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VRの温冷感を体験できるデバイスPebble Feelで温泉に浸かってみた

ShiftallからVRの温度を体験できるデバイス「Pebble Feel」が発売・発送されました。高効率ペルチェ素子を搭載し、VRChatワールドの温かさや冷たさを体感できるとうたっています。

筆者は2月発送のものを購入し、実際に動作させてみたので、本記事で簡単にレビューします。

本体・付属品

本体はワイヤレスマウスが薄くなったくらいの大きさで、かなり小型です。バッテリーが含まれていないため、小型・軽量化ができたものと思われます。背中にかけて使うものなので、負担にならないのは好印象です。
専用のネックバンドが装着済みの状態で届きました。バンドの輪っかになった部分を首に引っ掛けて使います。

他には、1mの給電用USBケーブル(Type-C to Type-A)が付属します。身体に触れる前提だからかフラットな形状で柔らかく、使いやすそうです。説明書にはモバイルバッテリーに接続するよう記載があります。普段からモバイルバッテリーを頭や身体に装備してVRを利用するコアな利用者なら問題ないでしょう。PCやACアダプターに刺して給電することもできますが、付属の1mケーブルでは装着してVRを利用するには短いと考えられます。

本機の右下にはペアリングボタンがあり、新しい機器にBluetooth接続する際に長押しします。これが小さい上にネックバンドの段差に隠れており、細いもので押さないと操作しづらいです。誤操作を防ぐためなのかもしれませんが、もう少し押しやすくできていると良かったと思います。

SIMカード交換用のピンなどを使うと押しやすい

動作音

Pebble Feelはペルチェ素子という電気で熱を移動させる素子で温度提示を実現しています。ペルチェ素子で冷却をするためには適切な放熱が必要なため、本機の待機中や冷温提示中はファンが回転します。ノートPCが全力で動作している状態くらいのファン音がするので、少し煩わしく感じます。VRでの利用中は、遮音性の高いヘッドホンやイヤホンを装着した方が良さそうです。

バッテリーと消費電流、低電流モード

USB電流チェッカーで測定したところ、待機状態では、20~40mAと小さめの電流が流れていました。
モバイルバッテリーの機種によっては、消費電流が微弱すぎると電源供給を止めてしまうものが存在します。実際、筆者が試した複数のモバイルバッテリーの中にも、Pebble Feelを接続してもすぐ電源が切れてしまうものがありました。

Pebble Feelの商品ページにも記載がある通り、電流が小さくても電源供給を継続してくれる低電流モードが搭載されたバッテリーなら安心して使用できると思われます。
手持ちのバッテリーが低電流モードに対応しておらず、買い替えるのも……という方は、電流をそれなりに消費する他の機器を同時に繋ぐ、スリープ防止モジュールを使うといった対策を考えてみるとよいかもしれません。

待機状態

一方、Pebble Feelの運転中は、冷却(強モード)の場合750~800mA前後、加熱(強モード)の場合700mA前後の電流が流れていました。運転中の消費電流は、計測環境や本体の温度状態によっても変わると思われますので参考程度にご覧ください。

運転中の様子

スマートフォンからの利用

簡単に動作確認を行う場合、スマートフォンからの方が手軽です。マニュアルのリンクからPebble Feelのアプリをインストールし、Pebble Feelにペアリングすると簡単な操作が行えます。Cool/Hotのモードでそれぞれ出力が弱・中・強・(Coolのみ、急速も)と選べるようです。

スマートフォンアプリの画面

VRを利用していない状態でもPebble Feelの温度を設定できるので、暑さ対策グッズとして人気の高いサンコーの「ネッククーラーNeo」や、SONYの「REON POCKET」シリーズのように、パーソナルエアコンとしても利用できます。

パソコンのVRChatからの利用

次は、Pebble Feelの目玉機能であるVRChatとの連携を試してみました。Windows PCから利用する場合は、本機とPCをペアリングした上で、デスクトップアプリをSteamから取得しておく必要があります。

