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わたしたちが今、我慢していること

(はじめに:怖くなるような内容とかは書いていないので構えて読まなくて大丈夫です。)

近況です。3月から徐々に状態が安定している受け持ち患者さんの対面外来診療を電話診療に切り替えはじめました。とても安定している人は数ヶ月ぶりに声を聞いたりすることもあるので、電話診療をしていると「ていうか先生、先生は無事なの!?」と久しぶりに連絡をとった同級生みたいな切り出し方の患者さんとかいて忙しい外来がちょっと和みます。まあまあ無事ですかろうじて。

先日、ここ数ヶ月を振り返っていてふと思ったのですが、みなさん最初に今回のことを知ったのっていつどのタイミングでしたか。私はたぶん12月31日でした。大晦日の日に紅白歌合戦を横目にTwitterを見ていたときに中国で謎の感染症が流行し始めたというのを海外メディア(AFPBBかGuardian?)のweb記事で見かけたのがたぶん始まりでした。(海外メディアと思い込んでるだけでNHKだったかもしれない)その頃は病原体も同定されていなくて、新年あけてそこから10日くらい?経って同定されたという記事が出ました。「それ」はアデノウイルスとかライノウイルスとかと同じくらい私にとって聞き慣れた名前で「なんやしょぼ、それやったら雑魚やな」と思って拍子抜けしたのです。そう、最初はそういう感じだったんです。これ思い出してて、最初の感じにいったんちょっと戻すとか振り返る作業というのが大事だなと先日なんとなく思いました。これを思い出しながらTwitterに書いているときに、Twitterでの私のpostを通じて最初に「それ」を知ったという人がたくさんいるということを知りました。思い出すのも恥ずかしいけれど振り返っていくと私は間違ったことや見通しのわからないことをいかにもそれらしくtweetしたような気がします。人間だから間違えるのは別に普通にあることなんだろうと思うんですけど、自分がそんなに間違えないだろう、予測し得るだろうと思っていたことがどんどん外れていってたな。今ではもう自分が間違え続けているのではないかと疑いながらなんとか情報を集めていろいろなことを考えています。

さて、今に始まったことではなく、これはもう3月からなんですが病院では必要な医療物品が常にまじで不足した状態が続いています。すべての病院のことは把握していないのですがおそらくあらゆる病院で同じ状況になっていることでしょう。患者さんと接する医療従事者だけでなく、用度課や庶務課といった事務方は物品の確保に奔走し毎日頭を抱えています。(病院内でもより曝露が少ないと自覚している職種の人は布マスクを使用して院内の使い捨てサージカルマスクの使用を遠慮している人もけっこういます。)ありがたいことに、最近個人的には知人友人からのサージカルマスクの寄付の申し出をいただくことが増えてきました。医療従事者たち自身は院内物品の在庫流通の詳細は知らないことが多く、単に「大事に使いましょう」「4月いっぱいまでしか保ちません」「交換頻度を○日に1枚にしてください」とだけ伝えられていて、私もその一人でした。ただ、ちょっと気になって事務方で医療物品の確保に奔走しているという担当者の人の連絡先を聞いて(今まで電話したことなんてなかったのですが)院内PHSで連絡して、実際どれくらい困ってるんでしょうかと聞いてみたところ「実はマスク一枚からでも寄付をお願いしたいような事態です」と言っていて、あらためて驚き、寄付の申し出をいただいているほうぼうへ連絡して病院に送ってもらうようにお願いしました。もし病院で使えそうなものの在庫がけっこうあって譲れそうという人は近隣の病院に譲ると喜ばれるかもしれません。

何を思ったというのでもないのですがTwitterで「今我慢していることがある人はReplyで教えてください」と聞きました。がんばろうとかいつか叶うよとか今は我慢し続けようとかそういうことではないんです、伝えたいメッセージとかもないんですけどReplyくれた方ありがとうございました。少なくとも私は我慢していることを教えてもらえてよかった。クリスマスに欲しい贈り物を聞いたときみたいに我慢していることを教えてくれた人が何を言っていたか書きます。

我慢していることとして書いてくれたものでは「髪を切る、美容院に行くこと」これを我慢しているというのが一番多かったです。10人以上いました。えっそうなんだ…みんなそんなに髪を…書き込みの中には自分で切って大変なことになったという人も数人いました。自分で切ると大変なことになるそうです、慣れてない人は気をつけて。その次が「友人に会うこと」「音楽(ライブやコンサートに行く、演奏をする、合唱をする、カラオケ)」「恋人に会うこと」「家族に会うこと」だった。「家族に会うこと」と分けたのですが数えたら「実家・地元に帰ること」も多かった。これは本当にそう思う、私も実家に帰りたい。逆に「実家にいなければいけないこと」を我慢しているというのもあった。喫茶店やカフェに行きたいという人がその次に多かった。のんびりくつろぎたいよね。私は好きなカフェがすでにひとつ廃業しました。つらかったです。具体的な食べものを挙げてくれた人は「寿司」「焼肉」「ラーメン」「ケーキ」などがありました。意外とカレーはいないんですね…ふーん…。「サウナ」や「温泉」という人もいます。たしかにね。「旅行」それは本当にそう。私も年末から3月に旅行を予定していましたが中止しました。「映画館」「美術展」「書店」などもある。カルチャーが恋しいね。アウトドアでは「花見」「ジンギスカン」(これ道民だな)「登山」などがあった。登山なども我慢している人が多いだろうね。なにも我慢していないというのをReplyしてくれる人もいました。全然いいんだけど、我慢していないということを書き込むことも我慢しなかったんですね(いや、全然いいんですけどね)。仕事に関して。「仕事をしたいのにできないこと」を我慢していると書いてくれた人がいて、また「仕事をしなければならないこと」を我慢していると書いてくれた人もいました。マスクに関して、「マスクをつけていなければならないこと」を我慢している人「マスクの使い回し」を我慢している人もいました。

気になったのは「不安」を我慢しているという人もいたことです。不安の我慢は良くないよな、私なんか最近不安と思ったらすぐに不安をTwitterで表明している、あんまりよくないかもしれないが…直観的には不安を我慢してはいけないという気がします。うーん難しいけど…私は不安を言葉にしていい、というか少なくともしちゃいけなくはない、と思っています。

さて、どうですか。我慢、してますか。いろいろな人がしている個別の我慢を見てみてどうですか(私はこれを見てほしいし知ってほしい)。一見、「人に会いたい」「外に出たい」というのが多数の我慢のように見えるけど、実際にひとつひとつ見ていくと「仕事したい」人と「仕事しなくちゃいけない」人に見られるようにひとつ「仕事」ということをとっても個人の背景によって我慢していることがけっこう違うんですね。我慢していることを人に言わない人は多いと思います。私のTwitetrのReplyに書いてくれて、ありがとう。

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