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【弁護士相談室#4】評価されるアソシエイトって?

若手弁護士や就活生からの質問を素材に、弁護士のキャリアの話題などを中心に考えてみるシリーズです。今回は、ちょっと答えるのが難しい、

どのような若手アソシエイトが評価されるのでしょうか。逆に、「こいつはアカンな」と思う人はどんなアソシエイトでしょうか?

というテーマをあえて取り上げようと思います。

そりゃ、頭脳明晰かつ知識豊富、土日祝日問わず勤勉で仕事が早く、人柄も良くて皆からも好かれ、見た目もシュッとしていて清潔感があって爽やか、クライアントから次々ご指名が入るみたいな人がいいですね、といってもそんな人はドラマの中にしか存在しなくて、誰しもがどこか何かに悩みを抱えているものです。また、そもそも事務所の方針も様々ですし、同じ事務所の中であっても評価する側のパートナーの考え方もそれぞれです。なぜか馬が合う人というのもいるでしょう。

とはいえ、私が想像する範囲で、パートナー目線で考えたとき、どういうアソシエイトが評価される傾向にあるか(というより、自分がどういうことを言ってきたか)、を紹介してみようと思います。なお、企業法務系の事務所、1年目~5年目位の人を想定しています。それ以上の年次になると、また考えることが増えてきますので・・。

1.しっかりした法知識があること(特に民商法)

当たり前のことですが、とにかく定型業務を淡々とこなせばよいという事務所でない限り、しっかりした法知識があることが大前提になります。例えば、債務不履行の概念の理解があやふやでは、契約書も満足に読めないでしょう。

反発を承知で書きますが、昔の司法試験合格者の層と、今の司法試験合格者層とを比較すると、実務に入ってくる時点での知識の定着度がかなり違うかなというのが率直な印象で、ただ、上位層の優秀な人はやっぱり優秀だなというのが今のパートナー層の偽らざる本音だと思います。あの事務所は予備試験合格者しかとらないとか囁かれることがあるかと思いますが、多分、どこも予備試験合格位の知識レベルは欲しいな、と思っていて、予備ルート以外の人では、それがあるかどうか確信が持てない(時々とんでもない人がいる)ので二の足を踏む、というのが大きな要因だと思います。

それをどうこう言っても仕方がなくて、それは所与の前提として、(少なくとも現時点で)自分が上位層ではない自覚があるのであれば、法律知識の面での相当な努力はした方が良いかなと思います。それでも、注力する分野は、実務で必要な分野になりますし、実際の仕事に即したものになるので、受験勉強よりは多少やり易いはずです。

企業法務分野で言えば、旬刊商事法務、NBL、ジュリスト、金融法務事情あたりを購読し、数年間、読み続ければ、それだけで二歩くらい先に行けます(それ位、それは難しいことです。)。

2.仕事が早いこと

スピードは最優先事項でしょう。パートナーは、アソシエイトに仕事をアサインする際、この案件はこの位時間がかかるだろうという大まかな予測を立て、自分のレビューと追加のやり取りの時間などを考慮して、クライアントに成果物を提出できるのが概ねこのタイミングになるだろうとプランニングしています。それを説明してくれる場合もあるでしょうが、すべての案件でイチイチ説明したりはしないでしょうから、アソシエイト側は、それを踏まえて動く必要があります。基本的には、すべてが「なるはや」と思っておかないと、この人は時間がかかるな、と思われることにはなるでしょう。これも反発を承知で書きますが、時間的に無理と思われるものでない限りは、即日か遅くとも翌日には何らかのレスポンスをするのが基本だと思います。

予測よりも早いタイミングで成果物ドラフトが提出されれば、パートナーは仕事のプランニングに自由度が生まれて、大変助かるわけです。そうすると、次の仕事もこの人にお願いしたいな、と思うことになります(それが良いかどうか、という問題はありますが・・)。

難しいのは、その件に集中すればすぐできるのに、別の件があって手が回らない、という状態が常にあることです。時間は有限ですから、山積する仕事の中でどう効率的に時間を割いていくかの判断が難しいわけで、スピードというのは、クオリティとのバランス、他の別件とのバランスを色々な意味で上手くとりながら、取り回しができる能力というように言い替えることもできるかと思います。

3.仕事がサクサク進むこと

スピードと同じようで少し違うのが、仕事がサクサク進むこと、つまり、仕事を進める能力の点です。仕事の目標は、当面は、クライアントに成果物を提出することになるはずです。ところが、割と細かな点にこだわってしまう完璧主義タイプの人は、なかなか細部を詰め切れず、いつまでも検討し続けたくなってしまう傾向があります。

