NR環境の政権交代について

はじめに

 NR限定戦は長らくメガリスのtier0フォーマットであった。しかし2023年に入ってメガリスの一強環境が崩れ、新たな時代を迎えた。本稿ではメガリスとヴェンデットの対面を考察し、真のNR界最強テーマは何か考えてみたい。

著者紹介

 2022年1月からNR限定戦をプレイする歴戦の競技勢。長らくメガリスを使い続けており、メガリスの練度には自信がある。
NR実績等。
NR限定大会 優勝×13、準優勝×3、四強×0

NoRichesの戦績、参加回数5回、優勝×3、5位×1 一落ち×1
NoRichesのレギュレーションを使用した大会、マサ杯の戦績(大会規模:30~60人)、参加回数4回、優勝×1、準優勝×2

2022年のNR環境について

 昨年のNR環境はメガリスの一強だった。それでもCSにメガリス以外を持ち込む方が大変多く、NR環境はメガリス一強ではないと主張する方さえいた。しかしこれは明らかな誤りであり、メガリスの一強であった。なぜならメガリスに5割以上勝てるデッキがないからである。先攻をとれれば、あるいは手札が上振れれば、メガリスを倒しうるテーマもいくつかあったが、安定してメガリスに勝てるテーマは存在しない。したがって明らかなメガリスの一強環境であった。

当時の環境
メガリス対面にチャンスのあるデッキがTier3になるが、
どうしても安定してメガリスに勝つことができない。

 ではこのメガリスというテーマが何をするデッキなのかざっくりと解説したい。このデッキはメガリスベトールを活用し相手フィールドをすべて破壊でき、アドバンテージを稼ぐポータル・エマ―ジョンを活用し長期戦も強く、ファレグで打点を上げてリーサルを狙いに行くこともできる、何でもできる万能なデッキになる。
 召喚権に依存しないため手札の数だけ手数があり、アンフォも絡めればほぼすべての妨害を貫通して盤面を作ることができるため罠受けもよく、後攻デッキよりも後攻が強く、先行デッキよりも先行盤面の強いデッキになる。
 初動率も非常に高い。全てのメガリスをデッキ儀式でキルフールの成立が初動になるため、フールをデッキ儀式できるアンフォームドをドロー、またはサーチすれば初動が確定する。つまりアンフォームドサーチできるハギトの成立、ハギトをサーチし儀式召喚できるオフィエルの成立も初動になる。1枚からさらに儀式魔法と任意の儀式モンスターと儀式素材の全てをサーチできる魔神儀や、レベル4という優れた儀式素材でありながらサーチ効果まで持つマンジュ、センジュも採用されている。このデッキの儀式モンスターは儀式魔法の効果を内蔵しているため、センジュですらも儀式魔法と儀式魔法の好きな方にアクセスできるカードになる。
 このデッキはサーチをサーチするカードやサーチをサーチするカードをサーチするカード、サーチをサーチするカードをサーチするカードをサーチするカードがあり、相互にサーチしあえるため、キーカードを容易にそろえることができる。構築にもよるが私が使用しているデッキの初動率は92%であり、事故を起こすことはほぼない。

 これまでの話をまとめるとこのデッキは

・展開系デッキよりも先行盤面が強く、
・罠型デッキよりも妨害が強く、
・後攻デッキよりも手数があり、盤面解決力があり、
・アグロデッキよりもライフを詰めるのが速く、
・ミッドレンジデッキよりもリソース回復と後続を用意することができ、
・どのデッキよりも初動率が高く
・どのデッキよりも罠受けが良く、
・どんなにメタられても負けることのない対応力のあるデッキである。

興味のある方の為2022年におけるNRメガリスの研究記事を載せておく。

2023年のメガリスについて

 2023年NR環境を揺るがす事件が起こった。ヴェンデットの衝撃である。ヴェンデットは先行でコアレヴナントを立てるデッキになる。これは対象耐性と、戦闘・効果に対する破壊耐性を持つスレイヤーに1妨害を待たせるデッキになる。メガリスは対応力のあるデッキになるがこの先行盤面を捲ることができない。メガリスは全ての儀式モンスターと、ランク4、ランク8のモンスターにアクセスできるが、ランク4、ランク8、そしてあらゆる儀式モンスターはコアレヴナントの耐性を処理できない。

