電話対応

ユーザー対応と利用規約

前回は、対企業との利用規約について書いたが、今日はユーザーに対する利用規約(以下「ユーザー規約」という)について書く。

世には無数のウェブサービスがあるが、私が触ったことのあるユーザー規約は、ECサイト、ブラウザゲーム、ブログ、ポイントサイト、掲示板等の規約である。

ユーザー規約の効能

ユーザー規約は、契約書以上に、その文言が実務で生きてくる。カスタマーサポートあてにユーザーからの問い合わせやクレームがきて、その要求をお断りする場合や、強制力を利かせるために、規約を盾にすることが多い。

「ユーザー規約○○条に記載の通り~」から続き、例えば以下のような回答をすることになる。

ECサイト
商品発送後のキャンセルはお受けすることができません。

ブラウザゲーム
ID・パスワードを第三者に知らせることは禁止していますので、ご家族の方が購入したコインをキャンセルすることはできません。

ブログ
当サービスでは、特定の個人を誹謗中傷する行為は禁止してますので、該当記事を削除いたしました。

ポイントサイト
広告主が承認をしなかった成果に対しては、ポイント付与の対象外となります。

以上のように無駄にやりとりを長引かせないために使われる。もっとも、一般ユーザーに対し、いきなり規約を盾にするのはサポート対応としても印象が悪い(質も悪い)ので、一回言っても聞いてくれないユーザーや、悪質なユーザーに対してのみ使うのが効果的である。一部「道理」を理由に粘ってくるユーザーもいるが、規約を出された段階で諦めるユーザーは多い。

これからの利用規約

一昔前の規約だとブログサービスに投稿したユーザーのブログ等の著作物を自由に使って商売できるような規定も横行していたが、炎上事案(ユニクロやmixi等)もあったり、消費者契約法や民法の改正もあるため、今ではこうした規定は通用せず、むしろサービスの首を絞めることになりかねない。

ユーザーとのもめ事が裁判になるというケースは稀だと思うが、消費者センターに相談に行かれることはままある。でも、恐れることはない。筋の通ったルールを適用しているなら、消費者センターは敵に回らない。むしろ、代わってユーザーを説得してくれることだってある。勿論、非常識なルールを強いているなら、消費者センターも懐疑的な目を向けてくるので注意だ(だからと言って、何か強制力を発揮することはまずないが)。

ユーザーとの紛争は、あらゆる場面において道理が重視される。だから、これからのユーザー規約は、ユーザーも含めたサービス全体の利益と秩序を守るという意識をもって策定する必要があろう。

法務としては、サービスを運営する事業部だけでなく、ユーザー対応をする部署(カスタマーサポート部門)とともに、そのサービスは何を大事にしていて、そのために何を禁止し、何を免責し、違反者にはどのような措置を取る必要があるのかという実質的な必要性をしっかり検討し、共にユーザー規約を作り上げていきたい。

理想で言えば、ユーザーとのコミュニケーションで解決できるにこしたことはない。ある程度優れたサービス設計があって、優秀なカスタマーサポートがいれば、規約なんかいらない。最近では、カスタマーサクセスだなんて名称で、マーケティング色を強めて採用活動をしているところも多いが、給料は出し渋ったままっていう印象はある。

ユーザーに対しサービスを提供する事業をしているなら、会社はもっとカスタマーサポートの重要度と待遇を上げるべきではないか。

いいなと思ったら応援しよう!