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〈アジア編〉香港

次号のknockはアジア編。取材する地域の範囲や全体的な構成はまだ計画中ですが、香港での取材が迫ってきたので、ここに取材に関する記録を雑にまとめていこうと思います。個人的な手記のようなものですので、特に面白いものではないかもしれませんが、誰かの何かのためになればいいなとも思います。記事は分けず、ここに加筆していくことにします。

香港へ

12月6日(金)午前中のフライトで香港へ。少し高かったけど、現地の状況がわからないので夕方着の便にした。深夜着の便は色々とリスクが高い。現地気温は10度から20度なので軽めのアウターで良さそう。中に着るもので調整することにする。空港へ到着したらバスターミナルから出ているA12・Siu Sai Wan (Island Resort)に乗車しWater Street下車。ホテルまで歩いて5分ほど。帰国は12月18日(水)予定。

・デモの心配
現地の友人やアーティストたちの話によると、正規のデモ活動は計画された日程で行われていて、激しい衝突は局地的に起こっているので最新情報を常にチェックし行動に注意すること。黒い服は避け、警察のいそうな場所は出来るだけ近寄らないこと。公共の交通機関も突然シャットアウトすることが多々あるので、移動時間の設定には余裕を持つこと、とのこと。全体的な街のムードは不安定で落ち着かないが、基本的にはいつも通りの生活を送っているそう。幸い、現地にふたりアテンドしてくれる知人がいるので、彼らから最新の情報を仕入れながら、慎重に行動するようにしよう。

12月8日(日)は、銅鑼湾(ビクトリアパーク)~中環(遮打花園)で大規模な民陣主催による国際人権デー・デモ行進があった。香港日本総領事館からの通達では15時からスタートとのことだったので、予定していた取材を午前中に繰り上げ時間をずらすことで回避することに。ホテルのある香港島西部Sai Ying Punから東部の柴湾までメトロに乗って移動する際、デモ開催地に近いCauseway Bay駅を通過したが、特に混雑や交通機関の乱れはなかった。



・旅の準備
カメラバックはLoweproの13L。今回はPentax67を導入するのでマチの深いこのリュックにすることにした。サブカメラはハッセル。サブというか気分で使い分けることになるはず。アーティストの取材以外、ゆっくりと撮りたいときに使うかな。フィルムはPortra400の5本ケースを7パック。35本と少なめだけど、2週間弱の短期取材なのでこれくらいで足りるはず。取材するアーティストが6名で一人多くて5本の計算。実際はそんなに撮らないかも。

あと今回は、プロモーションやトークイベントで使用するために簡単な動画撮影を計画していてOsmo Mobile3を買った。こないだテストで友達を撮影してみたけど、i Phoneにつける小型のマイクがきれいに音を拾ってくれてちょっと感動。動画撮影はかなり練習が必要だな。

滞在期間は2週間なので1週間分の着替えで充分かな。バッグはIKEAの70Lのキャリー。三脚や充電器などはこちらに。あとは洋服と洗面用具など。

現地での通信は、ソフトバンクの海外パケホーダイにしようと思ってたけど、OUKITELのSIMフリーのスマホをSIMと合わせて購入。イモトよりもソフトバンクよりも安くすんだ。うまく繋がればいいけど。

・宿泊について
ホテルは、空港からバス一本(所要35分)で行けるセントラルのビジネスホテル。最初の6日間の滞在で状況をみながら延泊するか場所を変えるか決めようと思う。


現地での予定

・トークイベントの開催
香港のショップMIDWAY というお店で、小規模のトークイベントを開催することになった。オーナーであるPan Tangさんとは創刊号からの付き合いで、新刊を発行するたびに連絡をくれ、knockを置いてくれている。

今回の取材においても、現地の状況だけでなく、アポイントを試みていたアーティストとコンタクトを取ってくれたり、色々と気にかけてくれている。偶然にもそのアーティストと彼は親しい友人だったこともあり、スタジオまで一緒についてきてくれるそうだ。現地の状況が見えないだけに非常に心強いしありがたい。

