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NR限定大会に3大会連続優勝した花札衛の解説

はじめに

 2023年に入ってから日本でもNR限定大会が活発に開催されるようになった。これらの大会において優勝し続けているデッキは花札である。そのためこのデッキに興味がある方も多いのではないだろうか。また花札は運要素の激しいデッキであるとして、低く評価している方も多いのではないだろうか。
 結論から言うと花札は運要素の大きなテーマにならない。直近のCSで優勝し続けている花札の使い手は一人であり、その人の花札のみが勝ち続けている。これは花札を正しく回すのに、かなりの練度が要求されるからである。花札の展開の選択肢の多さは他のテーマに類を見ない。花札は単一の展開ルートや勝ち筋を待たないため、「正解」のないアドリブだけで回すテーマになる。しかも展開の選択肢の判断材料は、相手のフィールドや採用札、自分のデッキのトップやヒット率など簡単に分からないものや未確定な札になる。どの筋を重く見てケアし、どの筋を割り切るのか、プレイヤーの判断力や事前の研究の厚みが問われる。さらに花札のヒット率も展開によってコントロールできるものになる。したがって花札のヒットが悪いというのは単に運によるものだけではなく、プレイヤーの力量不足の可能性もある。自分の花札はいつもヒットしないと嘆くなら、展開を見直し腕を磨いてヒット率を上げた方が良い。

 なおこの記事は花札をある程度研究している方に向けて書かれたものになるため、各カードの効果など基礎的な事項について確認しない。CSで優勝することを前提に最低限の研究を行っている上級者向けの解説になる。初歩的な解説が必要である場合、真佐まつりさんが極めて優れた初心者向けの花札解説のNote記事を作成しているので、そちらから履修することを勧める。
 また私は以前、花札の展開ルートと確率計算による裏付けをNote記事にまとめている。今回の記事も全く同じ題材になるため、重複する内容もみられると考えられる。しかし前回の記事の解説が分かりづらく読み返すことを勧められないことから、この記事だけで完結することを優先し内容が重複していることには目をつむった。不要であるかもしれないが前回の記事のリンクを掲載しておく。

 本稿の執筆にあたってNR花札のスペシャリストである真佐まつりさんに多くのアドバイスをいただいた。彼女が数多くの質問に丁寧に答えてくださったおかげでこの記事を書くことができた。この場でもお礼をお礼を言いたい。本当にありがとうございました。

著者の戦績:NR限定大会 優勝×11、準優勝×2、4強×0

NoRichesにおける花札

 海外のメジャーなNRフォーマットコミュニティであるBoss Stageは毎週Norichesと呼ばれるNRCSを開催している。そこではメタル、メガリスに大きな規制がかけられおり独自の環境が形成されている。2023年に入ってから日本でもNRCSが活発に開催されるようになったが、その際メガリスの一強環境を嫌い、海外で一定の成功を収めているNorichesの独自レギュレーションを輸入することが多い。
 ところがNRフォーマットの環境情報を国内外から取り入れて研究している人は非常に少ない。そのため国内外での研究や知識の交流が不十分であり、海外で知られていない、あるいは不当に低く評価されている強力なアーキタイプがいくつか存在する。その代表例が花札、@イグニスター、妖仙獣になる。なかでも群をぬいて強力なテーマが今回解説する花札である。
 私はこれまでNorichesのレギュレーションのCSに3回参加し、5‐0、5‐0、4‐1で三度とも優勝した。花札を持ち込んだCSにおいて優勝できなかったことはない。なおNorichesはスイス式であるため、1敗しても優勝の目が残る。最後のCSでは4‐1であるが、4‐1のプレイヤーが3人並びオポネントで私が優勝した。通算で14‐1になり一敗を喫しているが、その試合の敗因は初動を引けず手札が事故ったためであり、花札のパワーが低いことを示すわけではない。花札の初動率は高くないが低くもない。

サンプルレシピ

最強

 なおNorichesへの参加方法については別のNote記事にまとめている。興味のある方はそちらも目を通しておくとよいだろう。

※追記
1月27日の制限改定により、NoRichesの花札に規制が入った。萩が制限になったため今までのようなTier1デッキからTier3あたりのデッキに変化したと考えている。最強のデッキではなくなったが、十分戦える環境デッキの一つである。

