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爆発からプロローグへ

ひとつひとつの話はわかる。話の流れも掴めている。だけど、最後の1ページで築き上げてきた思考の一切を崩されてしまった。

数々の名作を生み出してきた実績を知っているからこそ慎重に、取りこぼさないように色眼鏡を装着したとしても、やっぱり覆されてしまうことへの称賛と、表面だけを掬ってみれば作中の登場人物と同じような台詞を吐きたくなる少しの悔しさみたいなものが同居して、結局すごいなぁ……と陳腐な言葉だけ口にするしかなく、もどかしいことこの上ない。

作者の作品にかけた思いに到達することは不可能だとしても、作品の多くは結構歩み寄ってくれるんだけどな……。基本的にはわかりやすいもののほうが、脳内で戸惑いが起きることなく読めて好きになりやすいけど、こういう作品と自分の間に越えられない線がはっきり見えているのも違う良さがあると思う。万人受けするものしか存在しないエンタメなんてつまらない。

ただわかるストーリーなのにわからない感性の連続で、掴み取れた感触は自分の感性ではひとつかみくらいだったけれど、200ページ読み切るしか選択肢がなかった。次の展開へ進むにつれていくつかの予想はできたとしても、想定通りにいかないところが自分ではない人の感性に触れてるみたいで、どんなものであれ期待を裏切られることはきらいじゃない。

前作の読み切りはダイレクトに突き刺さる部分が多かった。でもどちらも似たテーマが含まれてる気もした。爽快に爆発して、ジェットコースターから投げ飛ばされるオチ。切り取って編集された一部分だけがいいように解釈されていく。

内容に深く踏み込めないけど面白いという人もいれば、ひとつひとつのピースから見えない真実を掴もうとする人もいる、その理解のレイヤーの多さが大多数の人を惹きつける所以で、そこに優劣は存在しない。

漫画で映画を見てる感覚になって、まさに扉絵の撮影風景を覗いた気分になった作品でした。

ルックバックやタコピーみたいに短編の効力が発揮され、かつ解釈の余地を随所に散りばめた作品ってスピード命のSNSとの相性良すぎて毎回驚かされるなあ。絶賛の声も酷評も、すべて想定されていたかのようで、いろんな言葉を引き出すことができるものってやっぱりすごいな。


 さよなら絵梨


ありがとうございます!