イベントでは、僕のこれまでの活動を写真スライドを使ってお話しするつもりだけど、来てくれた人たちからも色々とアドバイスや情報をいただければと思う。注目すべき作家やギャラリー、香港のアートシーンについて、普通に安くて美味しいお店とか、流行ってる音楽なんかも知りたいない。英語での会話となるので、どこまで伝えることができるかは準備次第だろうけど、knockを知ってもらうこと、そして現地でしか知り得ないことなど、情報交換の場になればいいなと思っている。

日期:2019年12月15日(日)
時間:5pm
定員:8名
場所:MIDWAY shop
住所:G/F, 132B, Ki Lung Street, Sham Shui Po, Kowloon

MIDWAY
https://www.instagram.com/midway.shop


・長場雄さんの個展オープニング
先日アーティストの長場雄さんと、東京のTasyardでお蕎麦を一緒に食べる機会があり、ちょうど滞在期間中に個展を開かれることをうかがった。作品は開会を前に完売(!)しちゃったらしいけれど、行きたいです!とお伝えするとしばらくしてオープニングの招待状が届いた。優しい…。

展示タイトルは〈"MEET YU NAGABA Gallery - I’M YOUR VENUS" 〉初の立体作品が展示販売されるということで、SNSを中心にすでに話題になっているみたい。スケボーに乗ったビーナス像(HK$ 1,560.00)めちゃくちゃ欲しい。初日12月10日にうかがう予定。お会いできるかな。

MEET___PROJECT by AllRightsReserved x YU NAGABA .
"MEET YU NAGABA Gallery - I’M YOUR VENUS" Exhibition
Date : 10th - 16th December 2019
Location : G/F, 19 Old Bailey Street, Central .

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Friend of Friend

MIDWAYのPan君と並び、今回の香港取材において要となる人物がもう一人、レニー君。先週、画家の沖賢一さんがうちに泊まりに来てくれたんだけど、沖さんの最も尊敬するアーティストの一人、神山隆二さんのスタジオに遊びに行くというので、僕も同行させてもらった。香港行きの話になった折に、神山さんが繋いでくださったご縁である。帰国後は、神山さんと村上周さんの二人展にお邪魔する予定です。

神山隆二×村上周 二人展
「SHUT UP AND DRINK」
会期:2019年12月13日(金)~1月11日(土)  
12:00~19:00(日曜日定休)
年末年始休業日:12月28日(土)〜1月5日(日)
★オープニングレセプション
12月13日(金)18:00〜

会場:BRICK & MORTAR 中目黒店
東京都目黒区中目黒1-4-4
TEL:03-6303-3300

しかし、レニー君が何者なのか実は全く知らされておらず、何もわからないままやり取りをしていたわけだけど、メールの返信は早く、めちゃくちゃかっこいいアーティストたちをたくさん紹介してくれた。結果そのうちの一人に取材させてもらうことになったのだけど、その取材にも同行してくれるという。とにかく良い人そうだし、心強いことは間違いない。

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12月13日(木)朝9時30日にセントラル駅のD2出口(すっごく細い小道に出る)でレニー君と待ち合わせ。念のため20分前に到着して待ってると彼も10分前に到着。お互い顔は知らないはずだけど、僕を見るなりマスクを取ったレニー君はやあ!と握手をしてくれた。なんでわかるの?

レニー君は、フリーのライターで以前ファッション系の媒体に文章を書いていた時、しばしばインタビューのため日本へ通っていて、そのためアーティストやカルチャー方面に友人がたくさんいるのだという。20代の頃から渋谷のクラブへ遊びに行っていたそうで、日本のカルチャーについて相当詳しく顔も広い。今回レニー君と繋げてくれた神山さんともそんな風にして、友人伝いに友達になったのだそう。

この日訪ねるスコット・チャンとは、実家が近所で幼馴染のようなものだそうで、おかげで取材もすごく和やかで楽しいものになった。取材の後は、スコットも参加しているセラミックアーティストによるグループ展や、カメラショップを案内してくれ、一緒にクラフトビールで乾杯した。

