アートとコピー④|それでも、私は伝えたい。
時間が経っても、心に強く残っている言葉がある。
「何を伝えたいかを考えすぎ。伝えられる関係性になっているか。」
アートとコピーは、また私を、ちょっぴり強くしてくれました。
小杉幸一さんとの出会い。
今回もまた、嬉しい出会いを果たしてしまった。アートとコピー第4回目の講義に登壇されたのは、アートディレクターの小杉幸一さん。これまでに小杉さんが生み出してきたものって、とにかく、「あ、これ見たことある!」の連続。それが、デザインをかじってる人間だけのことではないから、すごい。道行く人に、小杉さんの生み出したものを見せながら、「これ、見たことありますか?」そう尋ねたら、みんな首を縦にふるんじゃなかろうか。
「すごい人」こんな言葉でくくってしまうのは申し訳ないと思いつつも、話を聞けば聞くほど、「すごい人」だと思ってしまった。そうそうたる実績はもちろんだけれど、柔らかく、穏やかで、よく笑う姿に、あっという間に魅了されてしまった。「そりゃ、みんな一緒に仕事したくなるよ・・・」僭越ながら、心の中でそう思った。
小杉さんは、デザインの概念的なところから、実績に基づく仕事との向き合い方まで、とにかく沢山の気づきをくれた。その中でも、私にとって特別だったのは、「何を伝えたいかを考えすぎ。伝えられる関係性になっているか。」という言葉。名指しでアドバイスされたのかと錯覚するほど、とにかく響いた。
アートとコピーに限ったことではない。「こう言ったら、相手はどう思うだろう。嫌われたくないなぁ。」私は、そんなことを考えながらコミュニケーションをとる癖がある。でも、嘘もつきたくないから、「余計な準備」をしてしまう。「私がこう言ったら、相手はこう思うだろうから、次はこう言おう。」そんなことを、ひとりでぐるぐる考えてしまう。もちろん、「準備」は大事。これが良い方向に運ぶこともある。でも、相手の受け取り方を予測したところで、それが当たるとも限らないし、むしろ可能性を潰しかねない。相手を傷つけたくないように見せかけて、本当は自分が1番傷つきたくない、そんな自分が、たしかにここにいる。
と、ちょっぴり暗くなってしまったけれど、別にへこたれたわけじゃない。なんなら、このおかげで、強くなれる気がしている。「あのとき、こう言ってれば、もっとスムーズに話し合いが進んだかもな」とか「あのとき、あの人の言ってることが理解できなかったのは、相手に対する勝手な決めつけがあったからだな」とか、素直に振り返ることができている。反省しつつ、焦らず、丁寧に、着実に、「関係性」を深めていきたい。そう思っている。誰かと何かをつくるって、「好き」や「嫌い」の次元じゃない。自分と100%同じ価値観の人なんていないからこそ、面白い。当たり前のようで、忘れがちなことを思い出すことができて、本当によかった。
あの子に見せたいものがある。
最後に、今回コンビで取り組んだ課題についてもご紹介。今、人との距離ができたから、人を選ぶようになった私たち。「人に優先順位をつけるようになった世の中で、あなたは今、誰を想うだろう。何気ない日常も、大切な誰かを想えば、きっと特別な時間になるはず。」そんなことを考えているうちに完成したのが、ショートストーリー「あの子に見せたいものがある。」である。
私の実体験を随所に散りばめたフィクションショートストーリーを、信頼なるアート生もえちゃん(古林萌実)が、とってもキュートなイラストで彩ってくれた。まだ一度も会ったことのない2人だけれど、私たちに距離は関係ない。どこにいたってつながれるし、顔も見れるし、声も聞ける。「会いたいけど、会えない。」そんな日々を、これからもひょうひょうと楽しんでいける2人のショートストーリ第一弾。ぜひ、次回作もお楽しみに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?