聴神経腫瘍になって④ いろんな人の意見を聞く。

前回、脳外科の専門の先生の外来にかかり、手術をすることにしたことを書きました。
「僕の場合はこうした」ということを強調しましたが、それをよりよくわかってもらうために、手術を決めるまでにあったことを残しておきます。

耳が聞こえにくくなった原因を調べるためにMRI検査をしたあと、その結果を、これまでかかっていた耳鼻科の先生と相談しましたが、実はこのとき、
「手術は勧めない。聴力を失うリスクが高い。現在、ほとんど症状がない(聴力の低下がわずかである、という意味)ので、このまま経過を見るのも一つの選択肢です。」
と、言われていました。
実際、聞こえの神経は非常に繊細でもろく、手術で少し触っただけで、聞こえの能力を損なうことがあるようです。
耳鼻科の先生は、僕の今後の生活も考えて、聞こえなくなってしまいうる、手術という選択肢は勧められない、と教えてくれました。

ここで私が言いたいのは、結局私は手術をしたわけですが、決して、耳鼻科の先生の答えが間違っていた、脳外科の先生が正しくて、名医で、治療が素晴らしかった、ということではなく、

「ひとつの病気に対して、いろいろな選択肢があり、その時の状況で、さまざまな結論が出うる」

ということです。

それはまるで、山を登るのに、いろいろな登山道があり、いろいろな登り方はあるけれど、目指す頂上は同じ、と言うことに似ていると思います。

僕はたまたま、自分の仕事柄、いろいろな治療のメリットやデメリットを考えることができますが、医療に詳しくない状態であれば、1人の医療関係者の意見を聞いても、それが正しいのかどうか、妥当な意見かどうか、よくわからないと言うのが本当のところだと思います。
「よくわからないから医者に任せます」と言う意見をよく聞きましたが、その言葉はある意味、不安の裏返しなのだと思います。

医療は難しい。しかも答えが1つではない。100点と0点があるのではなく、60点も40点もある。医学部で6年間、医療を基礎から学んだ上で、免許を取って10年以上、勉強を続けながら第一線で働いてきた自分ですら、迷うのですから、医療関係者ではない患者さんが迷うのは当たり前だと思います。

だから、いろんな人の意見を聞くことを忘れないでほしいと思いました。外来でかかった先生に、セカンドオピニオンを受けたいと言うのは、とても勇気が要ることだと思います。でも、自分の体を守るのは自分ですし、自分の体の事は、自分で決めるべきです。もちろん、緊急性が高い場合には、その限りではないですが、セカンドオピニオンを受けるのは、ある意味、相見積もりを取るのに似ています。1人の医者の意見を聞いて、それが妥当な意見だったかどうかを判断するのにも、セカンドオピニオンはとても役に立ちます。

話がそれてしまいましたが、僕の治療だけでも、いろんな意見があった、いろんな人の意見を聞くのはとても大事、と言う話でした。

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