 儀式モンスターであれば、ベトール、デミスに限らず盤面解決力のあるカードは多数存在する。ロード・オブ・ザ・レッド、マジシャン・オブ・カオスなどがその例だろう。しかしいずれのカードも対象に取るか、破壊するかのどちらかになる。
 ランク4体のモンスターもデッドリーシン、アソフィール、ブラックコーン号、サンダースパークドラゴン、いくらの軍艦など解決力のあるカードは多いが、これもまた対象耐性と破壊耐性の両方を突破できない
 ランク8であればドラッグラビオンからCNo.92 偽骸虚龍 Heart-eartH Chaos Dragonにつなげることで、スレイヤーの効果をターン終了時まで向こうにすることができる。しかしこの効果は起動効果になるため、このモンスターの着地に合わせてレヴナントを合わせられてしまう。ラビオンの効果の発動後はモンスターを特殊召喚できなくなるため、スレイヤーの妨害を踏んだ後、他の手段で捲りに行くこともできない。

 とはいえ破壊耐性と対象耐性を重ね打ちしてくるデッキは、これまでも存在した。ではメガリスはそれらのデッキとどうやって戦ってきたのだろうか。
 多くの場合、メガリスは長期戦に持ち込みながら、ライフを詰める戦法をとった。必ずしもモンスターを処理する必要はないのだ。メガリスは長期戦も強力なデッキになるため、エマ―ジョンとポータルで大きくアドバンテージを稼ぎながら直接攻撃できるハートランドラゴや守備貫通のスリーバーストショットドラゴン、ペンテスタッグの攻撃力をファレグの効果で8000以上にし、ワンショットキルを狙っていた。ハートラはドラゴン族のナンバーズXモンスターになるため、たとえ処理されたとしてもラビオンで釣ることができ、ハートラのワンショットを複数回狙うことができた。
 またエマ―ジョンでデッキを回復できるため、このデッキはLOの心配がなく、無限に耐久して相手のデッキを枯らすという択もあった。
 しかしヴェンデット対面では、ヘルハウンドとレヴナントがフィールドのカードを除外し、メガリスのリソースが大きく削られる。そのため長期戦に持ち込むことはできない。またレヴナントの除外効果が強力であり、打点をパンプするファレグを除外されてしまうと、ライフを詰める手段がなくなる。したがって従来の方法でスレイヤーを処理するのは不可能である。

スレイヤーを処理できそうでできない人たち

 メガリスは手数と構築の自由度がありえないほど高いため、対応力が異次元である。そのため展開可能なモンスターは多岐にわたる。ではスレイヤーを処理できるモンスターは存在するのだろうか。

儀式モンスター編

 メガリスに儀式モンスターを1枚採用すると、マンジュ3枚+センジュ3枚+ペンシル3枚+素引き1枚の10枚からアクセスできるようになる。したがって先行で素引きしてしまうリスクを12.5%に抑えながら、後攻では84.53%の確率でアクセスできる。ゆえにメガリスにピーキーな後攻用の儀式モンスターを採用することは悪くない構築といえる。では儀式モンスターにスレイヤーを処理できるカードはあるのだろうか。

颶風龍-ビュフォート・ノウェム

 対象をとらずにスレイヤーを無力化できるカード。このカードをサーチした時点で、相手のスレイヤーが直接攻撃することはないので、素引き前提の札になる。素引き前提であれば容易にスレイヤーを処理する手段があるため、採用は考えられない。
 ただし、このカードを採用するプレイヤーが存在する可能性もあるため、メガリス対面のスレイヤーは、あえて攻撃を破棄するという択もあると念頭に置いておきたい。

青眼の混沌龍

 スレイヤーの除去が効かない子。このカードを多面展開すればスレイヤーの破壊耐性を削れそうに見えるが、スレイヤーの謎の打点パンプ効果により、簡単に戦闘除去されてしまう。スレイヤー強すぎだろ。

Xモンスター編

 メガリスはフールのレベル変動効果を使用すれば、ランク1~ランク10まで、任意のXモンスターを展開できるデッキになる。前述した通り、デッキの儀式モンスターをサーチすることは容易に行えるため、そのカードを儀式召喚、あるいはオクの効果で墓地に送りフールで回収、その後フールやその他メガリスの効果でフィールドに立てることであらゆるレベルのXモンスターを展開できる。

No.77 ザ・セブン・シンズ

 いくらメガリスの展開力が高くても、NRにレベル12の儀式モンスターは存在しない。そのため妥協召喚することになるが、それではスレイヤーに除外されるだけなので、コアレヴナントの回答にはならない。

CNo.9 天蓋妖星カオス・ダイソン・スフィア

 ディサイシブのネクロスと併用して採用することになるカード。で崔支部をフールで拾い、そのまま展開すればこのカードの成立につながる。しかしこのカード自体がレヴナントの妨害を受けてしまう。このカードを展開しさらにほかの手段を用意するのは非常に難しい。

