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なりチャ配信、やべ〜〜〜!!!

そうそう、この動画。
リンクを貼っているので、時間があればぜひ見てほしい。

これは、大手Vtuber企業、”にじさんじ”のライバー、月ノ美兎(以下、委員長と呼んだり呼ばなかったりする)による、

【★初心者歓迎★月ノ美兎ちゃんのなりきりチャット★】

という、40分強の配信だ。
Youtubeにて配信予定日時を指定すると、配信が開始するよりも先にチャット欄が開設され、配信が終わるまでの間、視聴者や配信者がコメントを書き込める“待機所”となる。

その仕様を利用し、配信予定日時を2〜3年ほど先に設定することで、視聴者達が自由にコメントできる、“フリーチャット”と呼ばれる交流の場を作る、という文化があるのだ。

委員長は、この待機所を【月ノ美兎なりチャ部屋】と名目し、約2年弱もの間、待機所に集う視聴者を月ノ美兎になりきらせていた。(地獄か?)

しかし、2022年2月初旬のある日。

『再生リストを整理していたら「何故なりチャがここに…?」と一旦冷静になってしまった為、削除が決定しました。是非思いのたけを書いてください。わたくしになりきって。』

月ノ美兎公式Twitterより引用

との事で、
多くの初心者を歓迎していた月ノ美兎ちゃんのなりきりチャット部屋は、2022年2月18日金曜日の配信にて、削除される運びへと至った。
つまり、この配信は、
“【★月ノ美兎なりチャ部屋★】を爆破するための配信”
なのだ。

 配信の内容をざっくり説明すると、『にじさんじライバー十数名(うち一人は個人勢)が、にじさんじライバーに成りきった一般人になりきってチャットをする』というもの。つまり自らのなりきり……のなりきりである。

 配信において生命線とも言える、“声による会話”がほとんど無く、
『月ノ美兎役兼、なりチャ部屋の管理人(月ノ美兎)』がキーボードを叩き、掲示板に文字を打ち込む音や、彼女の苛立ち交じりの溜息と鼻水をすする音が響くだけ。

 まだこの配信を観ていない読者様方はおそらく、「そんな配信、どこが面白いの?」と首をかしげているだろうが、まぁ聞いて欲しい。

この配信は、『委員長になりきるファンの人生の一幕を読む』配信なのだ。最近はやりの、会話形式の小説と呼んでもいいだろう。片手間に見る事はできないが、その代わりに世界観に入り込みやすくなっている。
キャラクターとして確固たる設定を持つVtuberが、性別や種族の垣根無く集う、にじさんじというグループだからこそできた配信だと言える。

『にじさんじライバーなりきりチャット部屋』という、ゴリゴリの内輪ネタを題材にしているため、ある程度のライバーへの知識が必要であり、にじさんじを知らない、あるいは、これからにじさんじを知りたいと考えているユーザーには、少しとっつきにくいかもしれない。


月ノ美兎(月ノ美兎)

 まず、この配信について語るには、
月ノ美兎になりきったなりチャ部屋の管理人(月ノ美兎)
について解説する必要がある。

彼女には、部屋の住人が自分の興味のない話や、知らない話を始めると、すぐさま圧をかけ、排斥しようとする、少々横暴な面がある。

「ここは、なりチャ部屋なので、切り抜きの話はしないで」部屋の住人にそう釘を指した傍から、間違った一人称のでびでび・でびる(でびでび・でびる)を目の当たりにし、「一人称が違います。切り抜きで勉強してきてください」
というようなダブスタ発言を返すなど、キッズ的言動を繰り返すこともしばしば。
中学生、あるいは高校生ほどの年齢であると推測できるため、年相応であると言えば、それまでかもしれないが。

インターネットの悪意に触れた彼女が、どのように成長していくのか?
いや、もしかすると彼女の行いは、現在月ノ美兎として活動する彼女の過去の行いそのものなのだろうか?

…………とまぁ、半ば感情移入気味で、質の悪い妄想に耽ってしまうぐらいに、彼女は“いる”存在だった。


『インターネットノスタルジー……?』

本配信は、まだリテラシーや、マナーなどが舗装されていなかった時代のネット掲示板に漂う独特な雰囲気の再現度が非常に高い。
配信はスマホでしか見ない私が、容量ギリギリの低スぺPCを立ち上げて見入ってしまった程に。

例えば、チャット内で飛び交う会話の一例を挙げてみよう。

「今日ホントに寒くないですか?(ぶるぶる)」
「んんっ……(軽い咳払いをして)」
「美兎ちゃんだ~!(ぎゅーっ)」
「悪魔にも学校ってあるんだね(←あるのか!?)」

ウワーーーッ!!!覚えてるぞこれ!!!!
インターネット義務教育1年目の5月中旬に習うところだ!!!!!
(右手で真っ赤な顔を隠し、左手を振りながら大声で叫ぶ)
(↑そこまでするのか!?)

