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ADCCアジア・オセアニア予選。この1年の取り組み。

今週末、11月25日にシンガポールにてADCCアジア・オセアニア予選が開催されます。昨年6月にシドニーで開催された予選に参加したとき、その会場の雰囲気だったり熱気だったり、そして決勝が始まる時の高揚感だったりを目の当たりにして「またここの場所に来たい」と強く思い、それ以来練習の方針をADCC予選に向けた内容にシフトして取り組んできました。

ラスベガスで開催されるADCC本戦は予選を勝ち抜かなければ(ほとんどのケースでは)出場はできないですが、予選はお金払って会場へ行けば誰でも出場できます。もっといえばお金払って会場へ行けば出場しなくても観戦はできるし雰囲気は感じられるのですが、せっかくなら出場したいし、出場するのであれば本気で臨みたいと思い、選手としてはそのレベルに到底達していない自分が戦うためにはどうすればいいかを考えて取り組んできました。
また、日本ではADCCに向けた取り組みがまだ一般化されておらずジムの指導者やトップ選手の間でもどのように取り組むべきかというノウハウが構築されていないと感じたため、自分なりに一生懸命取り組むことで近い将来選手にアドバイスを送る立場になった際に自分の経験を踏まえた独自のノウハウとそれに対する説得力を持つことができるのではと思い、出場と1勝を目標に取り組んできました。

もちろん試合が終わったあとに素晴らしい結果とともにこのような記事を出して報告できれば一番いいのですが、勝負は時の運。世界レベルの選手が多数出場する試合で自分のような選手が勝てるほど甘い世界ではないことも十分に理解しています。ただ、例え結果が出なかったとしてもこの1年の取り組みには満足しているし、結果によってその取り組みを否定することもしたくないなと思ったので、このタイミングで取り組み内容を振り返ることにしました。

昨年6月にADCCに出場して以来自分が特に重点的に取り組んできた内容は、
1)タートルディフェンスとそこからのスクランブルの強化
2)レスリング力の強化
3)足関節技の防御の徹底
4)トップゲーム強化
5)体重増とフィジカルの強化
の5点です。この記事ではそれぞれの点についてADCCというスポーツに対する自分なりの理解を交えつつ取り組みの狙いを書いていきたいと思います。

タートルディフェンスとそこからのスクランブルの強化

ADCCルールの試合もIBJJFルールの試合もサブミッションオンリーのEBIなどのルールの試合も、組み技ではあるので表面上はどれも同じに見えるのですが、実際はキックボクシング、K-1、ムエタイと同じくらい違いがあるルールだと思っています(キックとかに詳しいわけではないですが一般論として)。

その中で特に際立って違うのがポイントの入り方で、IBJJFのルールだとスイープ、テイクダウンにおいて亀/タートルになった相手のバックにつくことでポイントが入り、パスガードの場合はアドバンテージ(柔道でいう技あり。有効点)が加算されます。そのためIBJJFルール下では原則亀になって逃げるのはNGとされており、またそこからの攻防を重点的に練習する機会もあまり多くありません。

一方、ADCCルールにおいてはスイープやテイクダウン、パスガードの際で亀/タートルの形になることで相手にポイントが入るのを防ぐことができます(ポイントの有無を判定する攻防の認識が一旦リセットされる)。なので、ADCCルール下では原則相手にひっくり返されそうになったりパスガードされそうになったら亀になって逃げることが非常に有効な対策になります。これはしっかり練習していないと咄嗟には出せない対応で、ヨーロッパ予選などを見ていてもテイクダウン際で亀にならずそのまま下を受け入れてしまうことで相手にポイントが入り負けてしまう攻防をよく見ました。また、いざ亀になってもそこからの攻防を練習していないと簡単にバックを取られてポイントを失う上にポジション的にも圧倒的不利な状況になってしまいます。

自分はガードリテンション(相手のパスガードに合わせて相手を両足の間に戻す動き)が苦手なこともあり、このルールを最大限活かすために相手のパスガードに対して徹底的に亀になることをそこから選択し、そこからあわよくば自分の有利なポジションに戻すためのスクランブルの動きを練習してきました。その成果もあり、亀の状態でそれなりに自信を持って動けるようになってきました。試合において相手の力量が上の場合、亀の状態で防御にまわる時間帯が増えると思われますが、そこからしっかり返して自分の攻勢に繋げられるよう集中して臨みます。

レスリング力の強化

ADCCルール下においてレスリングが重要である理由はいくつかあります。一つはオーバータイム(延長戦)の存在、そしてもう一つがポイント加算時間帯の引き込みに対する減点です。