CNo.92 偽骸虚龍 Heart-eartH Chaos Dragon

ドラッグラビオンから展開するカード。レヴナントの妨害を越えられず、このカードの展開後のラビオンの制約から、他の手段でスレイヤーを処理することもできなくなる。

No.85 クレイジー・ボックス

 メガリスにとっては最も展開氏しやすいランク4のXモンスター。スレイヤーを無力化できる可能性が6分の1と、期待値があまりにも低い。逆に期待値が低すぎるからこそ、スレイヤーの妨害を踏まないのではないかと期待できる。メガリスにとってランク4が最も容易に展開できるので、このカードであれば1ターンに2体ほど展開できる。2回サイコロを振れたとしても成功率は36分の11しかない。

No.82 ハートランドラコ

 直接攻撃でライフを詰める子。レヴナントに除外される。この効果を使うと他のモンスターで攻撃できなくなるため、ジャジャやファレグを通しに行くこともできない。

電脳堺甲-甲々

 クラウソラスのネクロスを中心としたネクロスギミックと併用して採用するカード。このカード自体がレヴナントの妨害を受けてしまう。バトルを介するスレイヤーの除去という点で、ファレグと役割が被る。

素引き前提のカード

 ギルティアソウルスピアや壊獣など、素引きを前提にできるカードであれば、スレイヤーを処理できるカードが数多く存在する。しかしメガリスは2~3枚初動であるため、ギミック外のカードを採用しにくい。さらにメガリスは基本的に2~3枚の初動+上振れ札数枚で展開する。サーチ先のカードを素引きすることで、そのサーチを上振れ札のサーチに当てられるため、高い再現性をもって上振れ展開のできるデッキになる。したがって展開に絡まないカードを1枚も採用したくない。私はメガリスをCSに持ち込んだことが7回あり、うち6回優勝したが、いずれもデッキ40枚中、40枚すべてが展開札の構築になる。展開札を大量に採用することで、先攻制圧、後攻の手数、初動率の問題を解決できるのだ。素引き前提の不純物をメガリスに採用するくらいなら、ヴェンデットを持ち込んだ方が良いだろう。

メガリスが先行の場合

 たとえメガリスがヴェンデット対面の後手に勝てなくても、先行を全部勝てば不利対面にはならない。メガリスのほうが初動率が高いため、コインゲーであればメガリスが勝ち越すはずだ。ではヴェンデットはメガリスの盤面を捲れるのだろうか。
 メガリスの先行盤面はベトールやデミスで緩い、だが決して少なくない妨害を作りながら、後続を大量に抱え莫大なアドバンテージをたたきつけるものになる。しかしいくらアドバンテージがあっても、コアスレイヤーを処理できなければ意味がない。したがってメガリスの盤面を受けられるかが肝要となる。
 切り札となるベトールの妨害は相手フィールドのカードをすべて破壊するものになる。しかしヴェンデットは破壊に対する受けが非常に良い。コアとレヴナントが並んだタイミングでベトールを切っても、素引きのマゼラで貫通される恐れがある。アンデットに除去を当てることが裏目になるのであれば、パズロミノかナイトに妨害を当てることになるが、切り札になる1妨害を1対1交換で終わらせるのは効果が薄い。ナイトが割られても、ロミノが除去されても、手札次第で展開が貫通する。したがってベトールの妨害を有効に打つタイミングが存在しない。そのためメガリスの先行盤面はヴェンデットに捲られうる盤面になる。メガリスはヴェンデットを捲れないのに、ヴェンデットはメガリスを捲りうるのは大いに問題がある。

終わりに

 NR限定戦であれば、とりあえずメガリスを持ち込めば間違いない、という時代は終焉を迎えた。とはいえヴェンデットの一強環境になることもないだろう。

tier表

 先攻宇宙創造系の王様たるヴェンデットが環境首位であり、ヴェンデットには勝てないもののそれ以外のデッキには先でも後でも負けることのないメガリスもTier1になる。現環境はメガリスーヴェンデットの二強環境といえるだろう。Tier3のデッキは先攻宇宙創造系のデッキが多く、先行をとって都合よく引けばまくられない盤面を形成できるが、初動率や後手の弱さなどの観点から、Tier1デッキとは大きな差がある。
 メガリスはヴェンデット対面は不利であるが、NR限定戦はカジュアル勢がおおく、環境外のデッキを持ち込む人が多い。環境外のデッキを狩る性能に関しては、ヴェンデットよりもメガリスのほうが強力であるため、CSにメガリスを持ち込み意味は十分にあると考える。
 メガリスの一強環境は終焉を迎えたが、これによりメガリスとそれに有利なヴェンデットという構図が生まれ、メタが回る環境になった。今後のNR限定戦のメタゲームの行く末が楽しみだ。

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