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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2019年7月の記事一覧

ウジェーヌ・グリーン『ポンデザール』芸術とあなた、芸術と私、あなたと私を繋ぐ橋

大好き。MUBIに登場したウジェーヌ・グリーン特集二本目、長編三作目。彼はナターシャ・レニエが好きらしく、何度も彼女を使っているのはファンとして嬉しい限り。前作『The Living World』同様、ほぼバストショットと過剰なまでの切り返しだけで成立させた芸術問答。音楽と沈黙、楽譜だけでは音楽として成立しないが、一度形になれば心に残り続ける。それを形にする者。名前を呼ばれすらしない指揮者、圧迫的で尊大な音楽家は音楽に意味はないと説いて現代音楽を見下し、それに反対したサラは魂

アノーチャ・スウィーチャーゴーンポン『ありふれた話』生命と宇宙、終わりなき変化のサイクル

私が昔タイに暮らしていたからと言って、タイの映画を観ていた訳ではない。その頃はまだ日本で有名なほぼ唯一のタイ人監督であるアピチャッポン・ウィーラセタクンですらデビューしたてだった、バーツ危機と政情不安の狭間の時期だったので、というかそもそも年齢一桁代だったので、私はタイ映画を観ることはなかった。私とてそんなエクストリーム人生は送ってない。代わりに『スターウォーズ/クローンの攻撃』をタイ語吹き替えで観た覚えがある。2002年の初夏だった。 翻ってアノーチャ・スウィチャーゴーン

ユベール・ヴィエル『アルテミス、移り気なこころ』神話の映画、映画の神話

人生ベスト。全秒が美しい。未だかつて、ここまで心震える魔法のような映画があっただろうか。女の子二人がわいわいやってるリヴェットとかロジェ的な作品でありながら、それら全てを越えうる神々しさに満ち溢れている。そもそも、アバンタイトルからして眩しすぎる。ナレーターと称する監督自身が街を歩きながら"私は彼女については何でも知っている(=全能だ)。おっと、彼女がそろそろ出てくるぞ"と言うと、アルテミスが窓を開ける。すると、カメラはモキュメンタリー的な冒頭から、アルテミスの部屋に一瞬で移