ぺらぺらばあちゃん ―ショートショート―

今日は「皮膚の日」です。
というわけで、書いてみました。


 ばあちゃんはババアだから、顔のうすっ皮がぺらぺら剥げている。日焼けした後に皮が剥がれるみたいなのが年中無休だ。僕がちっちゃいころからばあちゃんはぺらぺらしてたから、気味悪いとは思わない。ただ、変だなぁ、と思う。

 ある日ばあちゃんに

「それ、剥がしてみたい」

 と言ってみた。

 ばあちゃんは自分でもぺらぺら剥がしてみたりするから、たぶん怒られないだろう――僕の予想は的中。

「かまわんよ」

 そう言ってばあちゃんはほっぺを僕に向けた。シミだらけでよぼよぼの肌に、ぺらぺらって薄皮がある。いっぱいある。そのひとつをつまんで、つぅーっと引っ張ると、きれいに剥がれた。

「ばあちゃん、痛くない?」

 僕が聞くとばあちゃんは「ぜんぜん」と答えた。

 少し疑いながらも、僕はもうちょい大きな薄皮を引っ張ってみた。なにも抵抗なく、それは剥がれる。半透明で、ひらひらしてる。ばあちゃんは微笑んで、痛くなさそう。

 調子に乗った僕は、また剥がしてみた。ぺらぺら。まだまだ。ぺらぺらぺら。まだまだまだ。ぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺら……。

 どれだけ剥がしても剥がしても、ぺらぺらはなくならない。それどころか剥いだそばから新しいのが生まれて来るみたいで、僕はぺらぺらを剥がし終えるタイミングを失った。

 初めは好奇心でしかなかったぺらぺら剥がしだったけれど、いつしか「このぺらぺらがなくなるまで剥がすんだ!」という義務感に変わっていた。

 意気込んで、全力で、僕は剥がす。

 それでもぺらぺらしてるから、剥がして剥がして剥がして剥がす。

 剥がしながら、「僕は何をやっているのだろう」と思う。

 僕はばあちゃんを見た。

 ばあちゃんは、おかあちゃんになっていた。


「剥がしすぎたからだ!」


 叫んで、僕は目が覚めた。

 目が覚めてから、変な夢だった、と気づいた。おばあちゃんはおかあちゃんじゃないし、ぺらぺらがそんなに剥がれるわけがない。ため息混じりに僕は頬を掻いた。

 日焼けのせいか、肌がぺらぺらしていた。


ショートショートのお題、待ってます!
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