NRスタンダードにおける花札

 NRスタンダード(全てのNRカードが使用可能なレギュレーション)は、一般に知られている通りメガリスの一強環境になる。花札はその中でも十分に通用するアーキタイプの一つだ。NRスタンダードはメガリスが頭一つ分抜けていながらも、メタル、花札、イグニスターがそれに追随する4強環境だと、私は考えている。花札はメガリスに対抗しうる数少ないテーマの一つであり、環境に持ち込むことも十分考えられる。NRスタンダードの環境解説は別のNote記事にまとめているので、より深く知りたい場合はそちらを参照してほしい。

花札の展開における確率論

略称一覧

光札:攻撃力2000の花札
タネ札:攻撃力1000の花札
カス札:攻撃力100の花札

松:花札衛ー松ー
鶴:花札衛ー松に鶴ー
桜:花札衛ー桜ー
幕:花札衛ー桜に幕ー
牡丹:花札衛ー牡丹に蝶ー
萩:花札衛ー萩に猪ー
芒:花札衛ー芒ー
月:花札衛ー芒に月ー
紅葉:花札衛ー紅葉に鹿ー
柳:花札衛ー柳ー
道風:花札衛ー柳に小野道風ー
桐:花札衛ー桐ー
鳳凰:花札衛ー桐に鳳凰ー

光札優先の原則

 前述の通り花札のヒット率はプレイヤーがコントロールするものであり、運を天に任せるものではない。この章では花札のヒット率をどのようにコントロールするのかを解説する。
 まずヒットが重要でないカードから入るべきだという考え方、つまり光札優先の原則について確認しておきたい。これは以下の二つの理由に基づいた既存の考え方である。まずはこの考え方を紹介し、その後私なりの考え方を解説する。

 花札のヒット率を下げるカードは花積み、花合わせ、桜くらいしか存在しない。花合わせはヒット大幅に下げるカードになるが、このカードを発動するタイミングを柔軟に変更することは難しく、初動で発動することになる。そのため花合わせをヒット率を調整する札として利用することは難しい(とはいうものの手札が上振れた場合は、花合わせを温存して動くこともしばしばある)。それに対してヒット率を上げるカードは柳、芒、札再生など展開の中で積極的に使用するカードが多い。したがって花札の展開が進むにつれてヒット率が若干向上する。故に展開の終盤にヒットさせたい札を使うべきである。
 光札優先の原則の二つ目の理由は、札再生のヒットを重く見るからである。1ターンに4回以上萩や紅葉の効果を起動する必要がある状況や、桜、幕の効果を外すと展開が伸び悩んだり、除去が間に合わなくなったりする恐れがある状態ではそれらのカードを確実にヒットさせなければならない。したがってそれらのカードについてはトップを調整し、絶対当たる保証を付けたうえで効果を発動するのがマストになる。このデッキは運否天賦のギャンブルをするデッキではない。UR1枚以上確定のガチャであわよくばURを2,3枚拾いに行くデッキである。そのために光札や追加効果の必要のないタネ札などヒットが重要でないカードの効果を先に使用し、ドローを加速させて札再生を探しに行く。そして札再生の効果でトップを固定し、本命のタネ札、桜、幕の効果を使用するべきである。

 しかし私は光札優先の原則の第一の理由は、あまり重要でないと考える。なぜならここでで挙げられているヒット率の操作は、ヒット率に大きな影響を与えられないからである。柳等でデッキの花札数を変動してもヒット率は0~2%くらいしか変わらない。また柳が展開において重要な札であることと同じくらい、桜も展開で活用される札になる。したがって展開が進んでもヒット率はさほど上がらない。そのため他に理由がある場合は第1の理由による光札優先の原則より、別の可能性を重く見て他のカードを先に使用するべきだろう。
 それに対して第2の理由は十分に活用すべきである、と私は考える。前述の通り桜や幕などヒットを外してはならない札を確実にヒットさせられるようになることには大きな意味がある。もちろん未確定のセットカードや妨害もちのモンスターがいる場合は紅葉や萩から入るべきだが、そうでない場合手札で腐っているタネ札や光札を札再生を探しに行く札として有効活用すべきだろう。

