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2024年冬映画

「マンハッタン計画を知ってる?世界初の原爆実験。オッペンハイマー博士は、核分裂の連鎖反応がこの世界を呑み込むことを危惧してた」
「実験したが破滅は免れた」

「テネット」

2024年の冬映画をまとめる。

アクアマン/失われた王国

DCEUの最終作ということで、閉店セールのような出し惜しみなしのフィナーレだったと思う。アーサーが真の意味でスーパーヒーロー/父親/王になる成長を見せたので、あの世界はたぶん安泰だと思う。兄貴、虫を食うのは……。

ザ・キラー

デヴィッド・フィンチャー作品ということで見たが、ディティール重視で話としては盛り上がりに欠けた(主人公の職業から考えると、その平坦さも狙いなのかもしれない)。後半の無双っぷりを考えると、なぜ最初にやらかしたのかが不明ではある(フィンチャーがデビュー作で失敗したようなものだろうか)。主人公のプレイリストとしてザ・スミスが流れるあたりは「これこれこれこれ」って感じだ。

NOPE/ノープ

今期の映画ではないが、見ていなかったこと、IMAXで再上映されるということで見に行った。IMAXで大写しにされるチンパンジーが怖かった。「見るな」と言われているのについ「見てしまう」人間の習性に上手く言及したテクニカルな作品だと思う。それでいて、最後に「向き合う」あたりはエモーショナルで、そこも上手い。

犯罪都市 NO WAY OUT

「ニンジャが出て殺す」ではなく「刑事が出て殴る」シリーズだが、作品を経るごとにマ・ソクト兄貴の戦闘力が上がっているように思う。「真実の部屋」などのギャグシーン(と言っていいのかわからないが)も健在で、単に暴力一辺倒にならないのは良かった。舞台挨拶でリキ役の青木崇高さんが撮影現場の話をしてくれたのも良い思い出になった(「(戦闘について)まあ結果は見えてましたけどね」って言ったのは笑った)。

アーガイル

物語と現実がリンクするということで、実際に映像でそれを示した(つまり、ヘンリー・カヴィルとサム・ロックウェルが同じ動きをする)のは面白かった。これはよくできているが故にサラッと流してしまうが、意外に撮りにくいのではないだろうか。最後に「リンク」が明かされるものの、正直「本編」を早く撮ってほしかったという思いがある。

アメリカン・フィクション

例えばサウスパークのブラック家(トークン・ブラック)やオバマ夫妻のように、裕福で教養もある黒人はたくさんいると知識では知っていても、そのことがネタになってしまうくらいにはまだ先入観が拭われてはいない現状がある。「黒人らしいエンタメ」を白人が求め、実際の黒人の声には耳を貸さないというグロテスクな実態を痛烈に批判した一本だった(「黒人の声に耳を傾けるべきよ」と言いながらも選考委員の黒人2人の声に耳を貸さない、そもそも選考委員の5人中3人が白人だから多数決でいずれにせよ負けてしまうという描写には笑ってしまった)。ただ、兄や近所の人など様々な視点が描写されるものの、それぞれの事象について踏み込まないため消化不良感がある。

デューン 砂の惑星 PART2

サンドワームの迫力やモノクロの花火など前作にも増してとにかく映像が良く、また作品のスケール感にハンス・ジマーの劇伴がよく合っていた。一応の敵としてハルコンネン家がいるが、真の敵は彼をクイサッツ・ハデラッハとして覚醒させ、皇帝に据えようとする母親と言えるだろう(このあたりの「親の支配」や「決定論的な世界観」は「ヴィルヌーヴ節」といえる)。まだ生まれていない妹まで母親を通じて兄を縛ってくるあたりは脅迫/強迫的ですらある。オースティン・バトラーを「エルヴィス」ぶりに見たが、何をしていてもどこかに哀しさが滲み出ていて、やはり良い俳優だと思った。

オッペンハイマー

作品の内容を鑑みて、まず困難を乗り越えて劇場公開に尽力した人々に感謝を伝えたい。
ノーラン作品でよく取り上げられる「不可逆の変化」の最たるもの、自分たちを滅ぼせる力を形にしてしまった”クリシュナ”の栄光(があったようには見えないが)と没落が時系列を行き来しつつハイペースで描かれる。雰囲気としては「イミテーション・ゲーム」に近い。ずっと誰かが喋っていて情報量も多いため、ノーラン作品の中で一番難解かもしれない。物理学者を集めたり爆弾を組み立てるシーン、耳障りなほどの時計の音などはノーラン節を感じたが、ほぼ会話劇で進む、ある種平坦な、ある意味では最もノーランらしくない作品ともいえる(それを「挑戦」と呼ぶのかもしれない)。アインシュタインが(激似)「”賞”はそれを貰う人のためではなく与える人の弁明のためにある」という旨のことを話していたが、この映画が賞レースを総嘗めにしたのは少し面白い。あと、最後にものを言うのは「素行」なのだと思うと、下品ではあるがしんみりしてしまう。

Coming Soon…

「ボブ・マーリー」「バッドボーイズ4」あたりが楽しみだ。「フォロウィング」のレストア版も見に行きたい。


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