金メダルに導いた、あの有名な大松博文さんです。大松さんのいる宇多津高等小学校を下したのは香川県三豊郡一の谷村の一の谷高等小学校(現:観音寺市立一の谷小学校)のメンバーです。戦前の中等学校には、旧制の中学校もこのような高等小学校も含まれていたのですね。若い方には高等小学校というのがわからないと思いますので、説明しますが、戦前は6年間の義務教育の尋常小学校の上に、義務教育ではない5年制の中学校と2年制の高等小学校(または小学校高等科という)、さらに商業学校などの職業学校が並立していました。従って、甲子園はこれら年齢を同じくする全ての生徒を対象にしていたので中等学校全国大会と言ったものと思われます。従って、中等学校イコール旧制中学だけではありません。
 

1-3. バレーボールが盛んだった香川県


 
今から50年ほど前、まだ私が高校生の頃(1970年頃)、観音寺市本大町にある川鶴酒造の川人(かわんど)一郎社長さんが、このままでは一の谷高等小学校が甲子園で優勝したことが忘却されてしまうのではないかと、当時の選手の方々を集めて宴会を行ったのを記憶しています。そして父がそれに呼ばれて出席したのを覚えています。当時、父は50代半ばでした。また、父の話では、バレーボール部の練習は非常に厳しく、ぶっ倒れるまで運動場で裸足でやったそうです。夏休みを利用して教えに来てくれたのは香川師範学校で在学中の若い香川茂、荻田龍男、橋本さんたち先生だと言うことでした。香川茂先生は、のちに息子の私が中学生の時には、私の中学校(正式名は全国一長くて、香川県三豊郡山本町観音寺市学校組合立三豊中学校)の校長先生をしていました。大変立派な名校長でした。職員対抗のバレーボールの試合に出てサーブを打っていたのを覚えています。しかし、だいぶ前にもうなくなられたと聞きました。なお、母方の叔父の話では、昔は、三豊郡や観音寺市の地方でバレーボールが出来る人は高学歴の人と同意語であったと言うことです。ほとんどの国民が尋常小学校しか行かなかった時代の話です。
 
 
*なお、冒頭の写真はフリー画像として使用が許されている「甲子園球場」の写真です。https://www.hanshin.co.jp/koshien/download/img/front_1280x720.jpg から引用させていただきました。
 
2000年12月10-12日随筆
2001年4月18日加筆
2001年4月27-29日加筆
2001年6月14日加筆
2003年4月26-30日追記と修正
2003年6月12-13日修正
2003年8月11-16日最終修正
2022年5月27日7編へ分割編集
 
本記録に関して

本記録は、20世紀の記録として是非、残しておきたいと思い、生前の父太田安雄(通名は康雄)、香川県三豊郡山本町(現三豊市山本町)在住、から、聞き書きした記録文です。父は、大正5年(1916年)9月14日生まれで、平成15年(2003年)4月5日、87才になる年に亡くなりました。聞き書きしたのは、西暦2000年から2002年の3年間です。父が生きている間に、是非、貴重な記録として残しておきたいと思い、父やのちには親戚からも取材し本文をまとめました。非常に長くなったので、話題ごとに7編に分割掲載いたしますが、どの話題も皆さんがほとんど知らない大変興味深い話だと思いますので、ご一読頂ければ幸いです。

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