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来春の国公立大学入試「選抜要項」分析を深掘り

このnoteは、2023年10月24日の Voicy「【教育の明日をよむ】knockout の10分キャッチアップ」の配信内容をもとに作成したものです

今回は、2023年10月18日に旺文社教育情報センターさんがリリースされた「2024年国公立大学入試『選抜要項』分析」を見ながら、雑感を書いていきたいと思っています。

▼ 2024年国公立大学入試「選抜要項」分析
https://eic.obunsha.co.jp/file/exam_info/2023/1018.pdf

旺文社教育情報センターより


いきなり結論

結論から言いますと、昨年の国公立大学の入試と、今年の国公立大学の入試、ほとんど変わらないです。

そもそも、こうした傾向分析というのは、前年度との比較だけで見てもあまり意味がなくて、もっとずっと前の数字と比較してみるとか、毎年毎年の変化を積み上げていって経時的な変化を見るとかをしないと、見えてくるものがあまりありません。よって、昨年と比べてもそんなに変わらないよというのは当たり前の結論です。

一応、サブタイトルのところに、「『総合型+推薦型』が10年連続拡大。募集人数の割合は23.0%に!」と書かれてはいるんですけれども、こちらに関しても、まだ23%止まりなのか…というのが正直な感想です。

というのも、全国の国立大学法人が会員となっている国立大学協会は、大学入試改革の基本方針を出した2017年当時、2021年度までに国立大学全体として総合型選抜と学校推薦型選抜の占める割合を入学定員の30%とすることを目標にしていたからです。

その目標と比べると、2023年現在で23%ということは、まだまだ全然足りてません。しかもこの23%、国立大学と公立大学を合わせた数字となっており、国立大学だけで考えると20%程度となりますので、さらに目標を下回っているのが現実です。


増加しつつある国公立大学の定員

細かいところを見ていきます。まず、募集人数の増減に関してです。国立大学は昨年と比べて+194人、公立大学が+523人、両方ともプラスとなっています。国公立全体で+700人以上と聞くと、かなり募集人数増えている!?と感じるかもしれません。

しかし、国立大学の募集人員は全体で10万人弱。公立大学の募集人数が3万4000人ほどなので、それと比べたら+700人など微々たるものです。

ただ、もっと昔、10年くらい前と比べるとどうでしょう。2012年度の国公立大学全体の募集人数と比較すると、その時から約4800人ほど増加しています。


そんなに増やして大丈夫? 気になる地方私大経営

理由はいろいろとあります。地方創生を実現するために、その目的に関連するような学部を増やしましょうとか、高度情報人材の不足が見込まれることから情報系の学部は定員増を認めましょうとか、最近だけでもいろいろと施策を打ち出しているのです。したがって、国公立大学の募集人数が増加になるのはわかるのです。わかるのですが、、、、子どもの数って減ってますよね?

さらには不登校となっていたり、通信制に通ったりする生徒も増えています。そうした生徒たちが大学に進学する際、対面型の大学を選ぶこともあるとは思いますが、通信制の大学を選ぶ人も今後一定数出てくるのではないでしょうか。

さらには、地方私立大学の公立大学への転換が厳しくなりそうな見通しもあります。地方の大学には、地域に住む若者をその地域に留める機能があることから、地方私大の経営が悪化すると、自治体が公立大学として立て直しを図るケースが2000年代後半から続いていました。そうした動きに対し、公立大学の新設は、学生を確実に集められる場合のみ認可するよう審査を厳格化する。そう文科省が方針を発表したのです。

何が言いたいかのかというと、地方の私立大学や小規模な私立大学は、これからすごく厳しくなるのではないか?ということです。

文科省は、来年度の概算要求の中に、私立大学の再編統合に対する財政支援として35億円を計上するようです。

その35億円の中から支援を得て、自力で生き抜く力をつける。そうでなければ、一定期間内に撤退なり再編なり統合なりをしてください。国のそんなスタンスが透けて見えるようです。


国公立大学の受験時期の前倒し化

国公立大学の入試の話に戻ります。

総合型選抜や学校推薦型選抜の割合は、国立大学も増加傾向ではあるのですが、公立大学のほうが伸びが大きいです。

2024年国公立大学入試「選抜要項」分析
(旺文社教育情報センター)

公立大学の募集人数では、総合型選抜が昨年に比べて+6.1%。そして、学校推薦型選抜が+3.4%となっています。

ポイントは、これが何を意味するかです。

元々、公立大学の一般型選抜では、前期日程と中期・後期日程があり、中期・後期日程がいわゆる“敗者復活枠”のような位置付けでした。それが今、ぐぐぐっと枠が減っています。その代わりに増えているのが総合型選抜や学校推薦型選抜というわけです。

昨今、「年内入試」という言葉がよく使われるようになっています。年明けを待たずに、つまり、共通テストを受験することもなく、大学入試を終わらせてしまう受験生が増えているのです。

公立大学も、中期・後期日程の枠を削り、総合型選抜や学校推薦型選抜を増やしていますので、受験のタイミングが前ズレしてるところが増えているのではないかと思います。

以前だったら、国公立大学の受験を中心に考えたとき、一般型選抜の前期日程を受け、ダメだったら、中期・後期日程を受け、と2段構え3段構えにするのが一般的でした。

今は1段目に総合型や学校推薦型がきて、それでうまくいかなかった場合は一般型選抜の前期、ないしは、わずかですが、中期・後期がある、といった感じになりつつあるのが、ここから読み解けるのではないかと思います。


国立大学受験の常識も崩れる?

最後に、国立大学入試で見られる「ある兆し」です。

国立大学の入試でよく耳にするのは、「総合型選抜や学校推薦型選抜はたしかに近年増えてはいるけれども、増やしているのは、いわゆる中堅以下・地方の国立大学。東大・京大に代表される難関大学は、昔とそんなに変わらないよね」という話です。

実際、その傾向は確かにあると思います。
ただ、このところ、気になる動きもいくつか出てきています。

まず、東北大学が国際卓越研究大学に申請する際の資料において、将来的に入試をすべて総合型選抜にしますと公言した件。そして、東工大も、女子枠の新設と、一般型の一部を総合型に振り替える入試変更を立て続けに発表しました。

こうした動きを考慮すると、難関国立大学だから一般型選抜中心だよという定説もやや崩れつつあるのかなとは感じます。

1年後、2年後に変わるということはありません。しかし、お子さんがまだ小さく、大学受験が5年後10年後となった場合、このあたりの常識が変わってくる可能性は頭の片隅に置いておくといいんじゃないかなと思います。


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