虚しい惚気【side:スウィート・ミリカ】

■お借りしました!
・クラードさん


 今の彼の話からは何の確信も得られなかった。というかそもそも、リピスに霊感の類があるのかオレは知らない。ただ、どちらにしろ、ゴーストタイプが周りに集まりやすいという点では共通しているのか。
 それにしても。こちらの質問に彼は、沢山連れている自覚がないと告げた。まだ確信には至らないが、手持ちのゴーストタイプはこの二体だけの可能性がある。となれば、やはり違うのかもしれない。

「君は好きなのかい?ゴーストタイプ」 

 頭の片隅でそんなことを考えていると、彼がこちらにも同じ質問を投げかけてきた。

「まぁ、嫌いではないですね」

 楽しげに揺れるシャンデラの炎を見つめながら、呟いた。実際、オレにはゴーストポケモンに何かされた経験はないし、こうやって無邪気に懐いてくれている個体もいる。
 だからこそ、何とも思っていない、というのが本音だ。

「一番好きなのはフェアリータイプなんですよ」

 彼が尋ねてきたのはミリカを連れているからだろう。そう思って、オレはまた笑顔を作る。いつも通り、『フェアリータイプが好きな一般人』として振る舞うために。

「ああ、ミミッキュはフェアリーでもあるね」
「そうなんです。可愛いんですよ、うちのミミッキュ」

 こんなにも素直で、一途で、オレに尽くしてくれるんだから。

 きっかけは成り行きとはいえ、結果的にオレの元にはフェアリータイプばかりが集まった。
 彼女たちの多くは、疑いを知らない純粋な心を持っている。だからこそ、手持ちに最適なのだと彼女は告げた。タイプには特に拘りがなかったオレは、その教えに従っていただけ。
 今のオレの手持ちは、当時の名残でしかない。

 ふと足元に視線をやると、先程の言葉が聞こえていたのだろうか。ミリカは照れ隠しのように影を広げて、その場で縮こまっていた。

***

 ゴーストポケモンを引き連れて、マスターの前に現れた男。ようやくマスターと二人きりになれたのを邪魔されたようで不愉快だった。とはいえ、マスターの指示に反することだけはいけない。何も出来ない私は、黙ってマスターの足元に隠れることにした。
 突然現れた男は、マスターとの会話中もやたらとこちらを見てきて鬱陶しかった。マスターの誘いで彼が同行していることは理解しているけれど、私としては早く去ってほしくて堪らない。

 周囲を警戒しつつ彼らの会話を流し気味に聞いていたら、 私の事が話題に上がっていることに気づいた。真剣には聞いてなかったから違うかもしれないけど。
 そして、なんとなく耳を傾けていたら、聞こえてしまった。

「可愛いんですよ、うちのミミッキュ」

 思考が止まる。マスターがそんな事を言うのは、初めてでもないし珍しいことでもない。特に、表に出ていることの多いフェリシアやマーキアはよく言われてる。それが純粋な自慢や惚気ではないことも知っている。
 でも、私は。私は、人前でそれを言われる機会が今までほとんど無かったから。その真意が分かっていても、どうしていいのか分からなくなってしまって。
 影で顔を覆ったまま、その場から動けなくなった。

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