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寒くなくない日記

寒日記」を書いたあと、一瞬気温が上がって全然寒くなくなって、これは次にnote書くときは「寒くない日記」か「非寒日記」だなとか思っていたのですが、ふつうにまた寒くなった。あのあとエアコンの交換があり、暖房を入れることができるようになったが、9時に来た業者の人が休まず作業をしてくれて帰ったのが17時で、これは私の家の構造が変わってるからなのだが、最初に不動産会社の人に「午後までかかると思うので朝一番で行かせてください」と言われたときに想像していた14時とかには終わるだろうという見込みを大幅に超えてきた。


 精神科医の中井久夫先生が8月に亡くなったとき、(私が中井久夫先生の死を悼んでいたところ)twitterのフォロワーの方が花とみどりのeギフトというソーシャルギフトのクーポンコードを贈ってくださって、その期限が1月中できれるというので、啓翁桜の枝を買った。山形から来た桜の枝で、がさっと大きな花瓶にたがいちがいになるように生けて、ストーブで作った参鶏湯を啜りながら部屋の中で花見をした。自分のために買ったのだが、家に来た人にも褒められてなんだか嬉しく、長いこと慰められた。交換したばかりのエアコンで部屋を暖かくしていると蕾がはやく開いてしまうので、最初のころは暖房をつけず寒さを我慢して桜の花を見ていた。結局寒さを我慢している。



 2月はじめに枯朽という名前の、墨田区にあるモダンガストロノミーレストランで食事をした。最寄は押上駅。2022年に開業したレストランで、開業前に間借りの形態で定期的にポップアップのイベントがあった。Twitterをきっかけに知り合い、プライベートでも会って話したことがある料理人だ。ポップアップに行ったときはたまたま彼の本領のクラシックフレンチのコースだったから、ガストロノミー的な彼の料理を食べるのは初めてだった。今回、最初に燻した杉の木材がぶちこまれているノンアルコールドリンクが出てきた時点で楽しい気持ちになってしまい、走り出しからよかった。

 完全なオープンダイニングで、調理から提供へのすべてが見える。見せるという気概を感じる。吊り棚になっているキッチンの造作がめちゃめちゃかっこいい。飯田橋にあったINUAみたいだった。3名の若い調理人がいて、それぞれの出自(福井のへしこ、八女茶など)と縁がある食品や加工品を使っていることをメッセージとして伝えてくるのが印象的だった。最も素晴らしかったのは東北の鴨で、調理提供過程を見て説明も受けたが、正直なところ今までで食べた鴨でたぶん一番美味しかった。しかし、明らかに調理にかける気力労力が想像しうるかぎり凄まじく膨大、これでは自分を痛めつけて作っているのではないかとも思え、人件費を0円としていないとこれは実現しないし提供できないのではないかという感じで、食べていると美味しさとともに心の痛みとそれでも痛切なリスペクトを感じた。しかし、アロゼした素晴らしい鴨を赤ワインなしで食べるようなことがあってもいいのかと衝撃を受けたが、あの夜には、あった。

 友人と二人で食べたのだけど、だいぶ前に会ったときに食事の予定を入れていて、二人で会って再び話すまでの間に時間があいていたのだが、その間友人はかなり仕事で落ち込むことがあったようで、それがなんとなく事前に伝わってきたので、その日は食べるのもいいけど話も聞かないとな、と思っていた。ところが、もちろんその話にはなったものの、ひどい話であったが友人は前向きで、話をこんこんと聞くつもりだったこちらが癒される感じがあった。私たちだけではなく、その場と食体験との関係性の効果もあったのかもしれない。


 一月末くらいまでは休みの日などに働いたときに感染症の患者の搬送を受けていたのだけど、二月からはほとんど初療を受け持たなくなった。それから、院内の感染症内科医から全院内にメールが知らされ、患者対応時に必ずしもN95マスクを着用しなくてもよいことになる、という大きな変化があった。いつかはこうなるかもとは思っていたが、予想よりも時期が早かった。


