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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2020年7月の記事一覧

ピエール・エテックス『健康でさえあれば』エテックス節炸裂の楽しい短編集

エテックスの監督通算六作目で長編三作目。四本の短編にエテックス節をこれでもかと詰め込んだファン垂涎の作品。 第一編『不眠症』では寝る前に『ドラキュラ』を読んでしまったせいで眠れなくなる男を描いている。ドラキュラが襲い来るアクションが隣で寝ている妻の些細な行為やランプハットの影の中に繰り返される。ドラキュラ城のロケは意外としっかり撮られていて、しかも追われている女優がめちゃ綺麗。 第二編『映画』ではマナーの悪い客たちに"恵まれた"男を描いている。自由席の映画館は面白いほど治

ガイ・マディン『Twilight of the Ice Nymphs』マンドラゴラ、それは日の沈まない悪夢の迷宮

クヌート・ハムスン『牧神』にプロスペール・メリメ『イールのヴィーナス』とギュスターヴ・モローの絵画を加えてごった煮にしたというガイ・マディン長編四作目。カラー二作目にして色彩感覚がイカれたのかアメリカの不味そうなアイスみたな発色をしていて、『Greener Grass』とは別方向の"観るドラッグ"といった印象を受ける。主演のシェリー・デュヴァルを念頭に置いたであろう『シャイニング』のパロディと思しきシーンや、シャンタル・アケルマンが『オルメイヤーの阿房宮』のワンシーンの参考に

ガイ・マディン『脳に烙印を!』家族の愛、家族の呪縛

一年で『世界で一番悲しい音楽 (The Saddest Music in the World)』『臆病者はひざまずく (Cowards Bend the Knee)』という二本もの映画を撮った2003年から3年が経って、シアトルの非営利映画製作会社"The Film Company"から、地元ロケ&地元の俳優を使うなら製作費に糸目は付けないという破格のオファーがあり、マディンはこれを引き受けた。そうして完成したのが、ガイ・マディン青年を主人公とする自伝的"私"三部作の二作目で