ヒット率の変わるカードの扱い方について

 前述の通り芒、柳、桜、花積み、花合わせ、札再生は花札のヒット率を変動させるカードになる。展開の途中でヒット率を意識し、ヒットの成功率を上げるべきだろうか。
 もちろんヒット率を上げるべきである、と私は考える。しかしヒット率の調整は展開における最優先事項ではない。まず盤面の除去や妨害の貫通という目的があり、そのためにヒット率を上げることが求められる。したがってヒット率の変動とセットのカードの除去を天秤にかける場合、後者が優先される。ヒット率の調整は展開札の優先順位の中で決して高くならない。他に優先すべきが事がない場合、ヒット率の調整を行うべきであり、ヒット率の調整だけを目的にするべきではない。そのため柳や花合わせなど、使えばアドが取れるがヒット率の下がるカードも積極的に使うべきであり、確率の変動にはさほど注意する必要はないだろう。札再生については既に説明した通りだ。桜や花積みに関しては、積極的に効果を使用するべき、という一般的なセオリーの通りである。花積みのサーチカードの上から2番目に桜を置くことで、桜のヒットを確実に成功させつつ手札を1枚増やすことができる。この方法を使用すれば桜のサーチと合わせて、花積みから同名モンスターにアクセスできるため、紅葉や萩を連打しやすい。

芒の効果をどう使うか

 芒はヒット率に影響を与える花札の中で最も扱いづらいカードだ。このカードの効果でどのくらいマリガンするべきなのかは、人によって考え方が異なる。実際にNR花札の先達の真佐まつりさんに質問したところ、芒の効果を単にマリガンとして運用しており不要なカードを戻すようにしていると伺っている。しかし私は芒の効果をもっと強く運用できると考えている。花札にはそもそも、不要なカードが存在しない。腐っているカードは札再生を探しに行くためのマリガンカードとして利用できるからだ。もし不要なカードが多いのであるならば構築を見直すべきだろう。
 芒の神髄はデッキの魔法カードにアクセスできる可能性を秘めていることである。花札の通常の展開ではデッキの魔法にアクセスしにくいため、ドローを加速して魔法の手数を増やすために用いられる。したがって芒の効果でマリガンする場合は、今後必要になりそうなカードも含め、やや多めにマリガンすることが求められる。また手札が少ない場合は芒の効果が非常に弱いことになる。そのためデッキからカス札にアクセスする場合は、ライトニングボルテックスなどの魔法カードにアクセスする必要がある場合を除いて、芒よりもむしろ柳が優先される。

先攻時の花札

 花札は後攻デッキであるが、NR限定戦がそもそも先行有利なゲーム性ではないため先攻を譲られることがよくある。その場合どのような盤面形成が求められるのかを考えてみたい。
 なお一般的に花札は先攻時の盤面が弱いと評価されているが、決してそんなことはない。先日NR花札のスペシャリストである真佐まつりさんと花札の調整をしたが、その際彼女は信じられないことに「花札ミラーはむしろ先攻の方が有利なのかもしれない」とおっしゃっていた。花札を煮詰めれば煮詰めるほど、先攻時の強さに気づき感激する瞬間が訪れる。彼女ほどの使い手ならば、私以上に花札の先行の強さを評価しているのかもしれない。さすがにミラーも後手が有利だと思うが、先攻が有利だと思わせるほど先攻でも強いテーマである。

盤面形成の優先順位

 花札の先行展開として優先する順は以下の通りになる。当然のことであるが、対戦相手のデッキが判明している場合、それに合わせた展開が肝要になる。どの展開ルートでも先攻制圧を目指すことは難しいため、先行展開で目指すべきことはどれだけ次のターンが返ってくる期待値が高くなるかと、次のターンの展開力や手数をどのくらい用意できるかになる。そのため牡丹をプレイし相手のドローカードを弱くすることが重要になる。また先行をとった場合は花積みの墓地効果を強く使えるようになるため、花積を掘りに行くバリューが高い。したがって花積みになりうる柳や芒を積極的にプレイする必要がある。

