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チウ・ション『郊外の鳥たち』夢の中に生きる郊外の鳥たち

本作品では郊外の都市を舞台にシャハオという同じ名前を持った少年と青年の物語が二つ並行して語られる。青年シャハオは測量士であり、地下鉄建設予定地だった郊外都市での地盤沈下を測量している。四人いる測量グループのうち偉い二人は適当に切り上げて工事を進めようとしていて、若い二人は原因までキチンと調べようとしているなど現場では薄く対立しているが、夜も仲良く酒盛りしたり一緒に脱出ゲームに挑んだり海の向こうの大都市の灯りを双眼鏡で眺めるなど、仲が悪いわけではなさそうだ(これがアットホームな職場か)。そんな彼らの仕事風景はホン・サンスよりも雑なズームイン/アウト、測量機器や双眼鏡などからの眺めで彩られ、それらに導かれるように進んでいく。まるで、細部を見れば全体が見えず、全体を見れば細部が見えなくなるのを暗示するかのように、人やら物やらを画面外に追いやっていく。少年シャハオの物語は、同じ郊外都市を舞台に、仲の良い同級生6人組の日常風景を描いている。ミニサバゲーで遊んだり、授業を受けたり、森で寝転がったり。グループの女子フォクシーとファンティンから好かれているシャハオは、どっちつかずな態度を取って積極的な女王様ファンティンに叱られている(曰く、"この街の出来事は全部私の耳に入るの!")。ある日、仲間のファッティが学校に来なくなってしまったため、フォクシーの案内で彼の家に行こうとするが、道中で仲間がどんどん減っていき、それでも漂流を続ける。

映画上は平行に語られ、途中で二つの挿話が交わっていそうな点はいくつもあり、二つの挿話に似ている部分も数多くあるが、それらが交点なのか共通点なのか、つまり二つの挿話がどの時間軸/世界線にあるのか、二人は同一人物なのかは意図的にはぐらかされている。しかし、そのどちらもが"クリティカルな何か"を忘れてその周りを周回するような、ある種の不条理さと不可思議さを持ち合わせていて、それが非常に心地よいのだ。『スタンド・バイ・ミー』とカフカの『城』の出会い、と評されているのも納得の一作。

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・作品データ

原題:郊区的鸟
上映時間:118分
監督:Qiu Sheng
製作:2018年(中国, 台湾)

・評価:80点

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