10.僕の実家と借地

ピンポーン。ピッピンポーン。ピンポーン。

僕の実家は借地に建っていた。大家さんは高齢だったが会ったことはない。その大家さんが亡くなって相続人が新しい大家さんになった。

なったはずだったが、その相続人はすぐに借地権を売却した。売却先は東京白金にある不動産投資会社だった。

ちなみに僕の実家に設定されていたのは旧法の借地権であって定期借地権ではなかった。つまり、希望すればいつまでも借り続けることができる借地だ。一般に、そんな土地を購入しても月々の地代はしれているので大きな利益は望めない。

地代の支払い先の変更と挨拶のため不動産投資会社の社員がやってきた。1度で済むはずが何度も何度もやってきた。要は借地権付きの土地を買い取るようにということだ。その気はないとで断ってもピンポーンと執拗にやってくる。

そんなに言うのなら土地の借地権と建物を買い取ってくれれば他に家を買って引越すからと、見積もりをもらった。もらったものの、他の物件が買えるような金額ではなかった。半額にもならなかった。

僕は家にいつもいるわけではないので応対は母がする。相変わらず内容の変わらない要求を繰り返しに朝からやって来る。

その日、母は朝から出かける用事があった。忙しく支度をしていると玄関のチャイムがなった。