①キキナガシ風鳥+手札に後続(札再生、花合わせ、松、幕、桜、墓地に花積み等)
②盤面に花札の後続(柳、桜、EX素材)+仁王立ち(素引き)
③花札の壁数体(上振れたら墓地に仁王立ちを準備)
④キキナガシ単騎(後続無し)

 最も強い先行盤面はキキナガシ+後続になる。これはキキナガシを越えて1キルすることは難しいため、次のターンを確実に用意しつつ後続によって3ターン目の1キルを目指すものになる。非常に強力な盤面になるが、壊獣が大きな裏目になる。そのためG天威など壊獣を採用しやすいデッキが流行している場合は、②を優先した方が良い。
 ②は墓地に仁王立ちを置き次のターンを用意しつつ、フィールドに柳や桜を残して展開することで次のターンの展開力を大幅に向上させるものになる。エクシーズ召喚につながりやすいモンスターをフィールドに残せば、次のターンのEX展開が非常に強力なものになる。この展開を選ぶ場合は桜の効果で他のモンスターをリリースしたり、フィールドの柳をリリースしないことが優先される。この展開の場合はフィールドにリソースをためるので、ライトニングボルテックスが大きな裏目になる。後攻デッキの場合このカードを採用していることが十分に考えられるため、キキナガシ+後続の方が優れた盤面になるだろう。
 ③は花札のモンスター5体を壁として運用することで、ライフを詰められないようにするプランである。この場合フィールドに柳や桜などのリソースを残しても戦闘で容易に突破されてしますため、これらのカードをフィールドに残すバリューが低い。また展開の途中で仁王立ちを掘り当てることができれば②のルートに合流できる。
 この場合萩や紅葉、トップ固定済みの状態での牡丹等、追加効果に意味のないタネ札をプレイすることによって、花札が捲れれば手札交換、めくれなくても墓地リソースを用意しつつ、仁王立ちを掘りに行くことが期待できる。しかし私はこの展開に萩や紅葉を使用することを支持しない。まずこの場合花合わせのヒットという裏目が存在する。牡丹であれば別だが、萩や紅葉は次のターンに連打することが要求される札になるからである。これらのカードを早々に使い果たすようなことはすべきでないだろう。
 ④はキキナガシを短期でフィールドに残す展開になる。この場合松や鶴で展開途中にドローを加速できるが、そこで初動を引けないとターンが返ってきた後のアクションが起こせない。このプランが取れる場合横展開するプランも取れると考えられるため、基本的にはそちらを優先することになる。

後攻時の花札

 花札の後攻展開は主に二つに分けられる。一つ目は相手のライフをとり、1キルすることである。二つ目は盤面を整えながら相手にターンを返すことになる。当然ながらライフをとる展開を優先して展開するべきである。

1キルを狙う場合の発動するカードの順番

① 初動になる札
② 相手の妨害を除去できる札
③ 妨害を受けた際、リソースになる札
④ 花札のヒット率を上げる札
⑤ ヒットしなくても構わない札
⑥ ヒットさせたい札
⑦ 花札のヒット率を下げる札

 ※複数の運用ができる花札はその状況にあった運用が求められる。例えば桜は初動としても、妨害を除去する札としても運用でき、ヒットさせたい札にもなるため、この数字の①、②、⑥のどれにでも活用できるカードになる。そのため桜をどの目的で使用するかによって、発動する順番が異なる。したがってこれはカードがごとの順番ではなく、運用する目的によって発動順であるといえる。

