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アフリカ映画

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自身の映画記事のうち、アフリカ映画に区分されるものをまとめています。ロシア、ハンガリーに比べると競争率は高めですが、頑張ります。
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#カンヌ国際映画祭

Ayten Amin『Souad』SNS社会と宗教との関係性、のはずが…

カンヌレーベル選出作品。SNSの発達した現代エジプトで女性として生きることを探求するドキュメンタリータッチの作品かと思えば、突然逸脱して個人の物語になるという不思議な映画。バスに座って隣の女性と会話する主人公ソアドを捉えた冒頭は非常に興味深い。年配の女性には"自分は医学生で、婚約者が兵役で遠くにいる"と伝えるが、同じバスで別の若い女性が隣に座っているときは"旦那の姉が旦那へのプレゼントにケチを付けてくる"と全く別のことを話し始めるのだ。これはネット社会における電子的なペルソナ

デュド・ハマディ『Downstream to Kinshasa』コンゴ川を下って1700キロ

所謂"六日戦争"は、第二次コンゴ戦争(1998年~2003年)中期の2000年6月5日から10日にかけて、コンゴ民主共和国キサンガニを中心にウガンダ軍とルワンダ軍の間で繰り広げられた一連の武力衝突を指す。この戦闘は全期間の中で最も苛烈なもので、6000発以上の弾薬が使用され、市街地の大部分が破壊され、4000人を超える死者と3000人を超える負傷者を出した。そして、その大半は民間人だった。国際司法裁判所はウガンダに犠牲者遺族と被害者に対する補償を命じたが、そのほぼ全てが首都キ

マティ・ディオップ『アトランティックス』 過去の亡霊と決別するとき

開発の進むセネガルは首都ダカール。建設中の建物がむき出しのコンクリートを乾いた太陽光の下に晒す中、賃金を支払われない労働者たちは管理たちに食って掛かる。しかし、その後の物語は我々の想像する所謂"貧困映画"や"格差恋愛映画"とは一線を画した展開に発展していく。昨年、マティ・ディオップの短編作品がMUBIに登場したときには、まだ彼女の初長編作品がカンヌ映画祭のコンペに選出され、熱狂的に受け入れられるとは思いもしなかった。彼女の経歴や該当短編作品については別の記事をぜひどうぞ。