あとは、SteamVR→VRChat→Pebble Feelデスクトップアプリの順に起動していくと、アプリ画面にそれぞれの接続が完了した旨が表示されて利用の準備が整います。

Pebble Feelデスクトップアプリ

Pebble Feelに対応したVRChatワールドとして、現在5種類がShiftallのWebサイトに掲載されています(Twitterを見ていると、他にも対応ワールドが増えてきているようです)。筆者は、「川床-winter-(作者:そうにゃん氏)」と「遠郷の冬めく夜 -Nostalgic Winter Night-(作者:あっと氏)」に行ってみました。

川床-winter-

川床に設置されたこたつで、川を眺めながら宴会を楽しめるワールドです。
入口付近にある「Pe」と書かれたスイッチをONにしないとPebble Feelが反応しないので、見落とさないよう注意しましょう。

入口の鳥居にPebble Feelのスイッチがあるので忘れずに押そう

ワールドの内部に進み、こたつの周りに近づくとPebble Feelの温度が上がり、こたつで暖まっている感覚を得られました。

こたつを楽しむ筆者
デスクトップアプリでも、Pebble Feelへの指令が表示される

周囲を流れている川に落ちると、今度はかなり強力にPebble Feelが冷やされ、川の冷たさが演出されます。物理的に冷たいので、早く川から脱出したい気持ちになりました。
高効率を謳っているだけあり、温冷の切り替えは高速です。暖かいエリアと冷たいエリアを交互に移動してみても、それぞれのエリアに入ってすぐに温度変化を感じられました。

滝行

遠郷の冬めく夜 -Nostalgic Winter Night-

かなり大規模な温泉旅館のワールドです。

きれい

このワールドも、初期地点の柱にある🔥マークのスイッチでPebble Feelを有効化する必要がありました。

Pebble Feel有効化のためのスイッチ

このワールドには多種多様な温泉があり、それぞれにPebble Feelによる温感提示が付与されています。個人的には、温泉体験とPebble Feelの相性は特に良いと感じました。温泉に留まってみると、首元がじわっと暖かい状態が続き、ゆっくりお湯に浸かっているのに似た感覚になっていきます。ペルチェ素子の仕組み上、加熱中はファンが回転せず無音になることもゆったりとした気分にプラスでした。

露天風呂
サウナ

BLE通信を覗いてみる

Pebble Feelは、VRChatの画面に特殊なマーカーを表示することでVRワールドと連携する仕組みです。そのため、2023年2月時点ではVRChat以外には対応していません。

自作したVR作品などから、アプリを経由するのではなくPebble Feelと直接通信して操作ができれば、さらに利用の幅が広がりそうです。通信にBLEを使うということなので、BLEの通信内容を確認できるアプリLightBlueを開いてみたところ、PebbleFeelと接続するところまではできました。

BLEペリフェラルとしてPebble Feelが表示された

ただ、5種類ほどのServiceが用意されていることまでは分かりましたが、通信仕様が分からないので好きなように温度を変えるところまでは行きませんでした。Bluetooth通信を傍受したり、アプリを解析したりすれば分かるのかもしれませんが……。
BLE経由で操作できるようになると、VR作品や研究の展示など様々な場面でPebble Feelを活用できそうなので、ShiftallさんにはBLE通信の仕様の公開を願っております。

なんもわからんの図

まとめ

Shiftallの他の製品に比べて、開発者やコアユーザー向けの実験的な機種という印象が強めのPebble Feelですが、他社では見られない意欲的なデバイスを実際に発売してくださっているのは非常に嬉しいことです。
VRで視聴覚以外の様々な感覚を再現してくれる製品はまだ少ないですが、これを機にVRでの温冷感の活用が広がることを期待したいです。

レビューを忘れて温泉を楽しんでしまった筆者


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