来秋開学が決定した東京科学大学、入試はどう変わる?
今回は、2024年10月に開学が決まりました東京科学大学(略称:科学大、英語名:Institute of Science Tokyo)についてです。東京工業大学と東京医科歯科大学が統合してできる東京科学大学。その入試に関する話題を中心にふれていきたいと思います。
国内屈指の理系大学同士の統合
統合する東京科学大学の元となる2つの大学、東京工業大学と東京医科歯科大学。この2つの大学はいずれも、国内に10校しかない「指定国立大学」となっています。
国に認められた数少ない指定国立大学のうちの2大学が一緒になるというビッグニュースが発表されたのは2022年の夏のことでした。当時、メディアでもかなり大きく報じられたのを記憶しています。
東工大と東京医科歯科大は、いずれも理系の大学です。 世界大学ランキングでも国内の大学としてはかなり上位にランキングされる、日本屈指の理系研究大学同士が統合するとなると、当然ランキング的にもインパクトが大きいだろうと思います。
また、両大学は理系大学といっても、それぞれ得意分野が異なることもポイントです。テクノロジーに立脚点をもつ東工大と、医療をフィールドとする東京医科歯科大。専門となる分野がズレています。統合によって各々の強みがかけあわされ、「医工連携」と言われる、今、世界的にも注目を浴びている分野が伸びるのではないかとも期待されています。
保護者が気になる「入試は変わるのか?」
保護者の立場として1番気になるのは、おそらく入試のことだと思います。
先日、教育情報サイト「リセマム」に掲載された両大学の学長インタビュー記事において、個人的に気になるポイントが3点ほど書かれてありました。
まず初めに、「入試のやり方を今後変えていくのか?」について。
こちらに関しては、少なくとも2年間は変えないと明言されています。 国立大学には、大きな入試制度変更をする場合は2年前を目途に周知するというルールがあります。その原則に合わせた対応となります。
とはいえ、ずっと変えないのかいうと、そんなことはないようです。現状の形にとらわれない多様な入試を検討する余地があるという点では、両学長が合意をしています。統合後、入試を変えていくことに対して、かなり前向きな姿勢だと受け止めました。
その背景を感じさせるのが、東工大・益学長の以下のコメントです。
今まで取り組んできた成果がデータとして出てきているのでしょう。それが裏付けとなり、多様な入試形態がもたらす価値の自信になっているのだろうと感じました。
東工大、現状と2年後の入学者選抜比率
ところで、今現在、東工大はどのような入学者選抜の比率となっているのでしょう。データを見てみます。
2023年4月入学までは、一般選抜の枠が930名、非一般選抜(総合型選抜+学校推薦型選抜)の枠が98名でした。非一般選抜の比率は10%弱だったということになります。
そしてニュースでも大きく報じられましたので、ご存知の方も多いと思うのですが、今後、東工大では「女子枠の新設」と「非一般選抜枠の拡大」が予定されています。
これによってどれぐらい変わるのかというと、2025年4月入学で見ますと、一般選抜枠が864名、非一般選抜(総合型選抜+学校推薦型選抜)の枠が244人となります。約23%が非一般選抜枠になるんですね。
2年かけて、10%弱だった非一般選抜枠が約23%まで上がります。結構インパクトがある変更だなと感じるところです。
ちなみに、東京医科歯科大はどうなっているでしょう。
先ほどのリセマムのインタビュー記事には、東京医科歯科大の田中学長が以下のコメントをしています。「(統合後)東工大で実施されている総合型選抜の医系学部への拡大は検討していますか」という学生の質問に対する回答です。
“匂わせ” がありますね(笑)。現状、東京医科歯科大の入試にも非一般選抜の枠はありますが、統合して一定期間の後、その割合や内容は変わるのかもしれません。
入試が変わるとしたら、いつなのか
気になるポイントの2つめは、そうした「大きな入試の変更がどれぐらいの時期に行われるか」です。
こちらに関しても、インタビューの中にヒントとなるようなコメントがありました。
入試の大きなフレームワークを変更するのには、適切なタイミングがあるんだとおっしゃっているわけですね。それが、6年ごとにある「中期目標・中期計画」の切り替えのタイミングなのだと。
次期「中期目標・中期計画」は2028年度から。もしそこで大きく変わるとするならば、先述した国立大の2年前周知ルールに則り、2026年中に入試変更の花火が打ち上がる可能性が高いと推察されます。
東工大「女子枠」は統合後も受け継がれるのか
最後にもうひとつ気になったのが、「東工大が2024年4月に新設する女子枠は、統合後どうなっていくのか」という点です。
この点が気になったのには理由があります。
実は、統合相手である東京医科歯科大学は女子学生が多いのです。
医学部内には「保健衛生学科 看護学専攻」が、そして歯学部内には「口腔保健学科」あり、いずれも9割以上が女子学生です。それもあって、大学全体では約6割が女子学生となっています。
一方の東工大はテクノロジー系の大学です。圧倒的に男子学生が多いです。
この両者が統合することによって女子学生比率はどれくらいになるのか、以前簡単に計算したところ、約3割になるとわかりました。
そうなると、統合後の大学全体で考えた場合、はたして「女子枠」を続けていく必要はあるのだろうかと個人的に関心をもって眺めていました。
今回のインタビューを見ますと、どうも女子学生比率は学部ごと専門領域ごとに判断するようです。
機械系や電気電子系といった男子学生に偏りがちな領域は、統合後も「女子枠」を継続し、積極的格差是正措置をとっていくのではないかと考えられます。
終わりに
東工大と東京医科歯科大の統合話が持ち上がったのは、2022年8月のことでした。そして、この度発表された東京科学大学の開学時期が2024年10月となりますので、約2年間という非常に短いスパンの中で、協議が行われ、実行されることになります。
このスピード感、すごいですよね。
それぞれの大学には独自の文化や歴史があります。ガバナンスも異なります。統合は決して簡単なことではないでしょう。それでも、これだけのスピード感で駆け抜けてきた背景には、やはり現状への危機感があったのではないかと想像します。
東京科学大学のコアバリューのひとつは「変わり続ける大学」なのだそうです。統合後も時代に合わせた刷新を次々見せてくれるのではないかと期待が高まります。
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