私の心は、この光景を覚えている。

言葉に動作を付け加えたり、自分にツッコむアレ。平成をオタクとして過ごした中高生はみんなやっていた。……やってるよな?やっていたと言え。

過ぎ去った平成中旬への懐かしさが、これでもかと漂うなりチャ部屋だが、そこで飛び交う会話の内容自体は、APEX、にじさんじの切り抜きなど、比較的最新の話題であり、奇妙な平行世界のインターネットに迷い込んでしまったしまったかのような気分を味わえる。

この感覚、夕暮れの田舎模様を映していながら、行き交う老若男女がセグウェイに乗ってゆっっっくり進行していく、という11分42秒の白黒動画を見た時とどこか似ているが、そんな動画はない。

ギスギス開始、黛灰役(黛灰)など、話したいことはたくさんあるのだが、本配信の形式上、『ネタバレ』の重大さが段違いなので、詳細は語らないことにする。


『伏線』

冒頭にて、この配信は
“【★月ノ美兎なりチャ部屋★】を爆破するための配信”
と称したことを覚えているだろうか。

この配信には、映画張りの伏線が張られていたのだ。
爆破予定地、もとい、【★月ノ美兎なりチャ部屋★】に集まった視聴者は、ライバー達による、なりきりのなりきりを眺める事になるのだが、ある瞬間をもって、ただコメントを打ち込むだけの傍観者でしかなかった我々は、物語の登場人物へと変わるのである。
それも、たった一言のメッセージで。

『ここで、俺達と繋がった……?』

失礼、ファンタジー異世界冒険譚と、現代日常世界が交錯する、伏線の張り方が丁寧で、超面白いアニメの最終回から三話前のエンディングに入る直前のセリフが口から飛び出してしまった。

闇雲に配信者を神格化するのは、あまり好きではないのだが、今回ばかりは言わせてほしい。

俺達の委員長、すげぇよ。映画研究部での経験が最大級に活かされててさ。
リアタイできて本当に良かった。最高で最悪の配信をありがとう。

と。


終わり

月ノ美兎に憧れて、なりきろうとしたあの少女は、どこにでもいる。
あなたの傍にも、そしてもしかするとあなたも。
私だって心当たりが無いわけではない。
彼女の存在を、成長と共に忘れていくだけ。

インターネットとは、有名人、一般人の垣根無く、電子の自由帳に打ち込む文字次第で、何者にでもなれる匿名の世界なのだから。

きりつ、きをつけ。
以上、一視聴者がお送りしました。







おまけ

このような記事を書いておいてなんですが、
実のところを言うと私自身は、匿名掲示板に書き込みをした過去はありません。なぜなら、”晒し”の恐怖に怯えていたから。

まとめサイトで2chのコピペを見漁り、悪意のワクチン接種を繰り返し、ネットの波打ち際で水浴びばっかりしていた。陽の当たる世界で走り回る力は無く、それでいて、底なしの毒沼に影を落とすことも無い。そんなつまんねー無少年でした。

だからこそ。
見えているのに触れずに見過ごした、匿名掲示板という文化に強く惹かれ、こうして記事を書く程に心が震えたのかもしれません。

ならばその当時、何をしていたのか?
と言う話ですが、その時ハマっていた漫画、アニメのキャラを集めた同人誌を、自由帳に書き上げていた記憶があります。

がしかし、その産物をインターネットに放流することはありませんでした。解像度の低さ故に、原作キャラを蔑ろにして、自己投影最強キャラを立てるような最悪の原作陵辱型クソ呪物だったので、それでよかったのですが。

記憶の片鱗だけですら大ゲボな黒歴史を、令和4年になって思い出すなんて思いもしなかった。あの読む劇毒物をどこに置いたのかすら全く覚えていないので、もしかすると机の引き出しの隙間やら、タンスの隅から出てくるかもしれないと考えると、気が気ではありません。
あの日から、やけに部屋の隙間が怖い。

……と言う自分語りもこの辺りで。

着席。ご静読ありがとうございました。

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