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難しい業績予測を解決するテクノロジーの進歩

こんにちは、ナレッジラボの国見です。

ここ数年、環境変化が激しくなっていて、特にこの一年は新型コロナの影響によって先行きの見通しがなかなか立てづらい状況が続いていますが、このような中でうまいこと経営の舵取りをしていくためにも、業績予測が重要なテーマとなっています。

上場企業はもちろんですが、中堅企業や成長する中小企業でも経営をうまくコントロールするためにとても重要だけど精度を高めるのが簡単でないのが業績予測です。

設定した目標を毎月達成するためにはタイムリーでかつ精度の高い業績予測が不可欠であり、予実分析だけでなく予予分析をうまく活用しながら、先回りした課題の把握と対応策の検討・実行することで、予算が未達になる前に考えうる全ての手を打つことが必要となります。

変化の激しい経営環境下で業績予測の精度が低いと、経営のダウンサイドリスクを察知するのが遅くなってしまい、本来なら打てたはずの改善策やアクションができなかったり、遅れてしまったりします。

この積み重ねによって目標とする売上や利益の達成確度が下がってしまいますし、資金ショートに陥ってしまう可能性も高くなってしまうため、業績予測の精度が事業の成否を分けることすらある重要な経営管理のポイントとなります。

しかし、この業績予測の精度を上げるためには社内にあるさまざまなデータを統合しながらシミュレーションを繰り返す必要があるため、なかなか簡単でないと言うのが現実です。

業績予測が難しい要因

業績予測の精度を高めるためにやるべきことは、多くの企業と一緒に取り組んできたテーマですが、特に中堅・中小企業においては、統計データやマーケットデータなどの外部データを使っても業績予測の精度をあげることは難しく、社内にあるデータをいかに活用するかが業績予測の成否を分けると考えています。

この点、2020年のMcKinsey & Companyのレポート「Bringing a real-world edge to forecasting」によると、業績予測の精度を高めている企業の多くは、ローリング予測を活用していました。

予測を頻繁に更新しながら状況の変化に応じたローリング予測を行うことによって業績予測の精度を高めていくことができるとのことで、ローリング予測を行っている企業のCFOは、ローリング予測をやっていないCFOと比べて業績予測に対する満足度が高いという調査結果が出ているようです。

このレポートには、業績予測に関する興味深いデータが掲載されていました。それは、業績予測を行っている企業のうち、94%は社内にある財務データを使っていますが、社内にある非財務データを使っている企業は45%しかなかったという調査結果です。

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そのほかにも、社外のマーケットデータの活用の割合が低いなどの要因もありますが、非財務データが十分に活用できていないという事実が業績予測レベルを向上させることができてない大きな要因のひとつとなっていることがわかります。

多くの企業が事業活動を行っている以上、販売数量や来店客数、生産数など事業に関する財務以外のなんらかの非財務データを持っているはずです。これらは本来であれば予測に活用できるにもかかわらず、データがサイロ化してしまっていることから、予測に活用できておらず予測の精度が低くなってしまっているということです。

なぜ業績予測に非財務データが使えていない?

業績予測に非財務データを活用するためにやるべきことを一言でいうと、財務データと非財務データの統合です。

例えば事業部門ではSFAで販売データを管理しており、経営管理部門ではスプレッドシートで予算を管理している会社では、多くの場合、非財務データ(=販売データ)と財務データ(=予算)が分断されています。事業部門と経営管理部門でデータをうまく連携できないことによって非財務データと財務データが統合できないままとなっており、結果として業績予測を行う経営管理部門では財務データのみから実施せざるをえない状況になってしまいます。

事業部門と経営管理部門でのデータの連携ができれば業績予測の精度を高めることが可能なのに、財務データと統合できないために多くのデータが予測に使われずに眠ったままとなってしまう非常にもったいない状況が起こっています。

では、どうすればよいか?

一つはスプレッドシートでの管理レベルを引き上げることです。

スプレッドシートでの財務モデリング能力に長けている人(経営企画領域のスペシャリストや公認会計士、フィナンシャルアドバイザリー経験者など)がいる会社では、スプレッドシートで複雑な財務モデルを作り、財務データと非財務データの統合をやってのけているケースがありますが、このような事例はまだまだ日本の会社では少数派で、多くの企業、特に中堅企業やスタートアップでここまでできる人は多くないのが現状です。

もう一つは、クラウドテクノロジーの活用です。

会計、マーケティング、販売管理、予算管理などのシステムをクラウド化していきながら、スプレッドシートの責任領域を減らしていくことで、財務モデリング能力に長けていない人でも財務データと非財務データ両方にアクセスでき、統合していける環境をテクノロジーを活用して構築することです。

業績予測とテクノロジーのトレンド

前述のMcKinsey & Companyのレポートでは、タイムリーに精度の高い業績予測を行うためにはCFOの役割を財務だけに閉じるのではなく、事業部門のリーダーと協力して、現実的でありながら積極的な事業目標を設定することであるとされています。

また、組織全体で使用する主要業績評価指標(KPI)の標準セットに止まらず、さまざまなレベルのマネージャーが使用する非財務指標まで追跡し、業績予測に反映する必要とされています。

これらのCFOとしての役割の考え方はFP&Aを財務の領域に止まらずに事業領域まで拡大するxP&Aのトレンドとも整合しているものであり、マーケティング(MA)、セールス(SFA/CRM)、小売店や飲食店ならPOSレジなど事業領域のシステムから、給与・勤怠などのバックオフィスシステムまで、企業のさまざまなシステムのSaaS化が進んでいる中で、今後はより簡単にxP&Aを活用できる時代がすぐそこまできています。

xP&Aとはガートナーが提唱する拡張計画・分析(Extended Planning & Analysis)という考え方であり、FP&Aを進化させ、事業部門での計画を財務計画に統合した概念となります。

実際に、アメリカではCPM(Corporate Performance Management)が大企業のみならずミッドマーケットやSMBにも拡大が進んでおり、特にクラウドCPMが大きく伸びている領域となります。

例えば、Borad internationalが提供するBoardやProphix、Vena Solutionsといったサービスは中堅企業をターゲットとしてxP&A領域のクラウドベースのサービスを拡大していますし、一昔前だと大企業だけしか恩恵が受けられていなかった領域も徐々に中堅企業やテクノロジーに強いSMBまで広がっています

SaaS化が進んだことで、以前であればERPプラットフォームを導入しないとなかなか実現が難しかった財務データと非財務データの統合が、SaaS間のデータ連携を活用しながら統合しやすくなったという点がCPMがミッドマーケットやSMBに拡大している要因となっています。

xP&Aの概念が中堅企業やスタートアップでも実現することで、予算管理や業績予測の精度も上がり、より数字に基づいた経営管理を行うことが可能になるため、ナレッジラボとしてもテクノロジーをさらに進化させながら、このような世界の実現に向けたサービスを作り続けていきます。


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