なんと明日から一週間、休暇で日本へ行くらしく、僕の住む神奈川の友人宅に滞在するそう。もちろん神山さんの展示オープニングにも行くそうで、なんだか香港と日本の近さのようなものを実感した。一緒にいるとわかるのだけど、とても温かい人格の持ち主で、僕も一気に彼のことを好きになった。年齢も同じだし、これからも仲良くできるといいな。


ここに行きたい


・Openground
Designer-space with coffee, books, music & inspirations.
198 Tai Nan St, Sham Shui Po, Hong Kong

MIDWAYのPan Tang君に街を案内してもらった時に訪問することができた。一階はカフェ兼シェアスペースのようになっていて、レーザーカッターなどの機材も使える。二階はギャラリー・イベントスペース。友達の写真家・濱田英明さんも以前ここで写真展を開催したそう。今は、グラフィックデザイナー18名が匿名で、今回の政府抗議について制作したポスター展“Yellow Object”が開催されていた。

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【 YELLOW OBJECTS 】
The growingly authoritarian government showed no signs of backing down, so do Hongkongers. Over the past few months, Hongkongers are drawn to protest art more than ever – mural, graffti, poster and post-it are found at every corner of the city, bringing us together by forming a wave of People’s Voice. Inspired by this emerging, painfully beautiful cityscape, 18 graphic designers speak up with the language of visual arts, in the format of poster in yellow and black.  The exhibition “ YELLOW OBJECTS” is a mockery of the brutal and ruthless authority that refers human being as object, and a reminder to defend and uphold human dignity.
18 anonymous designers, 18 voices, 18 posters. They are objects, and more. Graphic design is just a form, but a poster is organic. Copies of exhibit will be given away for free. We hope that the audience could bring the message back to their community, by putting up these posters in their neighbourhood. It will be a perfect demonstration of our outcry for freedom, that will not be silenced by violence.
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Exhibition Details:
Address: 198 Tai Nan Street, Sham Shui Po
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Date: 21/11/2019 (Thur ) – 1/12/2019 (Sun)
Time: 12:00 – 20:00
Closed on Mondays


・kubrick 油麻地店

ギャラリー
・Blindspot Gallery 刺點畫廊
15/F, Po Chai Industrial Building, 28 Wong Chuk Hang Road,
Wong Chuk Hang, Hong Kong


Holy Mosses
19 Nov 2019 - 11 Jan 2020
Leelee Chan/Pixy Liao/Victoria Sin/So Wing Po/Angela Su
WangShui/Wong Wai Yin/Zhang Ruyi

Curated by Nick Yu
“Holy Mosses” is a group exhibition of eight female or gender non-binary artists. The exhibition asks a pivotal question: how do we give expression to a world where all genders thrive in freedom? Resisting essentialist narratives, and cultural and biological determinism, this ensemble of artworks explores the non-binary fluidity of gender, its expression across the amorphous expanse of organic nature, and its ensuing mythological imagination and daydreaming across cultures and peoples.

There are two ways to imagine a trans-gender world. One way is to arrive at a post-human planet queered by future technologies. Another way is to rewrite our ancient herstory, revisiting the pre-human world in its biological diversity and exuberant myths. Both routes are full of vivacious images, sensuous textures and roaming horizons stretching beyond our current knowledge.
https://blindspotgallery.com/


Studio Visit

香港では、6名のアーティストとのアポイントが取れた。Pan Tang君のお店のあるビルの二階でギャラリーショップを営むデイジーちゃんの紹介で、もう1組増えそうな気配もあるけれど、今のところ現代アーティストの足立あゆみさん、ペインターのNorris Yim君、イラストレーターのLulu Ngieさん、写真家のJimmi Ho君、画家のAfa Annfaさん、神山さんのご友人レニー君が紹介してくれるミクストメディア・アーティストのScott Chan君と、顔ぶれも表現媒体も多彩で賑やか。

地価の高い香港においては、彼らのような若いアーティストがスタジオスペースを持つことは難しく、普段僕が行なっているアトリエ訪問という取材方式ができないケースも多いだろう。前作の北アフリカ編のように出会ったアーティストをフラットに扱うのではなく、例えば一章一章に独立したテーマを持たせた誌面にするとか、今回は彼らを取材する状況を反映した誌面を構成することで、読み物として起伏のある誌面を作れるような取材の仕方を試みてみようと思う。できるかな?


