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会社法施行規則等の改正(ウェブ開示の対象拡大)のポイント(2020年5月)

1. 概要

 2020年5月15日、会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(法務省令37号)が公布され、即日施行されました。本改正は、施行日から6カ月以内に招集の手続きが開始される定時株主総会に限り、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大するものです。

関連リンク:
■ 法務省:定時株主総会の開催について
■ 法務省:会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号)について
■ 新旧対照表

2. ウェブ開示制度の対象拡大

 ウェブ開示制度は、株主総会の招集に際し、株主総会参考書類・事業報告・計算書類・連結計算書類の一部の情報について、インターネット上のホームページに一定期間掲載することにより、株主に対する書面等による提供を省略する制度(みなし提供制度)です(会社法施行規則94条1項・133条3項、会社計算規則133条4項・134条4項)。

  本改正により、公開会社において事業報告に記載すべき事項のうち、「当該事業年度における事業の経過及びその成果」(会社法施行規則120条1項4号)、「対処すべき課題」(会社法施行規則120条1項8号)も、ウェブ開示の対象に含まれることとなりました。これにより、「株式会社の現況に関する事項」(会社法施行規則120条)のうちウェブ開示によることができる事項は、以下のとおりとなります。

会社法施行規則120条

 本改正により、単体の貸借対照表及び損益計算書(会社計算規則133条)についても、ウェブ開示の対象に含まれることとなりました。監査報告、会計監査人の会計監査報告も含まれます(会社計算規則133条1項参照)。ただし、計算書類について株主総会の承認(会社法438条2項)を要する場合は不可とされています。

会社計算規則133条

 なお、ウェブ開示をする旨の定款の定めがあることは必要です。

3. 株主の利益への配慮

 株主の利益を不当に害することがないよう、特に配慮が求められるとされています(会社法施行規則133条の2第4項、会社計算規則133条の2第4項)。法務省の説明では、以下のような方法が挙げられています。

-  できる限り早期にウェブ開示を開始すること
-  準備ができ次第速やかに、ウェブ開示の事項を記載した書面を株主に送付すること(あるいは希望株主が書面送付を受けられることを招集通知に記載し、希望株主に送付すること)
-  来場株主にウェブ開示の事項を記載した書面を株主に交付すること

4. 施行期日・失効日

 公布日(2020年5月15日)より施行され(附則第1条)、本省令の施行日から起算して6か月を経過した日に失効することになります。ただし、同日前に招集の手続が開始された定時株主総会に係る事業報告及び計算書類の提供については、なおその効力を有するとされています(附則第2条)。

5. 実務への影響

 実務上、株主総会の招集通知の制作(印刷)や封緘作業にかかる日数を考慮する必要があり、発送日の1、2週間前には、原稿の内容を確定する必要があります。しかし、本年は全般的に監査が遅延している状況があり、上記時点までに計算書類の作成ができず、結果として印刷が間に合わずに、招集通知を期限までに発送できない会社が出てくることが懸念されています。

 本改正により、最も遅いタイミングでは招集通知の発送時(総会開催日の2週間前)までに内容を確定させればよいこととなり、準備時間に少し余裕が生じることとなると考えられます。

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(注:冒頭にも同じ内容のPDFを貼り付けました。条文ファイルは加工等して使ってください。)


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