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ル・ティグレ「From the desk of Mr.Lady」(2000)

1990年代に「ライオット・ガール・ムーブメント」を掲げた一群のフェミニズム・パンクバンドがあった。

ル・ティグレは、ライオット・ガールの草分けBikini Killのフロントを務めていたキャサリーン・ハンナ(Kathleen Hanna)を中心とするグループ。

ビキニ・キル(ライオット・ガール・ムーヴメントの先駆者。91年に<キル・ロックスターズ>レーベルから『ビキニ・キル』をリリース。 「ライオット・ガール」と呼ばれるフェミニズム・ムーヴメントの代表的存在だった。)に在籍していたKathleen Hannaを中心に、Johanna Fateman, JD Samsonと1999年に結成した女性トリオ。
率直に政治的観点を謳うパンクを、遊び心いっぱいにポップ且つエレクトリックに仕上げ、マルチメディアを駆使したアーティスティックなライブを繰り広げる。https://www.universal-music.co.jp/le-tigre/biography/

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From The Desk Of Mr.Ladyは、彼女らのデビューEP。

ブレイクビーツを用いたトラックにハンナらのボーカルが乗ってくるスタイル。シンプルで力強いトラックは不思議な中毒性がある。

インターネット・バブルで浮かれるアメリカの若者に対して、「インターネットなんか切って街へ出ろ!」と叫ぶ1曲目のGet Off The Internet。

NY市警官が黒人を射殺したニュース音声で始まるパンク全開の2曲目Bang!Bang!。クライマックスは、ビースティ・ボーイズの「サボタージュ」を彷彿とさせるビート。(マーク西田がライブに参加したり、キャサリーンはアドロックの彼女だったことも)

3曲目のThey Want Us To Make A Symphony Out of The sound of women Swallowing Their Own Tonguesでは、「今は昔と違って女性は活躍できる場が沢山広がっているよね?今はいったい何が問題なのかな?」という男性の質問に対して、女性が口ごもる音をサンプリング。Hey Wake Upと煽るコーラス。

4曲目もキャッチーなギターリフに、軽快なブレイクビーツ。5曲目Gone B4 Yr Homeは一転して可愛らしく静かな曲。パートナーシップに疲れた少し寂しい曲。6曲目は「退屈な決まり事」とでも訳すのか、Mediocrity Rulesと再度パンクが爆発。(7曲目は既発曲のリミックスなので割愛)

ポップ、キャッチーでかつポリティカルという意味では、このアルバムはザ・クラッシュの「白い暴動」やボブ・マーリー「キャッチ・ア・ファイヤー」らと並ぶ傑作。

Le Tigreは以降も活発に活動を続けていくが、音楽的にはこのEPがエポックだろう。

From The Desk Of Mr.Ladyの曲の動画は見当たらないので、知られている曲から2曲を紹介。



頂けるなら音楽ストリーミングサービスの費用に充てたいと思います。