Afa Annfa
12月10日(火)11時に取材を予定しているのは、画家/イラストレーターのAfa Annfa(アファ・アンファ)。東京・銀座にあるK. Underwood Galleryにて個展開催の合間に会えることになった。僕の取材の前後の日程で2回、東京に行くのだそう。タイミングがあってよかった。


Afa Annfa: Wonder as Wander Exhibition
2019年12月24日 〜 12月29日 11:00 - 18:30
K.Underwood Gallery Tokyo
東京都中央区銀座8丁目 110 番地高速道路ビル (銀座コリドー街)

Afa Annfaに関する記事 via Neo Cha.


Meeting Afa Annfa

12月10日(火)は、東京での展示準備を終えて、2日前に香港へ帰ってきたばかりのアーティストAfa Annfaのスタジオ(自宅)を訪ねる。彼女の家は、Sha Tin(沙田)という香港のメインエリア、九龍の郊外にある。一般的にこうした郊外エリアは、“新界(New Territory)”と呼ばれているそう。なんだかかっこいい。

もともとは、吐露湾に続く深く切れ込んだ入り江がある農村・漁村だったという沙田は、今では香港で最も人口の多い地区で一大ベッドタウンであり衛星都市として人気の高い地域となった。1970年代に香港政庁によって積極的に進められた新界ニュータウン建設計画によって、入り江は埋め立てられ、その一部は香港最大の河川「城門河」として残し、次々に高層住宅が建てられ、現在の沙田の街の形となった。(via Wikipedia)

NeoCha. 記事の翻訳
アファ・アンファのスタジオには人形のコレクションが並んでいる。頭の大きな、ちょっと滑稽な佇まい。一見すると可愛らしい、だけど近づいてよく見てみると、いやそれは間違いだ、とうことに気づかされる。愛らしさの背後にある深い悲しみ。

アファ・ファンファの描く一連の作品を観ていくと、同様の繊細な感覚が沸き立ってくる。控えめなパステルの色使い、制服を着た少女、天使のような出で立ちではためく羽。しかしどこか落ちつかない、憂鬱な雰囲気。

フルタイムのイラストレーターとして活動する以前のアファは、アートディレクターとして広告代理店に勤め、同じ時期にモデル・俳優としても活動していた。

彼女のイラストレーションへの興味はどこからともなく湧いて出てきたわけではなく、彼女の幼少期の記憶に繋がっている。父親はインテリアデザイナー、姉はアートに深い愛情を注ぐ、このような創造的な環境で育ったアファにとって、絵を描くことは非常に自然な行為であった。アファは芸術を教育機関で学んだわけではなかったが、中学生の頃には、自発的に漫画を描いていた。彼女の作品に通底する純真さは、アカデミックな進路を取らなかったことにより守られた、とも言える。「基本的には独学でアートを学び修練を積んできた私は、直感と感情によって描く傾向があります」彼女は言う。

発想の原点
制作のために集中できる時間と環境が揃えば、あるゾーンに入ることができます。他の物事はすべて外に追いやっちゃうんです。例えば、私の体内時計は完全に逆回転するというか。食事も摂らない、運動もしない。だけど猛烈に集中して作品制作を終えた時、私は自分にご褒美として長い休暇を与えるんです。漫画を心ゆくまで読み、旅に出かけます。このような休暇は、しかしアーティストとして成長していくうえでの大切な義務だと感じています。

また仕事に戻った時、この期間に読んだり観たりしたものが、新しいコンセプトにつながるのです。これが私の基本的なワークフローであり、インプットとアウトプットのやり方ですね。インスピレーションがやってきた時、もはや何かを探し求める必要はありません。発想は無限に湧いてきます。そのほとんどが最近読んだ本や、夢中になっているメディアからやってきます。こうした様々な要素が、私の伝えたいメッセージと共に混ざり合うのです。このようにして作品を着想しているのです。

