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心を映す【side:レーニア・ラヴィーネ】

■お借りしました!
・グリモアさん、フォカロルさん


 熱湯を凍らせてしまおうなんて、いくらなんでも無茶苦茶でぶっ飛んでると思う。でも、不思議なことに不可能だとは思わなかった。
 ラヴィーネが僕ならできるって、信じてるって、そんな顔をしていたから。

『……僕たち、どうだった?』

 フォカロルと呼ばれていた、相手のキングドラに問う。彼の放った熱湯を凍らせきったのだから、今回は僕が勝ったことになるのだろう。
 とはいえ、冷気を一気に放出した身体は、流石に言うことを聞いてくれないようだ。ラヴィーネのためにも、なんとか立っていたいのだけれど。フォカロルが首を横に振るのを見た後、ついに足に力が入らなくなった。

***

 流石に疲れきってしまったのか、バトル中の緊張感が解けたからなのか。相手のキングドラが降参したことを確認すると、レーニアは崩れるようにその場に倒れてしまった。

「お疲れ様、レーニア」

 この勝利は、レーニアが最後まで油断することなく全力を尽くしてくれたからこそ掴めたものだと思う。感謝を込めてレーニアの背中を撫でてやれば、彼は視線だけをこちらに向けて、力無い、それでいて充足感に満ちた鳴き声を返してくれた。
 グリモアと名乗った少女から飛ばされたチップをしっかりと受け取り、その顔を見る。まるで自分を見ているかように感じられた、無表情だった彼女は微笑んでいた。
 バトル相手である彼女からその表情を向けられたことが、純粋に嬉しくて。

「グリモアさんたちも、強かったです」

 ほんの少しでも隙を見せれば間違いなく押し負けていた。だからこそ彼女たちの強さは本物だと心から賞賛しているし、同時に感謝している。こんなに熱くなるバトルをしてくれたのだから。

「ありがとうございました」

 私は今、一体どんな顔をしているのだろう。彼女のように微笑むことが出来ているのかは分からない。分からないけれど、満たされた気持ちであることだけは確かだった。
 そして今、彼女たちとのバトルを通じて、芽生えた思いがあった。

「えと……変なことを聞くようですけど……あの…」
「?」
「その……グリモアさんは、コランダ地方を旅しているんでしょうか?」

 彼女と目が合わせられなくなって、思わず俯く。伝えたいことははっきりとしているのに、なぜか上手く言葉に出来ない。だからそのことは諦めて、少し遠回しに尋ねることにした。

「私、フィンブルタウンに住んでて…もし良かったら、寄っていってください。良いところ、なので」

 ただ、彼女と仲良くなりたいな、なれたらいいなと思って。たった一言、『友達になってくれませんか』と言いたいだけなのに。
 コミュニケーションが下手すぎる私には、いつものお誘いの言葉を紡ぎ出すのが精一杯だった。

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