パンダのプンダ、旅に出る その2

第2話「パンダのプンダ、森を出る」(全10話)

前話|目次|次話


 さて、森から出ることになったプンダですが、心の中では「いやだなぁ、行きたくないなぁ」とつぶやいてしまいます。しかしプンダの心とは無関係に、長男のピンダは「犯人はどんなやつだろう」と腕組みをしていました。

 そうです。プンダはもともとパンダでしたが、目を覚ますとシロクマになっていました。ピンダ、プンダ、ペンダ、ポンダの4人で考えた結果、誰かがプンダの黒い模様を盗んだということがわかりました。その犯人を捕まえるために、プンダは森から出るのです。

「きっと犯人は黒いはずだよ! 腹黒だねっ!」

 と三男のペンダは言いました。

「うん、そうだな。プンダの黒を盗んだのだから、さぞかし真っ黒けになっているだろう」

 と長男のペンダはうなずきます。

 その横で一番下の妹、ポンダはせっせと何かを作っていました。

 プンダは一度も森を出たことがありません。森の外には何があるのか想像もつきません。不安で不安でたまらなくなって、プンダは笹をもしゃもしゃもしゃもしゃと食べています。できることなら森から出ずにパンダに戻りたいものです。

「ふぅ、できたっ」とポンダは言いました。

 彼女は大きな葉っぱと木のツルでこしらえたカバンを手にしていました。4人兄弟でたったひとりの女の子のポンダです。手先が器用で、カバンを作ることくらいお茶の子さいさいです。

「どうしたの、それ」

 プンダは尋ねました。

 ポンダは「何を言ってるのよ」という顔でプンダを見ます。

「これから旅に出るんだから、カバンくらい必要でしょ、プンダお兄ちゃん」

 そう言ってポンダはプンダにカバンを手渡しました。カバンの中にはポンダ特製のお弁当がありました。きっと笹おむすびや笹スパゲッティが入っているに違いありません。

 食いしん坊のプンダですから、もうお弁当に手を伸ばしてしまいます。

「ダメよ、お兄ちゃん」

 よだれを垂らしたプンダに、ポンダは言いました。プンダは仕方なくカバンを閉じました。

 それを見ていたピンダが言いました。

「よし、準備ができたようだな」

「えっ?」

 ピンダが、ペンダが、ポンダが、期待に満ちた目でプンダを見ています。プンダは「あっ」と気づきました。もう森から出る時になったのです。プンダは「いやだ」と言えませんでした。そして、「うん、がんばってみるよぉ」と言ってしまったのです。

 プンダはピンダから「お前はやればできる男だ」という言葉をもらいました。ペンダから「これあげるね」とお守りをもらいました。ポンダからは先ほどのカバンとお弁当がありました。

 プンダは、言葉を胸に、お守りをカバンにしっかり入れて、「じゃあ行ってくるね」と歩き出しました。

 いつものんきなプンダですので、歩くスピードものろのろです。しかしちょっとずつピンダたちから離れていきます。離れるにつれて胸の中がきゅうっと痛くなりました。振り返って見ますと、ピンダとペンダとポンダが手を振っています。プンダは何度も何度も振り返ってしまいますが、それでも彼らはずっと手を振っていました。

 3人はだんだん小さくなって、白黒の点になって、やがて見えなくなりました。すると、どっと胸の痛みが増すように思いました。プンダは笹を口にくわえて必死に歯を食いしばりました。

 そしてついに森から出たのです。

 やわらかな風がプンダの白い毛をなでました。

 森の外は、草原でした。

 高い木がほとんどないので、遠くには山が見えました。空が広いということを初めて理解しました。草原はどこまでも続いていました。

 世界は、プンダが思っていたよりずっと、ずぅっと広かったのです。

 森の外は光り輝いているようにプンダは感じました、

(第2話 おわり)

前話|目次|次話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?