 レッドチェダーチーズ エクストラマチュアの塊を買って削りながら食べていた。好きなパンにのせて溶けすぎずぽってりするくらいまで火を入れて、蜂蜜をかけ、ハムを挟んで蜂蜜とチェダーチーズとハムのサンドイッチにして食べるという方法を覚えた。


 シリア・トルコで被災者、死亡者の多い地震があった。このせいでしばらく気持ちが塞いでいた。自分が落ち込んでも普通にしていても何も変わらないのだから、普段と同じでいいわけだが、そうはならない。


 昨年とか一昨年よりも周囲に緩やかな雰囲気があり、今年は新年会にも誘われて友人の家の集まりに行ったりしていた。新しい人との出会いや古い人との再会もあり、面白かった。Jeremy Woolseyさんという人を紹介してもらったのだけど、そのあと彼の文章とか彼の出ているYouTubeを見たりした。雪が積もってる日に会ったが、ジェレミーさんは半袖Tシャツ姿だった。


 最近の飲酒の傾向ですが、自分で飲む分には日本酒づいている。冬の食事に日本酒が合う気がする。郡山の仁井田本家「にいだしぜんしゅ」のしぜんしゅ 純米原酒がすごく飲みやすい。

 男鹿の稲とアガベ の稲とホップも最近飲んだ。ラムネみたいなお酒で、変わっている。味のなかに、子供の小さな手遊びみたいな部分と、エロティックな部分が同居している感じがあった。

 飲むビールは、アルコール3,4%の低アルコールの米国とかオーストラリアのIPAが多くなってきている。軽いビールで味わいが深いもののラインナップが増えている?


 出先の飲食店やコンビニがあまりない場所でお腹が空いてしまって何もわからなくなり、バーミヤンに入店するということがあった。何が食べたいかを決めていなかったが、火鍋を食べた。ラム肉の火鍋でカセットコンロが出てきて、陰陽の形に仕切りがついている2種類のスパイシーな汁があらかじめ入っていて、それに自分で具材全部入れて食べていくセットで、2000円くらいだった。すごい。鳥インフルエンザの影響で、その日のバーミヤンでは卵を使う単価の低いメニューは品切れになっていたが、これには最後の雑炊に使えるように全卵が1個ちゃんとついていた。
 バーミヤンには久しぶりか、おそらくほぼ初めて入ったが、配膳ロボットが音楽を鳴らしながら近づいてくるあのシステムの場を初めて経験した。まず驚いたことは、店に来ている幼児が100%配膳ロボットを意識し声かけをしたり絡んだりしている。これは幼児を含む家族連れを集客することの大きなアドバンテージなのではないか。ただ、その日見なかっただけで、あのロボットが怖すぎて来られないみたいな幼児もいるのかな。幼児はみんなちゃんと猫ちゃん、と声をかけていたが全然猫じゃないものに対して、耳がついているとか、ニャーとかMeowとか言っているというようなことで猫と声かけするのは良くないんじゃないか、となんだか勝手に気が立ってしまった。
 後日たまたま対人援助職の友人と会ってこのバーミヤンの猫っぽい配膳ロボット=深圳にあるPudu社のBellaBotについて話す機会があったのだが、どうしてもあの配膳ロボットを見ているとあの先にあるであろう高齢者福祉での介護ロボットについて考えが及ぶ。対人援助には「自己覚知」を要する、と私たちは対人援助の仕事に就く前に学んでいる。介護ロボットは自分が何者なのか、自分の価値観とは何か、どのような考えで感情で人に向かっているのか、対人援助をするうえでその枠組みを設定されるのだろうか。
 火鍋はBellaBotが配膳できなかったらしく、人間のスタッフの人が持ってきてくれた。


 外来診療をしていると、今の時期来る人来る人みんな目が花粉で充血している。しかもまだそれに気づいていない人も多そうだった。春先にはこうで、夏前には知らず知らず日焼けして首とか真っ赤になって気づいていない人がすごい来たりする。病院に来るという他者を介在させるセルフケアはなんとかできても、花粉を予防する、紫外線を予防するというセルフケアまで気が回らない忙しい人も多そう。やらなくても死ぬわけではない細々としたセルフケアの優先度は当然人によって違うのですが、どうか目とか皮膚も含めてお大事にしてください。


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