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昔読んだ本の話

中学高校の頃はよく本を読んだ。
読んだ。というより。書かれている文字列をただ追うように眺めていただけで。そのほとんどの内容を全くと言っていい程、覚えてはいない。

小学生の頃は。
図書室に行くのは好きだったけれど。
やはり、本を読めた、という感覚はない。
同じ本ばかり借りていたし。
その頃流行っていたハリーポッターのような文字の多いものではなく。
なにかようかここのかとうかなにがなんきんとうなすかぼちゃ
……みたいな。文字量は少なく。内容というより、口に出して読んだ時におもしろいような、詩集みたいなものとか。科学系の絵本とか。
そんなものを眺めていた。

なんというか。たぶん。
本が大量にある空間が好きなのだと思う。
なんというか。
図書室という空間に、なんとなく。
異質感というか。異空間感というか。
そんなものを感じていた気がする。

本が大量にある空間。図書室とか、図書館や本屋、そのものが、僕にとって、現実逃避の場所なんだと、思う。


ふと思い出す話がいくつかある。


恋の味のする、青いフレークが出てくる話。
タイトルも何も覚えていないのだけど、ふと、思い出す。
文字や音の記憶ではなくて。
イメージが残っている。
恋をした瞬間に、弾けるガラスのパリンというような音と、そこから広がる鮮やかな青色のフレーク。食べるとすっぱいような甘い味がして美味しい、らしい。
そういう朝のバスの風景だった気がする。
…どんな風に物語が進んでどんな結末だったのか。なんにもおぼえていないけれど。
ふと。思い出す。
鮮やかな青色のフレークの恋の味。

…長編の物語ではなくて、一冊によっつくらいの短編が入ってた本の中のお話だと思うんだけど。
なんにせよ。…作者もタイトルも何もおぼえていないんだけども。


少しずつ強くなりはじめた雨の中
あと少しの距離を雨に濡れたまま帰る事もできず
少し歪んだ自分の好みの色ではない折り畳み傘をさして歩いている

あと少しだけ強くなりたい、だとか
強くならなきゃ、だとか

そんな風にうたううたをききながら
ぼんやりと歩く


少しの焦燥と軽い諦めのような脱力感

強く なりたいなぁ

なんて
思ってもない事を
つぶやいてみた