 初動から入る必要があるのは言うまでもないだろう。その次にプレイする必要があるのは萩、紅葉の妨害を除去できるカードになる。展開が通らなかったら元の子もないため、まずはこれらのカードから入り相手の妨害やセットカードを除去するべきだ。桜や花積など間接的に妨害を除去できるカードに悪背うできる札も②に該当する。
 ③は相手に破壊されると後続を確保する松のことになる。これが立っているだけで激流葬の受けが良くなるため、原則としてフィールドに残したまま展開する。相手のバックをすべて割った後は③の必要がないため、鶴を⑤のカードとして運用することになる。
 芒、柳、札再生の墓地効果が④に該当する。これらのカードによるヒット率の変動はあまり大きなものではないため優先順位が低い。余裕があればヒット率を上げておくに越したことはないだろう。
 除去したいカードがない状態での萩や紅葉、1キルをとりに行く、または既にトップを固定している状態での牡丹、光札全般、松が⑤に該当する。ヒットしなくても構わないカードをプレイする必要性については、光札優先の原則で確認した通りだ。
 桜や幕、壁を除去するための萩、リソースとなるフィールド魔法や攻撃反応罠などすぐに除去する必要がないが必ず除去を当てなければならない状態での紅葉が⑥に該当する。これらのカードは確実なヒットや、ヒット率の高い状態などを作ったうえで使用することが望ましいカードになる。例外として花積みや札再生でトップが固定できている状態であれば、むしろ先にこれらのカードをプレイすることが求められる。
 桜、花合わせ(、花積み)が⑦に該当する。桜は基本的に①や②、⑥のカードとして運用するため⑦として運用することはあまりない。また花合わせも①として運用するカードであるため、最後に使用することはないだろう。

 花札はアドリブの展開が求められるテーマであるが、この優先順を頭に入れておけばどの札の効果から使用するべきなのかある程度機械的に処理できるようになる。どの盤面形成を目指すのかどういった展開を目的にするのかが決まれば、その盤面を再現できる可能性が最も高いルートは一つに絞られるため、あとはそのルートを順番通りになぞるだけになる。この記事ではいろいろな解説がなされているが、どのカードから発動するべきかという順番が最も重要なことになる。他の箇所での説明は何故この順番で発動するべきかどうかという解説に過ぎない。この記事における最も重要な個所や、私の研究における結論は、この花札の展開する札の順序であるといえるだろう。

ターンを返す場合の盤面形成

 前述した先攻時の盤面形成に近い立ち回りが要求される。しかし先行と違って萩や紅葉を連打して盤面をとり、相手の後続を削ることが重要になる。したがってキキナガシやフォーチュンチュンを立てるバリューが薄く、相手フィールドとデッキトップを操作して捲られにくい盤面を形成しながら、花札の壁を展開し、上振れたら仁王立ちや後続を用意するものになる。展開自体は前述した先行展開に、盤面解決札(萩、紅葉)が加わるだけなのでそちらを応用してほしい。

妨害の踏み方

 妨害の踏み方は相手の妨害の当て方の影響を強く受ける。したがってプレイする環境によって、どうやって妨害を越えるべきかが異なるだろう。ここでは日本のNRユーザーの妨害の当て方を中心に考えていきたい。まず花札を妨害する場合、初動を止めることがセオリーだとされている。したがって妨害受けの悪いカードを後に残し、最初に妨害を踏むためのカードを使用すべきである。例えば桜+幕の場合、桜への妨害が重いためまずは幕をプレイするべきである。
 また相手の妨害の種類や、セットカードが何であるかによっても妨害の踏み方が変化する。例えば妨害が激流葬であると推測するなら、花合わせではなく紅葉や松、芒を先にプレイすることによって、松のドローを有効活用しつつ花合わせを貫通札として使用すべきである。花合わせを引けていない場合も、松からプレイすることによって松のドロー効果で激流をけん制しつつ芒や柳、札再生の墓地効果で札再生や花合わせなどの貫通札を探しに行くことが求められる。
 セットカードをディノミスクスと読むのであれば、最初に召喚したモンスターに当てられる可能性が高いため、あえて桜を召喚して妨害を踏み、裏から花合わせなどの貫通札を通す筋もある。しかしその場合相手が桜に妨害を当てなかった場合やディノミスクスを持っていなかった場合、召喚権が無駄になることと、召喚権を使わない初動を握っていれば自然にディノミスクスを貫通するため、あえてこのルートをとる意義は薄いだろう。

