8/29ハンドアウト+雑感

8/29にオンラインで研究発表をしますので, そのハンドアウトをここに載せておこうと思います。若干タイトルに変更を加えました。

興味があるひとは是非。
今回のハンドアウトを作っていて思ったことがいくつかありまして,
1つ目は, この研究ってまずOTとDMの両方の導入をしないといけないので, あんまり学会発表向きではないなと感じた点です。OTもDMも今ではそこそこ知れ渡っている理論ですが, ある程度理論の導入はすべきで, 基本概念やどういった現象を扱えるのかみたいな話は研究発表ではするのが普通だと思います。学部時代から感じていたことですが, DMの導入だけでも結構骨が折れる…
統語論を専門にしているひとならまだしも, 意味系, 実験系などの統語理論にもあまり詳しくないという人に対して, YモデルやPF規則について説明するのって, どこまで詳しく話せばいいかの塩梅がなかなか難しくて, 研究発表の場などで(自分の力不足もあり)結局いつも色んなことを詳細に説明してしまい, 時間が足りなくなり本当に話したい部分が話せなくなるということがよくあります。今回はDMに加えてOTの説明もしなければいけないので, どうなってしまうんだと。今回の発表時間は40分なので比較的長めですが, これをポスター発表とか10分前後のトークでやるのはなかなか厳しい…

2つ目は, Embick (2007)を読んでいて思ったことでもあるのですが, DMは何故Local評価に固執するのかよく分からないという点。たしかEmbickは2010のMIT本でも同じことを指摘していたと思いますが, 統語構造から引き出したMorphological Wordに対してかける操作(Local Dislocation, Dissociated Nodes Insertion, Vocabulary Insertionなど)を派生的に計算する訳ですが, その評価方法を採用する理由ってそれが経済的だからということ以外にあるんですかね…?ミニマリズムの台頭でとにかく無駄を省いた言語設計が望ましいという風潮が出てきてはいますが…EmbickはDMに基づいたアプローチを “uniform approach”と呼んでいて, 1回の計算で生成できる構造は1つで , いわゆる言語計算で複数の候補を計算してそれらの間でcompetitionをした結果最も適格なものが最終的な出力として選ばれるという競合もしくはBlocking効果みたいなものを認めない立場です。たしかにVIやDNIのあとにLDをかける, みたいな操作は理論上できないことになっていますが, OT流でやるならば仮にそういう操作をかけたとしてそれは形態音韻的な制約の違反を引き起こすのでそもそも最終出力にはどうやってもなり得ないから操作をかけてもよくない?という筋書きになる訳です。結局のところ, 人間の脳機能がどこまで並列計算を許すのか, ということに関わってくるのではないかなと考えています。ここら辺は理論だけ見ていても決着のつかないことで, 生物言語学もしくは認知神経科学の領域で議論する必要があると思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?