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アフリカ映画

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自身の映画記事のうち、アフリカ映画に区分されるものをまとめています。ロシア、ハンガリーに比べると競争率は高めですが、頑張ります。
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#カンヌ映画祭2021

ナビル・アユチ『カサブランカ・ビーツ』モロッコ、不満と魂をリリックに乗せて

2021年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。カサブランカ郊外に若者向けの文化センターを開設した監督本人の実体験を基にしているらしい。本作品の主人公は、自身もラッパーであるアナス・バスブーシ演じるアナスである。彼は文化センターで子供たちにラップを教えるために見慣れぬ土地に踏み込んだ。映画は大きく二つのパートに分かれている。一つはアナスと生徒たちの交流風景である。ラップでは宗教や政治のことは話せないといった議論、ラップの練習、みんなで部屋の壁を塗り替えるなど全員が仲良くヒップホップ

マハマト=サレ・ハルーン『Lingui, The Sacred Bonds』チャド、聖なる連帯

2021年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。マハマト=サレ・ハルーンは今回で三回目の選出となる。本作品は国家と宗教によって二重に中絶が禁じられた国で、中絶を試みる15歳の少女マリアの物語である。しかし、原題"Lingui"及び英語副題"聖なる絆"の示す通り、本作品は制度自体ではなく、それを前にした人々の共助連帯を描いている。全体的な描写がドライで静かなのも相まって、少々やりすぎなくらい敵と味方がすっぱり分かれ、敵はストレートに嫌なことをしてきて、味方もストレートに助けて終結する