“The Silent Family”
最初のシリーズ作品ですね。多くの登場人物はこの世界に住んでいるけれど、それぞれが私の化身でもあります。この制服を着た少女は、別バージョンの私。不安で満ち溢れています。小さな化け物は、私のダークサイドを表していて、弱さや嫉妬心などの感情の現れです。

そしてこれは同時にこの社会を表現してもいます。これは私の闇と私自身の戦いです。少女は悪魔のヘッドスカーフを持ち上げ、中に何が隠されているのかを知りたい。彼らは対峙し、戦いつつも、お互いを抱きしめ、許容しようともしている。この作品は自分自身への探検であり、非常に意味深く、ある意味でポジティブなメッセージを放っています。

逃げ出すことなく、勇敢に自分の闇と向き合うことができれば、自分自身のことをもっと深く理解することができるのです。これはとても大きな前進ではないでしょうか。

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Sorry It's not for sale

12月7日は、香港の情報を色々提供してくれているPan Tang君のお店MIDWAYへ。思いつきで、彼のお店も次号に掲載させてもらうことにした。昨夜パパッとラフレイアウトを作り、オファーしてみたところ快諾いただいた。掲載するページのタイトルは、Sorry It's not for sale(仮)。買い物するときに時々いいなと思うものが、非売品だったりすることがある。夏に個展をさせていただいた、吉祥寺の写真集専門書店bookobscuraにも、ガラスケースや棚の高いところにひっそりと佇む写真集があった。店主のクロちゃんに聞くと売り物ではないんです。一生売ることはない、と。どんなに高値がつこうと、手放したくないものが、どのお店にもきっとある。彼女は選書のプロだからこそ、その価値を知っているし、価値を超えた愛のような感情と物語があるのだろう。Sorry It's not for sale(仮)では、そんな店主が売りたくないものを紹介してもらおうと思う。これは連載のようにして、各地のお店でやっていくと面白いかもしれない。

bookobscura

〒181-0001 三鷹市井の頭4-21-5 #103


MIDWAY
G/F, 132B Ki Lung Street, Sham Shui Po, Hong Kong



Small Talk with Ayumi Adachi

12月8日(日)は、香港を拠点に活動する現代アーティストのAyumi Adachiさんに会いに行く。先週はホーチミンのMoT+++というギャラリーで開催されていたPerformance plus 2019というグループ展に出展され、現在は香港のYouth Squareで開催されているアートフェアGARDEN of the ARTISANSに出展されている。かなり多忙な状況の中で時間を作ってくださった。

Ayumi Adachiさんには、彼女が香港で活動されることになった経緯や作品について、また香港のアートシーンについてうかがえればと思う。20年以上香港で活動をされている彼女にとって、アジア、特に香港・中国のアート市場の激動的な変化はどのように見えるのだろう。

Ayumi Adachi
About The Artist AYUMI ADACHI born in Hyogo, Japan in 1972. AYUMI studied Osaka University of art in Osaka, Japan. Lives and works in Hong Kong since 1996. AYUMI had several solo and group exhibitions in Hyogo, Osaka, Tokyo and Shanghai, Hong Kong since 1992. Art works have been exhibited at 2010 Korean International art fair (KIAF), 2011-2013 Asia Contemporary Art Show (HK), Affordable Art Fair (HK), and are in the permanent collections of Four Season hotel (HK) and Shangri-la hotel (HK & Tokyo, China), Sheraton Hotel (China).

https://ayumiadachi.wordpress.com/

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Face to Face

Norris Yim
12月9日(月)は、ペインターのNorris Yimさんを訪問。アトリエは実家なのでちょっとお招きするのは難しいとのことだったので、自宅周辺の喫茶店で会うことになった。

香港出身のアーティスト、ノリス・イムの生み出す作品の多くは肖像画であるが、(僕らが個人を最も象徴するものと信じて疑わない)“顔”がはっきりと描かれることはない。彼にとって見た目は人を特徴づける重要な要素ではない。少し乱暴な解釈をすれば、人の表層的な部分は作品を作るうえで意味をなさない、とも言えるだろう。

