12.僕の実家の固定資産税

でも、住所知ってるから。

土地を借りて地代を支払う僕の実家。地代を受け取る大家さん。固定資産税を支払うのは大家さんだ。

大家さんから土地を買い取ると僕の実家が固定資産税を支払うことになる。地代と固定資産税の差額を考えると土地を購入して得をするのは数十年後の話だ。土地の購入にはまとまった現金が必要なのでメリットは少ない。

土地を売却するときには借地でない方が高く売れる。実家は特に売却の意思は無くずっと住み続ける心づもりだ。

僕の考えは変わらなかったが、家族はそうでもなかった。特に母が怪我をした事実がある。今後も原因は何にせよ災難が続くかもしれない。

そんなことはないだろうと僕。母は急いでたまたま転んだだけだ。たしかに、忙しい時間に邪魔されてイライラさせられたが、新入社員が足を引っかけた訳では無い。

でも、と家族は言う。

先方は住所を知っているのだから何をされるかわかったものでは無いというのだ。振り込み詐欺と同じ構造だ。

振り込み詐欺に引っかかる人が実際に騙されていることは、思ったより少ない。多くは詐欺だと感づいた上で、家族に危害がないように騙される道を選ぶ。

一度騙された実績が出来るとますます詐欺のターゲットになる。たとえ、わざとだとしても騙されることで詐欺集団の存続に荷担することになる。冷静に考えれば、わざと騙されるのは家族のためにならないし、他の人にも被害が生じる道を開いてしまう。

でも、住所知っているし。そこに矛盾があっても家族へ危害が及ぶ可能性を考えると感情で動いてしまう。それは僕も理解できる。

数日後、内容証明郵便が届く。