採用の分かれるカードについて

光札の配分

 光札をどのくらい入れるべきかについて、意見が分かれているのでそのことについて確認したい。なお桜に幕は光札の中でも特異な効果を持ち、初動にも貫通札にもなる最強カードであるため3積みすることに議論の余地がない(極端な話、幕だけを40枚入れたデッキの方が通常の花札よりもメガリスよりも強力である)。ここでは鶴、月、道風、鳳凰の4つの採用枚数について検討したい。
 光札は召喚条件の重いものや使い勝手の悪いものが多く、できるだけ採用したくない札になる。しかし花札はデッキの花札の比率を高める必要があり、また1キルに光札が必須であるため、ある程度の光札を採用しないければならない。ではどの光札をどれくらい採用するべきだろうか。
 鶴は容易な条件でのドロー効果と使い勝手の良いレベルを持つため、非常に強力なカードであり、札再生の特殊召喚先としても優れている。しかし松を1ターンに2体以上展開することはほぼないので2枚目以降が腐りやすい。そのため採用枚数は1~2枚程度が妥当だろう。
 月も強力なドロー効果を有しているが、厚く採用することの難しい札になる。なぜなら月の媒体になる芒がフィールドに出しずらい札であるからだ。芒をサーチできる状況であれば、基本的に芒ではなく柳をサーチする。したがって芒の展開は芒を素引きすることが前提となる。芒がフィールドに立ちにくいのであれば、必然的に月も腐りやすい札になり、厚く採用することが難しいだろう。採用枚数は1枚が理想であるが、枠を埋める必要があるならば2枚目以降も検討できる。
 道風は光札の中で最も展開しやすいカードになる。しかしこのカードは光札の中で最も弱いカードでもある。このカードは花札のSモンスターをサポートするものであるが、NR花札にSモンスターは存在せず実質バニラである。それでも光札であるため打点が高く、1キルする役には立つだろう。採用枚数は1枚が理想であるが、枠を埋める必要があるならば2枚目以降も検討できる。
 鳳凰は強力なドロー効果を持つが、媒体となる桐が余りにも弱いためドローしたところで損失を補える程度であり、手札が増えていない。元から桐を採用しているならともかく、このカードのためにわざわざ桐を採用するのは考えられないだろう。

桐不要論

 桐は花札唯一のドロー効果を持たないモンスターである(相手モンスターの攻撃対象に選択されたときにドローできるが、この効果はあまりに使いづらく相手依存であるため、あってないようなものである)。そのため桐をプレイした時点で手札が1枚減る。手札の数が展開力に直結する花札において、ドロー効果を持っていないモンスターは、それだけで大きなディスアドバンテージを持つことになる。花札はドローしながら展開し、引いたカードでさらにドローしながら展開するコンセプトのデッキであるため、霧が展開をストップさせてしまう側面がある。
 桐の攻撃対象に選択されたときの効果は機能しないので、このカードは実質的にバニラである。したがってこのカードを採用する理由はデッキ内の花札の比率を増やせることと、レベルが12であることだけになる。これはセブンシンズが正規召喚できる数字になるため、横に広げた桐が生きて帰ってくれば強力な展開が期待できる。しかし私はセブンシンズを正規召喚するために桐を採用する必要はないと考える。盤面が返されずにターンが返ってきた場合、相手にはまともな妨害や展開札が残っていないと考えられる。したがって桐2体の枠が、柳や桜であっても問題なく勝つことができる。したがって、相手が盤面を越えられずにターンを返してきた場合に強いカードであるということは、桐を採用するのに十分な理由とはいえない。
 またこのデッキの天敵である@イグニスターのダブルサイバースマジシャンを越えるために、桐を採用すると主張する人もいる。それもまた桐を採用するのに十分な理由とは言えない。なぜなら@イグニスターは展開の途中で後続を拾うため、一度展開が通れば次のターンにウォーターリバイアサンの全バウンスからリーサルをとる動きまで確定する。したがって前に並べた桐が生きて帰ってくることも、リーサルをとられずに次のターンを迎えられることもない。唯一可能性があるとすれば後攻1ターン目にセブンシンズを成立させることだが、桐の自己SS効果には花札しか展開できない制約がつく。桐をサーチするカードの展開にも同様な制約がつくため、制約をつけずに展開するためには桐2枚(or桐+桜)+札再生2枚+制約なしで出せる花札1枚(松or桜or幕)+タネ札(牡丹or紅葉or萩)を瀬部手引かなければならない。そもそもデッキに3枚しか入っていない札再生を2枚引くことを要求している時点で、このような引きは不可能である。桐を採用したところで@イグニスターには勝てない。そのため桐の採用は不要である。

