バス・ドゥヴォス『Hellhole』無邪気な神話を喪失したブリュッセルの新たな拠り所はなにか
傑作。バス・ドゥヴォス長編二作目。2016年に起こったブリュッセル連続テロ事件の余波を描いた一作。最初からテロ事件を描く予定ではなかったのだが、ブリュッセルの描く作品を製作中にブリュッセルでテロ事件が起こったことで、描くことは避けられないと悟ったそうな。結果的に前作『Violet』の主人公が持っていた喪失感に似た感情を持った三人の人々を主人公とした物語が完成した。一人目はアルジェリア系の青年メフディ。彼は当日現場にいたようで、怪我はなかったものの変則的な頭痛に悩まされている。