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ちょっとグラン・トリノについて語らせてください

昨日見た「グラン・トリノ」という映画がとてもよかったので、感想を述べたいと思います。

ストーリーは、朝鮮戦争に行った退役軍人(クリントイーストウッド)が、モン族というアジア人が多く住むコミュニティの中で1人暮らしていて、そこにいるアジア人の青年(タオ)少女(スー)と絆を深めていくという物語です。

以下ネタばれを含むので注意です。

モン族を軽蔑していたクリント

先ほど述べたようにこの老人は朝鮮戦争に行っており、アジア人を殺した経験があります。当時敵であった彼らに対する彼の印象は「イエロー、野蛮人、変わり者」など偏見が多いわけです。しかし、彼が少年や少女に絡んだギャングを追っ払うことで、その地域の人は、彼に大量の差し入れをして、パーティーに招いてくれるのです。

ここで彼は、モン族の人は恩に厚く、とてもいい人たちであることを学びます

実の家族にも頑固ジジイ扱いされて距離をおかれているのに、なぜかモン族は本当の家族のように感じるというのです。その後タオは、以前ギャングに命令された、彼の車グラン・トリノの強奪未遂のお詫びとして、クリントのもとで雑用を始めます。(車を盗もうとしていた少年を雇うクリントの成長もうかがえる)。

タオとの絆が深まったがゆえに。。。

タオとの絆が深まると、彼に建設業の知り合いを紹介します。現場で使う工具も買ってあげるクリント。もう彼は孫のようです。

しかし、このタオがまたしてもギャングの従兄弟に絡まれ、工具を奪われ根性焼きをされます。これに怒ったクリントは、ギャングの1人を捕まえて殴り、「もう関わるな」と脅します。

これが引き金となり、ギャングはタオの家を銃撃し(幸い死人は出ない)、スーを誘拐してレイプします。ボロボロになったスーを見たクリントは、「私のせいだ」と自責の念を感じ、「リベンジ」を決意するのです。

最後の入浴

このシーンは、まさにフラグ中のフラグである、愛犬との最後の入浴です。

では、元軍人の彼は「どのように復讐をするのでしょうか」。銃の扱いには慣れています。皆殺しにするのでしょうか。

いや、相手は多勢に無勢。クリントは相手の基地に乗り込んで、当然相手全員に銃を向けられます。

そこで「タバコを吸いたいのでライターを出す」と言い、ポケットから素早く「何か」を取り出します。しかし、銃を取り出したと思ったギャング達は、クリントを銃で滅多撃ちにします。倒れるクリント。手に握っていたのは「ライター」でした。

丸腰の老人を撃って長期懲役

ここがやばかった。もう朝鮮戦争で人を殺したくないと思った彼は、自分が死ぬことで全員を刑務所に送れる方法を選ぶのです。可哀想すぎる。家族には見放され、自分の弟子とも言えるアジアの青年とは一緒に生きる道を選べず、ギャングという全く関係ない外的要因によって、自らの命を犠牲にする。最後まで軍人だったのかもしれません。

そして、遺書を残した彼は、家族たちが集まる遺産相続のシーンで、グラン・トリノを誰に渡すか述べます。楽しみにしている実の娘。ニコニコが止まりません。

ですがもちろん彼が愛車グラン・トリノをあげたのはアジアの青年タオなのです。

分析

クリントはいつ変化したか。

頑固親父だったクリントは、あるシーンでそのプライドをへし折られます。それは冷凍庫を運ぶシーンです。冷凍庫が重いので、タオに手伝ってもらうのですが、どっちが重い方(上)を持つのかで喧嘩します。クリントは自分のプライドがあるので、「俺が上を持つ」と言いますが、タオは「助けを呼んだのはそっちなんだから、若い俺に上を持たせろ」というんですね。これがタオが初めて反抗したシーンであり、最後に反抗したシーンでもあります。

そこでクリントは自分のプライドよりも、タオの意見を優先するのです。ここに成長が見られます。


グラン・トリノの象徴性

このタイトルでもあるグラン・トリノはまさに「アメリカ」を象徴するものだと言えます。フォードで働いていたクリントは、息子がトヨタで働いているのを見て、皮肉を言います。

彼は元軍人でアメリカに尽くした男。その愛国心はとても強いです。

そんな彼の愛国心を象徴するグラン・トリノをアジア人の青年に譲るということは彼の中で人種への偏見がなくなっていることを意味します。実の孫はアメリカ人なのに、それよりもアジア人にあげる。この映画は退役軍人の問題や、人種の問題も扱っていますが、その統合性についてはグラン・トリノという象徴性をうまく使って表していると言えます。


まとめ

久しぶりにFilmarksで5点満点をあげました。運び屋もそうなんですが、クリントイーストウッドの演技がたまらなく好きなんです。不器用で頑固で、だけど心を開くと優しいおじいちゃん。ぜひ見て欲しい作品です。エンドロールのグラン・トリノの曲と合わさって涙が止まらなくなること間違いなしです。

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