ADCCルールは1試合6分で行われますが、前半3分はポイントが加算されない時間帯、後半3分はポイントが加算される時間帯、そしてそこで決着がつかない場合は3分間のオーバータイムが発生します。前述のようにスイープ、テイクダウン、パスガードからはポイントがIBJJFなどに比べて加算されづらいこともあり、オーバータイムの対策をしっかりしておくことの重要性は高いです。オーバータイムに入った場合、一度試合を止めて立った状態から再開されます。また、オーバータイムと本戦後半のポイント加算時間帯においては引き込み(自分から座って下になること)に対して減点が課されるので、レスリング力の差がそのまま試合結果につながります。東海岸予選のドリアン-イーサン戦などはまさにそのような形でした。

また、自分のスタイルおよびここ最近のグラップリングの潮流において上のポジションをしっかりキープできることの重要性はどんどん増してきています。これまで自分は試合開始直後の立ちの攻防で後手に周り結局試合も負けてしまうという展開になることが多く、今回のADCCに向けていい機会だと思い、1年以上集中してレスリングに取り組んできました。

足関節技の防御の徹底

ADCCルールにおいてレスリングと並んで重要になるのが足関節技の攻防です。足関節技は下からの攻めが主にはなりますが、特に力量に差がある場合は簡単に試合を終わらせられる強力な技術です。東海岸予選のニッキーライアンなどの立ち回りを見ていても、力量に差がある序盤の試合に関してはレスリングを行わず試合開始直後に座って足関節で試合を決めに行くような試合が多くありました。

足関節で試合を決めに行こうとする場合、多くの足関節に関連するポジションにおいて自分もカウンターをくらう可能性が発生します。なのでそれなりに力量の差がないととりに行くのが難しいというのが自分の認識で、ジム内のスパーリングで余裕がある時は足関節を取りに行きますが、力量が上の相手に対しては逆にやられてしまうことが多くありました。なので特にADCCに臨む上で足関節を主体にするアタックは一旦封印して、相手のアタックに対する防御のみを徹底的に練習しました。

足関節に関連するポジションはいくつか決まり手があり、そこへのエントリーもシングルレッグエックス、フォルスリープ、バタフライからサドルのエントリー、Kガードなどそれなりに決まった形があります。ヒールを取られそうなところからのディフェンスももちろんなんですが、その前のエントリーの形をつぶせるようシチュエーション別にドリルを重ねてきました。もちろん力量に差があればやられてしまうものですが、なんとか試合でもしっかり対処したいと思います。

トップゲーム強化

ここまで書いてきたポイントとも類似しますが、これらのポイントを遂行する上ではトップから攻めることが必須で、ボトムにいる時間はなるべく短く、かつ極めよりもスイープすることに専念する試合運びが重要になります。

この1年ほどの間はちょっと偏りすぎなくらいトップからの攻めと下からはスイープ、レッスルアップにのみ専念して練習を重ねてきました。

体重増とフィジカルの強化

ADCCの階級は-66, -77, -88, -99, +99の5種類で階級と階級の間の差が10キロ以上あるため同じ階級の中でも普段からそれくらいまたはそれ以下で練習している人と普通なら1〜2階級上で練習している人が全員同じ階級で試合をすることになり、同じ階級の中でもかなりの体格差が発生します。自分は身長も低く元々は61キロ前後で試合をしていましたが、ADCCで試合をするにあたり通常体重を70キロ以上に増量しました。もちろん体重が重いから強くなるというほど単純なものではないですが、特にレスリングやスクランブルの攻防になった際に力負けしないことは大事だと思うので、減量は辛いですが体重を増やして良かったと思っています。

今回はとりあえず通常体重を増やして筋肉量を増やすことに焦点を当ててきましたが、次回に向けては70キロで戦える身体を作るためにフィジカルトレーニングにももう一段階力を入れたいと思っています。

まとめ

今回の記事ではADCC予選に出場するためにこの1年ほど自分なりに考えて取り組んできた内容をまとめました。先にも書きましたが、もちろんこれでそれなりの結果が出せれば一番いいのですが、仮に負けてしまったとしてもこの取り組み内容には自信を持っているし、自分なりにできることはやってきたつもりです。試合では自分のやってきたことを発揮できるよう精一杯頑張ります。

合わせて、今回のトレーニングキャンプを最初から最後までAbsolute MMAでやれたことも非常に大きかったです。Absolute MMAでどのような練習をしてそれがどう生きてくるかも別記事でまとめたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。

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