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人類には音楽が必要

感染者が増え続け、イギリスの状況がまた良くない方向へ傾いている。2度目のロックダウンにならぬよう、地域ごとに厳し目の処置がされていくそうだ。

先日、知り合いのミュージシャンのライブにオープニングアクトとして参加させてもらった。このライブ自体先月一度キャンセルになり、今回もギリギリまで開催できるかわからない状況だった。参加人数を30人に制限して、会場側の協力もありなんとか無事に開催することができた。
私の主観だが、ライブの規定は日本よりイギリスの方が厳しく感じる。日本の状況を聞くと、間隔を開けて人数を減らしながら実行しているライブは思いの外多い様だが、ロンドンでは貸し出してくれるライブハウスやバーも少なく、ギリギリまで様子を見る会場が多い。


私にとって1月ぶりのライブだった。もうこのイギリス滞在中はステージに立てることはないだろうと諦めていたので、今回のライブに参加できたことが本当に嬉しかった。マイクを通して歌った時、久々に生きている心地がした。失いかけていた自分の使命を思い出した様な、長く潜っていた水面から漸く顔を出せた様なはっきりとした今を実感した。
主催のバンドのメンバーも皆優しく、お客さんも暖かかった。後半は会場にいるみんなが踊って、音楽のある空間を心から楽しんでいた。


久々に見たライブの光景だった。映像でもCDから流れる音でもなく、リアルに体感している音楽との空間がそこにあった。
楽しそうに踊る人たちを見て、やっぱり人類に音楽は必要だと改めて思った。
同じ空間で、リアルで音楽を共有する空間が必要だと思った。

今後ライブ配信がどんなに充実してきても、それがスタンダードになってしまう世界で私は音楽を続けられない。ライブ配信はあくまで一時的な文化であってほしいし、それはミュージシャン全員が思っていることだと思う。いつかまた同じ空間で、会場の全員とリアルな音楽を体感できるその時までの希望を抱きながら、それでも画面を通して私たちに音楽というエネルギーを伝えてくれているのだと思う。


以前、企画で『音楽が非合法になった世界』というテーマで物語を考えたことがあったが、まさか自分がそれに近い状況に陥るとは思ってもいなかった。
今の状況は音楽自体が悪なわけではないが、ライブができない状況がしばらく続いていた時、狂ってしまいそうなほどライブをしたい欲求に駆られたこともあった。
仮にもし本当に音楽が違法な世界になってしまったとしたら、私は法を犯してでもライブをするのではないかと思うほど音楽を表現する空間に飢えていた。ライブができない自分が悔しかったし、このまま忘れ去られ世界から消えてしまう様な恐怖も感じた。誰を責めることもできないこの状況で、それでもなんとか希望を持って音楽を作り続けることが私にできる唯一の方法だった。

全国のミュージシャンもきっと似た様なフラストレーションを抱えながら自分と向き合っているのだと思う。そして音楽を愛している人たちも、希望を持ってそんなミュージシャン達を待ってくれているのだと思う。

人類には音楽が必要だ。絶対絶対必要だ。
音楽のある空間で、みんなで体感して、味わって、浸って泳いで浴びて心をたくさん動かしたい。
早くそんな日が戻ってきます様に。

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