見出し画像

ビール傘/毎週ショートショートnote

「クリームソーダ傘だって」
 雑貨屋のショーウィンドウを飾る、可愛らしい変わり種の傘を指さす。手を繋いでいた彼はそれをちらりと見て一言。
「どうせならビール傘が良い」
「そこまでビール好き?」
「クリームソーダは甘くて飲めん」
「いや味の好みでなくて見た目…」
「ビール傘、見た目も良さそうだろ」
「そ…うかな…?」
 生粋の酒好きで甘いもの苦手な彼に振る話題ではなかったな、と若干の後悔。見た目、見た目なあ。ビールといえば金色で炭酸が弾けて、白い泡とのコントラストが夏の青空に映える。それを傘に落とし込むとすると…。
「黄色と白の組み合わせならそれはビール傘認定?」
「黄色…金がいいけどな…まあ、うん」
「なるほど」
 思い付いた色味を彼に聞けば、割合にガバガバな判定をしてくれるらしい。ふむ、と頷く私に訝しげな彼の視線は笑って流して、デートの続きを急かすように私は彼の手を引いた。
 そうして翌週のデートの日。雨が降っていた。
「あ、」
「どう? ビール傘」
 濃い黄色地に白の水玉。どんよりした天気でも明るく浮き足立つ色味のそれ。ビールに弾ける泡みたいな傘を持って待ち合わせ場所に立つ私を彼が笑った。


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼

素敵な企画に参加させて頂きました!
今後も不定期に参加したいと思います~!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?