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KMC食と栄養タスクフォース #3 栄養サミットの経緯

 今回の記事では、栄養サミットの経緯についてご紹介します。
「栄養サミット」の開催は、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会最終日に、当時の英国キャメロン首相が開催した飢餓サミット(Hunger Summit)に由来します。その後、世界的なスポーツの祭典を契機に地球規模で栄養課題について考え、栄養不良の削減に取り組むことを目的とした「成長のための栄養(Nutrition for Growth: N4G)」イニシアチブが開始されました。

 翌2013年には、同じくロンドンで第1回の栄養サミットである「成長のための栄養:ビジネスと科学を通じた飢餓との闘い(Nutrition for Growth: Beating Hunger through Business and Science)」が開催されました。2007年以降、食料価格の高騰が続き、飢餓問題が深刻化するなか、その問題に対する認識を高め、さまざまな取り組みを発表することが主な目的でした。
 同サミットへは、イギリス首相、ブラジル大統領、アイルランド首相(EU議長国)、マラウイ大統領などが出席し、成果文書として「成長のための世界栄養コンパクト(Global Nutrition for Growth Compact)」を発出しました。この成果文書には、39カ国、19社の民間企業を含む約90のステークホルダーによるコミットメント(政策的・資金的誓約)が掲載されました。さらに、栄養分野への直接支援に総額約41.5米億ドルの拠出が表明されました。

 続く2016年には、リオデジャネイロ オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、 ブラジル、英国、日本政府によって「成長のための栄養サミット(Nutrition for Growth)RIO 2016」が開催されました。この2回目の栄養サミットでは、低栄養の削減においては大きな進展があったものの、過体重・肥満が課題として認識され始めました。成果文書として「ブラジル、日本、英国政府による合同コミュニケ(Joint Communique of the governments of Brazil, Japan and United Kingdom) 」が作成されました。

 この流れは2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催国である日本に引き継がれ、2021年12月に「東京栄養サミット2021(Tokyo Nutrition for Growth Summit 2021)」が開催されました。
 「東京栄養サミット2021」では、約60カ国の首脳級および閣僚級に加え、国際機関、 民間企業、市民社会、学術界などの幅広いステークホルダーが参加し、①健康、②食、③強靱性、④説明責任、⑤財源確保という5つのテーマについて焦点を絞り、議論しました。これまでの栄養サミットの議論は飢餓と低栄養が中心でしたが、世界の栄養課題が多様化したことから、東京栄養サミットの重要な議題の一つとして栄養不良の二重負荷が取り上げられました。
 成果文書としては、2日間のサミットで議論された成果を取りまとめた「東京栄養宣言(グローバルな成長のための栄養に関する東京コンパクト)」が発出されました。この東京栄養宣言には64カ国の政府、11の国際機関、60の民間企業、58の市民団体を含む、212のステークホルダーからの賛同(エンドース)が得られました。さらに、66カ国の政府、26の民間企業、51の市民団体を含む181のステークホルダーから396のコミットメントが提出され、合計270億ドル以上の栄養関連の資金拠出が表明される結果となりました。
 そして、来る2025年の3月27日~28日には、2024年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催国であるフランス政府が主催となり、次の栄養サミットが開催されます。公式サイトはこちらからご覧いただけます。

出典:

東京栄養サミット2021の結果概要|外務省 (mofa.go.jp)

Endorserscompact_update7_10_2013.pdf (nutritionforgrowth.org)

2022 Nutrition for Growth. 2016. Highlights from the N4G Rio event. In: Nutrition for Growth

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