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くすぐったがりも悪くない

私は極度のくすぐったがりだ。
ちょっと背中をつんつんされるだけでも、とても文字には書き起こせないような声が出る。

私の友達は、私をくすぐるのが好きだ。理由は「反応がかわいいから」とのこと。ほめられてるのか揶揄われてるのか。

学校でやられるのはまだいい。問題はバスの中でやってくることだ。バスの1番後ろの席。右には友達、左には全く知らない人が2人。前の座席にも人はたくさんいる。そんな中でやられるのだ。

笑いそうになるが、周りに人がいるので耐えなければならない。辛い。ものすごく辛い。堪えるのが辛い。

その子にくすぐりに耐えるにはどうするかを聞いてみたことがある。彼女の答えは「慣れること」だった。やっぱり慣れかなあと言うと「明日から毎日くすぐってあげるね!」と無邪気な笑顔で言われた。

私そんなくすぐって欲しいなんて一言も言ってないよ?(脳内BGM:違う、そうじゃない/鈴木雅之)

🙂

次の日から本当に毎日くすぐられた。暇さえあればくすぐられた。無意識に彼女の手が私のお腹に伸びていることまであった。そんな生活を続けた結果、私はますますくすぐりに弱くなった。

でも良いこともあった。『心を開いている人からのくすぐりは不快ではない』と知ることができたのだ。そりゃあ、くすぐったいものはくすぐったい。でも不思議と嫌な気持ちにはならないのだ。

もう1つ。『くすぐりに弱い=防衛本能が高い』ということも知った。外からの刺激に弱いということは、その分自分を守れるということだ。これを知った時だけは「くすぐりに弱くてよかった」と心から思った。

因みにその友達はくすぐりが全く効かない。今日こそは、今日こそはと毎日やってみるのだが、相変わらず反応がない。私はそれがたまらなく悔しい。

たまに「アハハークスグッタイネー」と明らかな棒読みで言われる。それが一層私を悔しくさせる。

今日も私は友達に向かって「生まれ変わったら私と同じくらいくすぐりに弱くなってくれ」と小さな呪いをかけるのだった。