また、自分では決められない人(決めたくない人)もいて、パートナーの責任で決めて欲しいということで、すべてパートナーの確認を得ないと前に進まないということが起こります。

これはタイプもあるので一概には言えませんが、パートナー側にとってありがたいのは、怒られるリスクもある程度取ってくれて、変な間違いをせずにスタンダードな対応をしてくれて、ロジの配慮ができ、どんどん仕事を前に進めてくれる人、ということになるかなと思います。結果、仕事も早いという評価につながるのかなと思います。

4.自分の間違いに気付けること

知識があやふやにもかかわらず、プライドが高い人は、自分の間違いに気づかないか、気付いても認めない傾向があります。とにかく言い訳に終始するということも起こります。いや、弁護士たるもの、プライドが高いことは問題ありませんし、それ位でないと相手方に言いくるめられるので良いのですが、パートナーから指摘を受けたら直ちに訂正した方が良いでしょう。

ここは異論があるかもしれませんが、客観的には間違いでなかったとしても、仕事は仕事ですから、パートナーの方針に沿ってやるのが原則です。いつまでも自分の方針が適切だなどとパートナーに食って掛かっていると、面倒くさい奴だな、時間ばかりかかって仕事が進まないや、と思われてしまいます。

そういった傾向はあっという間に見抜かれてパートナー間で共有されたりするわけですが、本人に注意がいくかどうかは別問題です。良く言われますが、注意してくれるのはまだ見込みがあるからというのは間違いありません。「諦め」モードに入ると、注意するだけ時間の無駄で、変に反抗されても面倒なので、そのうち仕事はお願いできないな、成果物のフィードバックももういいや、ということになります。冷たいようですが、プロの世界ですから、仕方ないです。

5.仕事へのオーナーシップ

もし自分にある程度仕事が任せられているような場合には、きちんと自分の仕事として、やり遂げる姿勢を忘れない方が良いです。仕事のオーナーシップとも言う場合があります。

例えば、ある問題が発生したときに、他人事にせずに、パートナーが気付く前に率先して対応するようなことですね。仕事への責任感とも言い換えられるかもしれません。

仕事を自分事として主体的にケアしてくれるアソシエイトは大変頼りにされることになると思います。逆に、パートナーが何か指示しない限りは主体的に動かない、という姿勢の人はいて、指示待ちの人として認識されることになります。

実際は、これは難しくて、仕事が多くなるとすべての案件でオーナーシップを持って対応するのは難しいという事態が生じることもあるかと思います。アサインする側の仕事量調整の問題もありますし、中にはややサイコパス気味の人もいる(かもしれない)ので、便利屋として酷使されないようにしつつ、うまく対応していくという難易度の高い技術が求められるということはあるかなと思います。

6.適当な仕事をしない

最近は、ネット上にも情報が割と氾濫していますから、よくやりがちなのが、どこかの記事の切り貼りです。リサーチの入り口はネット上のどこかの記事でも良いんですが、きちんと自分の頭で咀嚼して、思考した上で、アプトプットをしなければなりません。

そのプロセスは時に面倒で、時間的プレッシャーでどうしても時間優先となり中途半端なアウトプットをしがちですが(自分もそうなんです)、そこで逃げない姿勢が大切です。また、その蓄積で差がついてくると思います。

7.あまり深く考えすぎない方が良い

色々と書いてきたのに矛盾するようですが、所詮は人の評価ですから、自分は自分で、あまり考えすぎずに自然体でやるので良いかなと思います(というよりは、目の前の仕事で一杯一杯で、それ以上考える余裕がないかもしれません)。

多くの若手を見ていると、その人の個性というか、適性があると感じます。性格もそれぞれです。よく言われる話で、実力は申し分ないが、人付き合いは苦手なタイプとか、その逆のタイプもいます。寡黙な人も、饒舌すぎて余計な事を言ってしまう人もいます。パートナーとも、不思議と相性が合う、合わないというのもあったりします。そこで、評価されるかどうかは、都度変わったりします。要するに、評価の指標が一つではないのです。環境を変えれば、輝ける人も沢山います。

不幸にして、この組織では難しいと思ったら、思い切って環境を変えてみることも一つの選択肢だと思います。

あまりとりとめもないですが、自分は自分のできることをやるしかないので、気にしないでやりましょう。

【自己紹介】

私の自己紹介については、以下のページにまとめておりますので、こちらをご参照ください。

(了)

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