しかしそれは果たして肖像画と呼べるのだろうか。ノリスはあるインタビューでこう語っている。「私の作品は、すべて異なる色を用いて描いています。その色彩はその時の心持ちや気分によって左右されます。作品をつくる時、そのような情緒的な感情のゆらぎを通すことで、対象となる人を知り、特徴づけるのです。こうした心の作用が私の作品を形づくっていると言えます。ですから例えば同じ人物を100回描いたとしても、100通りの結果が生まれるはずです。」

彼は対象を色を通して見つめ感情によって描いているのだ。ノリスのインスタグラムを通してみると、彼の感情の揺らぎ、そして彼が対象をどのように捉えているのかが、その筆致の多彩さからもうかがえる。

今日の夕方、彼の自宅があるMa On Shan(馬鞍山)へ向かう。僕の滞在するSai Ying Punからは1時間半の距離がありちょっとした旅になりそうだ。彼は僕をどのような色を通して見るのだろう。怖いけど、知りたい。


Norris Yim, a self-taught painter who born & raised in Hong Kong. He received his education at the School of Design(Environmental & Interior) in Hong Kong Polytechnic University, from which he graduated in 2014. Starting to draw & paint during 2012 summer, learning from different style & process. In 2014, he looking for using fluidic acrylics to create more poetry with a solitary in portrait. Creating an abstract painting (portrait most) with different colors. Those abstract pigments represent my current feelings and mood which forms the basis of the work. Painting is purely a means of self-presentation, a process of transforming my observation of others and internalizing it as creative inspiration. Seeking my own spiritual satisfaction with poetry. The self-expression is often tinged with loneliness. Observation. Memory. Imagination. These are the principle aspects of my work. In the end, just fulfill my ambition through colors to create more Inspirations. 




スコット・チャンを訪ねて

12月12日(木)は、神山さんに繋いでもらったレニー君と朝9時にセントラル駅で待ち合わせして、アーティストのスコット・チャンのスタジオへ。


その数2000枚。レシートに描かれる極めてパーソナルなダイヤリー
日々SNSに投稿される膨大な写真や呟き。InstagramにFacebook、Twitter…。それが不特定多数の人々へ共有されるという性質上、ポストされる日々の出来事や感情は、どこかよそいき顔のフィルターを介して発信しちゃうことも少なくないのでは。プラットフォームは本来の機能を失いつつあり、それを利用する僕らもまた、まるで他人事のように日々を生きている。

スコット・チャンの作品に、レシートにドローイングを施したものがある。現在までおよそ6年の月日をかけ、コンビニや食堂、ATMまで様々なレシートの印字面に描き続けているものだ。そこには、日々の取るに足らない個人的な出来事や、その日の感情がありのままに描かれる。その膨大な束のレシートは、極めてパーソナルな日記であると同時に、誰もがどこか思い当たる節のある、“あの日”の投影でもある。

2014年、スコットは365日分のレシートをセレクトし、2週間のオンラインエキシビション“01012013 – 31122013”を開催した。初日の2月28日はオープニングレセプションとして、20時から23時まで観覧者とライブチャットセッションを行った。

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忘れたくないこと、捨てたいもの
数年前、スコットは亡くなったばかりの父親の部屋のかたずけをしていた。父のタンスの引き出しには、当然様々なものが残されていた。スコットはそこに入っていたものを見て、おかしな感情に襲われた。父のことはもちろん知っている。だけど、決して親しくはなかったのだと。父の好きだったもの、趣味、彼について何も知らなかったのだと。

彼は、こうした出来事を記録したいと思った。だけど文章は苦手だし、日記帳に書くのも面倒だった。その時、いつも処理に困っていた、日々増え続ける“ジャンク”、そうレシートが目に入ったのだ。そこには日付だけではなく時間も印字されている。何を買ったのか、どこで食べたのか、いくら引き出したのか全てが記録されている。その日、生きた。という事実が刻まれている。それからスコットは毎日、どこかで手渡されるレシートに絵を描き始めたのだった。


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