EXデッキ活用法

 花札のゲームプランは以下のようになる。
先攻の場合、
1ターン目:展開
→2ターン目:壁で耐える
→3ターン目:EXデッキを活用しつつ超展開で1キル。

後攻の場合、
1ターン目:相手の展開を眺める
→2ターン目:1キル(1キルできなかったら
→3ターン目:壁で耐える
→4ターン目:EXデッキを活用しつつ超展開で1キル。

 花札は展開にターン終了時まで花札しか特殊召喚できなくなる制約がつくが、花札モンスターが生きて帰3ターン目ターン目や4ターン目に、まず最初にExデッキを活用した展開を行う。例外的であるが幕や札再生を引いた場合も制約をつけずに展開できる。
 このように花札の展開には大きな制約がつくが、EXデッキを活用できるデッキになる。一緒に調整していただいた真佐まつりさんに他のEXデッキを活用したギミックの話をするたびに、花札のEXデッキにはそのような枠がないとおっしゃられた。そのように花札はものすごくEXデッキを活用するデッキであり、花札をメインデッキだけで戦うデッキだと認識するべきではない。

 ここでは花札の中でも扱い方の難しいEXモンスターや特筆すべきモンスターについて使い方を説明したい。

攻撃用モンスター

 リーサルを狙う場合セブンシンズが最も強力なモンスターになる。EXモンスターゾーンに4000打点が用意できれば、メインモンスターゾーンの打点が残り4000でよくなる。そのため光札を用意せず後続や貫通力、セットカードへのケアを意識した展開でも、容易にリーサルを目指せる。また花札は相手にターンを返す場合、フィールドに柳を残す。そのため柳2体でペインゲイナーを立て、相手フィールドを一掃しつつセブンシンズまでつなげることができる。他のエクシーズモンスターは積極的に召喚を狙うのではなく、相手のバックを除去した結果、フィールドに並んだ紅葉や萩などを素材に展開するモンスターになる。そのため制約がついているのかを頭に入れつつ、大きな寄り道せずに出せるモンスターの中から最も強力なモンスターを展開すると認識すべきだろう。例えばもっともよく使用されるモンスターの一つであるグラディエールは、萩2体で展開できるモンスターであり非常に展開しやすい特徴を持つ。ちなみにこのモンスターはミラーで非常に突破されにくいという特徴を持つ。

突破困難な盤面を解決するためのモンスター
 破壊耐性を処理するモンスターとしてゼータやジャジャを採用している。また超古代生物の墓場や闇を吸い込むマジックミラーなど、まず採用されるはずのないカードが、なぜか採用されたときのためにグランパルスもさしてある。これらのカードを活用することで花札の対応力が非常に高くなっている。

おわりに

 今回は私が長らく使ってきた花札の展開について解説した。上級者向けの解説と述べたとおり、非常に難しい内容も多かっただろう。また既存の花札の展開と異なる展開を紹介した箇所も多く、納得しがたい部分も多かっただろう。もし疑問に思うことがあればぜひ質問してほしい。

 なおこの記事を執筆している途中にNoRichesの新しいレギュレーションが発表された。これによって萩が制限カードに規制され、花札の1キル力が大きく低下することとなった。花札としては非常に大きな規制であるが、花札は1キルもできるミッドレンジデッキであるため、大きくアドバンテージを稼ぎながらEXデッキを展開しながら戦うことが要求される。今まで以上に練度が要求されるデッキにはなるが、それでも十分に戦うことのできるデッキだろう。


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