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アフリカ映画

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自身の映画記事のうち、アフリカ映画に区分されるものをまとめています。ロシア、ハンガリーに比べると競争率は高めですが、頑張ります。
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2021年9月の記事一覧

Chuko & Arie Esiri『Eyimofe (This Is My Desire)』ナイジェリア、海の向こうの理想郷を目指して

傑作。"移民映画"というジャンルがあるとすれば、多くの場合渡った先の国での生活を描いているが、本作品は様々な事情によって渡ろうとしたのに渡れなかった二人の人物を描いている。第一部"スペイン"では、スペインへ渡る直前に妹一家を一酸化炭素中毒で亡くした技師の男モフェを描いている。彼の物語は工場の心臓部でありながら、あまりにも複雑に絡み合った回路基板で幕を開ける。これがホントのスパゲティコードってか(多分本人が作ったわけではなさそう)。まるで彼の人生を絡め取る蜘蛛の巣のように、或い

ハイレ・ゲリマ『三千年の収穫』エチオピア、三千年の搾取の歴史

『テザ 慟哭の大地』で日本でも知られているエチオピア人映画監督ハイレ・ゲリマが世界的に有名になるきっかけとなった作品。日本では1984年の国際交流基金アフリカ映画祭や2011年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された他、何度か上映されている。監督ハイレ・ゲリマは1946年3月4日、エチオピアの旧都ゴンダールに産まれ、幼少期は劇作家だった父親に付いてエチオピア中を旅して回り、土着の演劇を上演したらしく、その経験が彼の作品に影響を与えているらしい。1968年にアメリカに留学し

モハメド・ディアブ『護送車の中で (クラッシュ)』エジプト、護送車の中で呉越同舟

めちゃ面白い。ムバラクによる30年近い独裁政治が終わった2年後の夏、カイロでは後任モルシへの反対派デモが加速し軍部と民衆で衝突が起こり、軍部はモルシを解任した。これによって軍部支持派(民衆サイド)とモルシ支持派(政権サイド)の衝突が激化している、というのが冒頭。オープニングで登場する空っぽの護送車に次々と人がブチ込まれていくわけだが、取り敢えずデモに遭遇したら逮捕してブチ込んでいるので護送車の中の人たちは敵同士だったり味方同士だったりとカオスな状態に。しかも、護送車は治安維持