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【絵本 坂の街のケーブルカーのメイベル】

この絵本には まえがき があります。
雨に濡れている 急な坂を登ろうとする 馬車をひく馬たちが すべったり転んだりするのを、かわいそうに思ったアンドリュー・S・ハリディさんがケーブルカーを発明したこと。
街を襲った大地震のこと、再開発される街で、ケーブルカーがどんどん減っていってしまったこと、が紹介されています。

【並べて楽しい絵本の世界】 Dear Virginia④


この絵本でも、敬愛するバージニアは、いつものようにケーブルカーのことを細やかに絵と文で紹介してくれます。
屋根には鐘がついていること。どうやって走るのか?
ブレーキは?非常用ブレーキはあるの?
どれくらいの速さ?
終点で折り返す時は、どういう風に向きを変えるの?
どういう風に安定して 急な坂道を登ったり下りたりできるのか。

San Francisco cable car

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屋根の鐘が ふたつ鳴ると発車。ひとつ鳴ると停車。
たくさんの人が乗ったり下りたり。
運転手さんと、車掌さんが乗っていること。
止まったり発車する時にふたりがどんな仕事をするのか?
本当に細やかに、描かれています。

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どんなに 道が険しくても、
どんなに 乗客が混みあっても、
いつも ほがらか。
いつも しんせつ。
メイベルは、かねをならし
歌をうたいます。
朝はやくから 夜おそくまで。
夜おそくから
朝はやくまで・・・・・
メイベルは、なかまたちと、
おおきな みどり色の
車庫で やすみます。

雨が降ると、坂道はすべるので、タクシーやバスも坂道をのぼろうとはしません。メイベルはそんな時でもびくともしませんから、街の人たちにも、そこを訪れる観光客にも愛されて、しあわせに働いていました。

1906年4月18日早朝
マグニチュード7.9の大地震がサンフランシスコを襲ったとき
美しい坂の街は、たいへんな被害にみまわれました。
のちに街の再建にともなって、街の市会議員たちは、旧式で あまりお金を儲けることのできない、メイベルたちを廃止の方向で考えるようになっていきます。

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でも、その計画が街の人たちにもれ聞こえて、みなが考えるようになります。私たちの街、主役の私たちが、どうして決められないの?

「ケーブルカーを守る市民の会」

が作られて、たくさんの手紙が届けられました。市民投票を行うために、たくさんの署名が集められました。

街にはケーブルカーが必要だ
ケーブルカーが大好きだ
ケーブルカーを守ろう

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メイベルに意地悪な事ばかりしていたバスのビッグ・ビルは、自分たちが勝つと信じていました。
でも、ある雨上がりの霧の深い日に、下り坂で、スリップして横すべりして危うく一回転して停車することのできたビッグ・べルは
「こんな坂、まっぴらごめん」
と思います。

市民投票は行われます。

そして3対1の投票結果で、ケーブルカーは街に残されることになります。

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私たちは、ほんとうに大好きなものを守ることができているのでしょうか?
ほんとうに必要なものを大切にできているのでしょうか?

細やかで、でも強い意志で、美しく描かれたこの絵本を見る時、バージニア・リー・バートンの絵本の素晴らしさに心を打たれます。

いつでも、ほんとうのことを、子どもたちに伝えていこうとする作者の、強い心を感じます。

愛しいメイベルの鐘の音が聴こえてきます

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