マガジンのカバー画像

アフリカ映画

29
自身の映画記事のうち、アフリカ映画に区分されるものをまとめています。ロシア、ハンガリーに比べると競争率は高めですが、頑張ります。
運営しているクリエイター

#エジプト

モハメド・ディアブ『護送車の中で (クラッシュ)』エジプト、護送車の中で呉越同舟

めちゃ面白い。ムバラクによる30年近い独裁政治が終わった2年後の夏、カイロでは後任モルシへの反対派デモが加速し軍部と民衆で衝突が起こり、軍部はモルシを解任した。これによって軍部支持派(民衆サイド)とモルシ支持派(政権サイド)の衝突が激化している、というのが冒頭。オープニングで登場する空っぽの護送車に次々と人がブチ込まれていくわけだが、取り敢えずデモに遭遇したら逮捕してブチ込んでいるので護送車の中の人たちは敵同士だったり味方同士だったりとカオスな状態に。しかも、護送車は治安維持

Ayten Amin『Souad』SNS社会と宗教との関係性、のはずが…

カンヌレーベル選出作品。SNSの発達した現代エジプトで女性として生きることを探求するドキュメンタリータッチの作品かと思えば、突然逸脱して個人の物語になるという不思議な映画。バスに座って隣の女性と会話する主人公ソアドを捉えた冒頭は非常に興味深い。年配の女性には"自分は医学生で、婚約者が兵役で遠くにいる"と伝えるが、同じバスで別の若い女性が隣に座っているときは"旦那の姉が旦那へのプレゼントにケチを付けてくる"と全く別のことを話し始めるのだ。これはネット社会における電子的なペルソナ

シャディ・アブデルサラム『王家の谷』倫理的な正しさが本当の正しさに変わるとは限らない

アフリカ映画の中でエジプト映画というのは比較的諸外国で公開されてきた内に入るだろう。それもそのはず、1940年代から60年代に掛けてエジプト映画の黄金時代がアフリカ映画の世界への飛躍を支えたのだ。この時代の監督として有名な人物はユーセフ・シャヒーン(Youssef Chahine)やHussein Kamal、Salah Abu Seif、Henry Barakat、そして本作品の監督であるシャディ・アブデルサラム(Shadi Abdel Salam)などがいる。ちなみに、本