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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2020年1月の記事一覧

ヴィンセント・ウォード『ウイザード』黒死病から逃れるために…

1348年、イングランドの寒村は悪夢の真っ只中にあった。欧州全土を飲み込んだ黒死病がすぐそこまで迫ってきていたのだ。モノクロの画面は白と黒の境界を際立たせ、バグパイプで奏でられる伝統音楽のような劇伴は牧歌的なフォークロアのような側面を強調し、このダークなファンタジーはガイ・マディンのようなグロテスクなパワーを持つようになる。ニュージーランド出身の監督ヴィンセント・ウォードの長編二作目であり、本作品は前作同様カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出された。相変わらず奇抜な選

ロッジ・ケリガン『クリーン、シェーブン』お前にはパラノイアでも俺には現実なんだ

ロッジ・ケリガンのカルト的代表作を遂に拝むことが出来たことにまず感動している。このノイズ音(主に悲鳴と自分の呻き声)と環境音だけが鳴り響く空間に、鏡を異常に恐れる狂人を配置し、その異常行動を延々と展開する地獄のロードムービー。計画性のないサイコパスの地獄旅行といえば、『鮮血と絶叫のメロディ / 引き裂かれた夜』を思い出すが、映像が比較的穏やかなかつ丁寧な本作品のほうが異常さは際立っている。目線は忙しなく動き回り、聞き取れない単語をブツブツと呟き、コーヒーに入れられるだけの砂糖